ホラー小説 地獄タクシーⅡ 八章 髪鬼 15 | 渡夢太郎家の猫

渡夢太郎家の猫

2008年 3月に蘭丸の2度目の子供ができました
これで、我が家は9匹の猫です

「わかった、とりあえず金子一徳さんのところへ行こう」

「うん」

三人が金子一徳の古い農家の家工房へ着いたのは四時過ぎだった

「ここだ」

「うん、何か人気が無いね」

「ああ」

三人は玄関の前に立ち

礼司は

「ごめんください」

大声で一徳を呼んだ



「夜野さん向こうから音がします」

屡奈が玄関の右にある小屋から金属音を

聞いて言った

礼司は耳を済ませると

リズミカルにカンカンと高い音が聞こえた

「行って見よう」

音のする場所へ行くと

金床に刀を小槌で叩く男の姿が見えた

「すみません」

礼司が遠慮がちに声を出したが

男は無言で小槌で刀を叩き続けた

魔美はもう一度男に声をかけようと

礼司は手を出して魔美に手を出して止め

礼司たちは黙ってそれを見ていると

「もう少しだ、家の中でお茶でも飲んで待っていろ」

「はい」



屡奈が返事をして三人は家の中に上がり

囲炉裏の前に座った

「わあ、囲炉裏」

「さあ、お茶でも飲もうか」

礼司はあぐらをかいて囲炉裏の残り火に

薪をのせ火をつけ鉄瓶を降ろした

「ねえ、ずうずうしくない」

「いや、人に待たれると気が散る、お茶を飲んでももらった方が

 集中できるだろう」

「夜野さん、おっしゃる通りです。お茶を飲みましょう」

「そんなもんかな」

魔美があぐらをかいた両足を持って言った



屡奈は台所に行ってお茶碗と急須をお盆の上に乗せて持ってくると

鉄瓶のお湯が湧き出した

「待たせたな」

無精ひげに頭に手ぬぐいをかぶった

作務衣姿の男が入ってくると

三人は正座し頭を下げた

「仕事中にすみません、金子一徳さんですか?」

「うん、それで?」

「実は金子永徳さんの作ったハサミが欲しいんです」

「ハサミ?何に使う」

「はあ」

「何に使うんだ!!」

一徳は大きな声を出して睨んだ

「鬼退治です」

そう言うと礼司は髪鬼の話を始めた

一徳は腕を組んで黙って目をつぶって聞いていた


「そうか、わかった」

「えっ?わかったって?鬼退治ですよ」

「ああ、鬼退治手伝おう」

「信じていただいて、ありがとうございます。

弟さんが変人だと言われていましたので」

礼司は鬼の存在を簡単に信じる人に出会った事に

おどろいた

「徳次は何も知らんから、わしの事を変人と思っているのだろう」

「はい」

「実は金子家は先祖代々闇の刀を作っていた」

「闇の刀」

「うん、鬼を退治する道具だ」

一徳は奥の部室から古文書を持ってきた

「これが作った道具と納品先だ」

そう言って古文書を開くと

その都度、納品した刀の絵と戦った鬼の絵が描いてあった


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