地獄タクシー 八章 舞鬼 ⑩ | 渡夢太郎家の猫

渡夢太郎家の猫

2008年 3月に蘭丸の2度目の子供ができました
これで、我が家は9匹の猫です

由美は無線でヘリコプターで海上を

旋回している浜田に連絡を取った。

「まずい、早いぞ。120馬力以上のボートだ」

礼司はボートの動きを確認すると

「あのままタンカーに突っ込むらしいな」

 夜野礼司は海上保安庁の船からボートに乗った。

「隊長、どうするんですか?」

 由美がデッキから叫んだ。


「ヘリの狙撃が間に合わなかったら、俺が阻止する」

「そんな、だめです」

 ヘリコプターでは、二人の会話を無線で

聞いていた浜田が、白尾に向かって大きな声で叫んだ。

「白尾、絶対命中させろよ」

「了解」


 しかし、三〇〇メートル先のタイヤを撃ち抜いて

集中力が切れていた白尾は、

手が震えていた。夜野はコンビナートに停泊している

タンカーを背に、テロリストのボートへ向かった。


ヘリコプターの白尾はターゲットを捉えて

引き金に指をかけた。

その時、無線から「狙撃中止」と由美の声が聞こえた。


「えっ」と、屡菜はその声で引き金から指を離した。

引き続き、無線から聞こえてくる由美の声に耳を傾けた。

「屡菜、後ろから来るプレジャーボート狙って」

「は?」

「いいから、早く」

「はい」

 

白尾はスコープを覗くと、プレジャーボートに

四人の覆面をした男が乗っていた。

間髪入れずにライフルで五発撃つと、

プレジャーボートは一〇〇メートルの火柱を上げて爆発した。

「屡菜、急いで隊長を」

「はい」

 

夜野礼司はヘリコプターを見ながら言った。

「由美いい判断だ」

 その時、ヘリコプターの中の屡菜は、

最後の一発でテロリストを仕留めるか、

マガジンを交換するか迷った。

屡菜は浜田から受け取ったマガジンを交換せずに、

ライフルを撃った。


そして、操縦していた男の頭をぶち抜いた。

しかし、男は舵に覆いかぶさりまっすぐ

タンカーに向かってきた。

「やはり、狙撃じゃだめか」


礼司はボートをテロリストの

ボートへ向けて走らせた。

「隊長危険です。戻ってください」

由美が言った


白尾はマガジンを交換しボートの

甲板に五発撃った

「あっ、爆発しない・・・・。

爆弾は積んでいなかったの?」

白尾がホッとした瞬間


夜野礼司が乗っていたボートは

テロリストのボートと激突し爆発した。

「隊長・・・・・」

 屡菜は涙を流した。


 そして、海上保安庁の船に乗っている

沢村と由美は呆然と立ち尽くした。

その時由美の頭の中に礼司の声が聞こえた


「来年の今日、またテロが起こる。

それは、必ず防がなくてはいけないんだ。

来年までのすべての指示書は俺の机の上においてある」

「隊長」

「俺は必ず帰ってくる」