ホラー小説 地獄タクシーⅡ 八章 髪鬼 最終話 | 渡夢太郎家の猫

渡夢太郎家の猫

2008年 3月に蘭丸の2度目の子供ができました
これで、我が家は9匹の猫です

「どうした?山野」

「俺が切ります」

「分かった」

礼司はハサミを渡すと山野はしっかりと握った

すると山野の頭の中に映像が浮かんだ

「夜野さん、向こうの世界で寿々がハサミを持って

 息子の所に近づいています」

礼司は山野が言っている意味がすぐにわかった

「向こうにも髪鬼は現れているのか」

「どうもそのようです」

「寿々は大きな猫に乗って、会った事のない男性が今部室に入りました」

沢村はピストルで息子の回りに付いた髪を打ち出した

寿々は恐る恐る窓の縁に摑まって部室に入ろうとして

足を踏み外すとそこに立ち上がったごえもんの頭に

寿々が足を乗せた

「あ、ありがとう。ごえもん」

その踏ん張った足で部屋に入ると

寿々は少年の姿を見た

「うっ」

寿々はその気持ちの悪い姿に声を上げた

「夜野さん今です」

「おお」

五人は壁にかかっている四角い鏡から飛び出し

礼司は鬼にノブを伸ばし魔美は小刀を手に持ち髪を切りつけ

屡奈は矢を放った

「山野準備しろ」

「はい」

「武鬼!」

礼司が叫ぶと首無しの武者が姿を現し迫ってくる

髪の毛を次々に切った

山野はその間を縫って息子のベッドの近くに近づいた

「寿々ちゃん、こっちだ」

「はい」

寿々は身体を屈めながら

ベッドに近づきハサミを持った

山野の腕に髪の毛が絡みつき手を

強い力でひきつけた

そこに何本もの毛が山野の手に突き刺さった

「いてて」

そこから流れる血が息子の身体に落ちようとした瞬間

屡奈が放った矢がそれを飛ばした

「ありがとう」

山野が後を振り返ると屡奈がニッコリを笑った

山野は息子の頭の先に光る金色の毛を見つけると

「これだ!」

寿々は息子の頭の先に金色の毛を見つけた

「これだ!」

「寿々行くぞ」

裕也の声が寿々の頭の中に響くと

「お兄ちゃん。うん」

「3.2.1」

二人のハサミは同時に金色の毛を切った

すると寿々の周りで動いていた真っ黒い髪は

空に上り消えていった

すると寿々はその場で気を失った

「寿々ちゃん」

沢村が寿々を抱き上げた

「山野!」

礼司は山野を床に寝かせると

「十一時五十五分鬼退治終了」

沢村は窓から外に居る浜田と由美に合図を送ると

二人は笑って手を振った

「隊長の方も無事成功ですね」

「ええ、これで向こうへ行けるわね」

浜田はうなずいた

「これで五人、向こうへ行けるね」

魔美が言うと

「いや、六人かもしれない。ん?七人かな」



髪鬼 終


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