獣医鷹子 8 | 渡夢太郎家の猫

渡夢太郎家の猫

2008年 3月に蘭丸の2度目の子供ができました
これで、我が家は9匹の猫です

佃島にある高層マンションの


22階の紀香の部屋に着いた。

「良い部屋だね。銀座の夜景が綺麗だ。

そしてあなたも」



「嬉しい」

「私の本名は菊地亜子これが免許証」

亜子は棚にある、ウエッジウッドの

カップに紅茶を注いだ。

「お車だから、紅茶でいいですね」

「はい、それで?」

「はい、私の実家は大田区ある


小さな電子部品作っていたの



電子部品?

「そう電子部品は大手電機メーカー

だけが作っているわけではないのよ


実家の近所には何軒もあるの」

「そうなんだ」

「それが、父が研究開発した


システムが盗まれたの

「だれに?」

シュスコ電気の社長稲元正治」


「盗すまれた?」

「ええ、稲元がジャパン電気の部長時代、

父の研究をシュスコ電気

もちこんで今の地位を築いたの」 

「どんな商品なの?」 

小型トランスよ、バッテリーの

電気の波を安定させるものなの



「そうか、その製造法を取って

しまったのか。特許は?」

「シュスコ電気がクレームを出して、

新規性なしとされ却下されて、

逆にシュスコ電気が特許を

出願してしまったの」

「よくある話だね、特許破り」



「それだけじゃなくて、

父の会社との取引を停止して

倒産に追いやった。

そのショックで父が倒れ半身不随に。

その後も、ジャパン電気から昔の部下を使って

情報を盗んで出世して、

社長になったの、悔しくて悔しくて」



「えっ、その情報をどこで」

「私はこの仕事をして、

あの男の情報を集めていたの、

あいつを社会的に抹殺して欲しいの」

「わかった。面白い」

「私、この年になるまで一生懸命働いて、

父の借金を返して、

ためたお金が一億円あるの、それで」



「わかった考えてみます、

ひょっとしたらそのお金別なことに

頼むかもしれないから、使わないで下さい」

「と言うことは。依頼を受けてくれる

と言うことですか?ありがとうございます」

「僕には絶対、隠し事と、嘘はつかないで下さい。

もしこの話がうそだったら、断りますよ」



「はい、大丈夫です」

「ところで、そこにいるフェレットは」

「るるって言う名前、女の子」

「何歳?」

5歳よ。どうして?」

「そうか、僕の友人が獣医でね。

客さん増やしてあげないと」

「あら、ちょうど良かった。

るるの定期健診しようかと

思っていてのよ」



「そうか、じゃあ。

明日るるちゃんを迎えに来るよ」

「良いんですか」

「はい、それもクライアント

のサービスのうちだよ」

仁が自宅へ戻るとユウが待っていた

「お帰り、どうだった」

「うん、面白そうだね。

大至急菊地亜子を調べてくれる。

免許証からすると本人らしいが、

後に男がいるかどうか知りたい」

「はい、まかせて」

ユウは隣の部屋に入った。

翌日、朝早く卵々亭の電話がなった。

「鷹子、電話。仁さんから」

はい

「もしもし」

「鷹子、おはよう」

「うん、ご活躍で」

「まあな、それより早く

開業しろよ。資金出すから」



「いいよ、それにまだ自信ないし」

「世界で唯一、お前とおばさんに

頭が上がらないからなあ。

早く恩返しさせろよ」

「それより何?」

「あっ、フェレット連れて

行くから見てくれよ」

「どっちの方を」



「ちょっと、健康診断」

「あっ、またか」

「うん、ユウが連れて行くから」

「うん、たまにはお母さんに

会いに来なさいよ」

「ああ、それより携帯持てよ。不便だから」

「だって、どうせ病院では使えないから」

「それじゃ。彼氏できないぞ」

「余計なお世話よ」


つづく