今年のグラミー賞を知人にダビングしてもらった。お目当てはもちろんBeach Boys!!
しかし、思わぬアーティストを目にすることになった。それはGlen Campbell。

一般には「Wichita Lineman」とか「Southern Nights」などのカントリー曲で知られているが、
元々はPhil Spectorなどのレコーディングに参加していた実力派セッションギタリスト。
Beach BoysのBrian Wilsonが60年代に早々とツアーから離脱した際に、彼のパートを埋めたのが
Glen Campbell。これが縁でBrianは彼に「Guess I'm Dumb」という時代を越えた名曲を
送っている。この曲は世界中のBB5マニア魅了していて、山下達郎氏やLouis Philippeなどのその手の
人たち(!)がこぞってカバーしています。

もちろん上に挙げた曲も好きだけど、やはり一番のお気に入りは「By the time I get to Phoenix」
一番から三番まで歌って終わりのシンプルな構成の中に、名人技のような物語が込められている。

一番目で主人公はもうすぐフェニックスに到着するところ。長く付き合っている彼女に別れの言葉を
書いたメモを残して去った後だが、彼女は何故か笑うだろうと言う。理由は過去何回も同じことを
繰り返しているから。
二番目で主人公はアルバカーキの近くまで来ている。彼女は多分仕事中だがランチの時間に彼に
電話を掛けるだろうと言う。しかし、呼び出し音だけが聞こえるはず。
三番目で主人公はついにオクラホマへ。時間も経ち家に帰った彼女はやっと主人公が本当に去って
いったことを悟り、泣きながら彼の名前を呼ぶだろう。

なんか風景が思い浮かびますよね。フェニックス→アルバカーキ→オクラホマと主人公はどんどん
西側から中部へ移動しているから、きっと新天地を求めて東海岸を目指しているんでしょう。時間と
距離の経過が男側と女側で見事に描かれている。加えて一見地味なんだけど、心を捉えて離さない
メロディ。作詞作曲はJimmy Webbだ!

Jimmy Webbについては語りだしたら長くなりそうなので割愛しますが、とにかくこれらの名曲に
負けないGlen Campbellのボーカル。カントリーシンガーにありがちな嫌みな感じでなく、自然に
鼻にかかった歌声が感動する。今回もアルツハイマーという大病を押して、これまたヒット曲
「Rhinestone Cowboy」を楽しそうに歌っていた。この曲の歌詞も深読みすればいくらでもできて
名曲。本当に良いアーティストは良い曲と巡り合わせるんですね。

Beach Boysが奇跡の再結成を果たし、Mike LoveがBrian Wilsonのピアノに寄りそって歌う姿を客席
からGlen Campbellは嬉しそうに見ていた。その姿を見るだけで泣けてくる。歳をとるのも悪いこと
ではなさそうだと思う。

life is sweetsoulmusic
ブライアン・デ・パルマの「Phantom of the Paradise」は狂ったロックミュージカルだが、この映画の狂気をさらに増しているのはスワン役であるPaul Williamsのルックスじゃないだろうか。
「この人、怖い・・・」直視できないその風貌の男が味のある声で歌いまくり、さらに女の子にキャーキャー言われているという、その常軌を逸した設定と絵面は、ある意味サイケデリックだ。

このPaul Williams、ソフロロック界ではあのRoger Nicholsの相棒として有名。このコンビで数々の名曲を書いているが、そのうちの1つ「愛のプレリュード(We've Only Just Begun) 」は、カーペンターズに取り上げられてスタンダードになっているのはご存じの通り。人をみかけで判断してはいけません!この曲、なんと銀行のCMソングとして作られたとか。意外なトリビア尽くしの曲なんですね。

しかし、僕が初めて買った彼のアルバム「Here comes Inspiration」は買って自宅に持ち帰ってちょっと後悔しました。このジャケ、ヤバイでしょ。人ではなく、何か強烈な怨念の塊のような赤いシルエットがこちらを見つめている・・・「決して1人ではみないで下さい」という、ホラー映画の名コピー(何の映画だったか、「サランドラ」?)が脳裏をよぎる。

内容は、もうグッドメロディのオンパレード!「Nilsson Sings Newman」なんているシャレの効いた短い曲から始まり、「You and Me Against the World」「You Know Me」とハンカチが何枚あっても足りないバラードが続く。ついでにやはりカーペンターズに提供した「雨の日と月曜日には」のセルフカバーも収録されている。

彼の作品に共通しているのは内向的な世界観。「君と2人、世界に立ち向かっている気がする」とか「眠れない夜、自分自身を1人で探し出したいのなら」とか、孤独な登場人物がほとんど。「やはりルックスから人付き合いが少ないのでは?」と、やはりジャケットの赤い影が思い浮かぶ・・・のはともかく、決して美声ではないそのボーカルと相まって、心の弱い部分に染みてきます。

どのアルバムも名曲揃いだけど、1枚目のお勧めは(先程の赤ジャケではなく)、先述のRoger Nicholsと駆け出しの頃のデモ音源を収めた"We've Only Just Begun"標題曲や"Let me be the one"など有名曲も収録されていますが、"旅の途中、僕を思い出して・・・"と歌う(実際、旅番組だがドキュメンタリーだかのテーマソングとして書かれたらしい)"Somebody's waiting"は必聴!life is sweetsoulmusic-We've Only Just Begun
life is sweetsoulmusic-Here comes Inspiration
好きな音楽を聞かれて「えーと、ブリティッシュポップにパンクにコンポーザー系に・・・あとソウル」と答えれば、必ず「どんなソウル?」と返ってくる。

そりゃそうだ。これが「ロック」だったら答えになってないし、自分だって「どんなロック?」と聞くに決まっている。ビヨンセだってAretha Franklinだって人によってはGil Scott-Heronだってソウルでしょう。
で、自分の場合は「スィートソウル」なんだけど、これが正統でも王道でもない所謂「甘茶系」だから始末が悪い。

「甘茶系」を一言で言うと、「とにかく甘くてファルセットで女々しくて雨とか雷の音が入っていて、コスチュームは宇宙服みたいで、髪型は滅茶苦茶でかいアフロで・・・」と、一言ではないですが、そんな感じ。
つまり”いい子なんだけど、ちょっと道外しちゃったかな・・・”位のポジションのカテゴリー、の気がする。。。

こっち系の道に迷い込んでしまったきっかけは、The Intrudersというグループ。確かソニーの再発でハロルド・メルビンとかと混じって出ていたのをたまたまレコ屋で”スィートソウル”の売り文句に騙されて買ったのが運の尽きだった。

それまではMarvin Gaye(僕のアイドル!)やLeroy Hutsonなどのど真ん中を愛聴していたので、似たような感じを想像していたら・・・

。。。なんじゃこりゃ。。。

というのがファーストインプレッション。だって、”スィートソウル”って聴いて、その辺のスナックで「北酒場」とか歌ってそうな鼻声に遭遇したら、誰だってそう思うでしょ?加えて、リズムがフリーソウルなんかとは確実に違う「365歩のマーチ」系。え~っ・・・

タイトルだって1曲目から「cowboys to Girls」黒人なのにカウボーイ?ブラックのプライドはどこに?「Love Is Like A Baseballgame」も野球だけに超ストレート。「恋はまるで野球の試合、3ストライクでアウト!♪」と、メジャーリーグ級の大馬鹿ぶりだ。「Me Tarzan, You Jane」なんて曲名には、"What Can I Say?"(by Boz Scaggs)

だけど、不思議と耳に残り胸に入ってくる。きっと当時彼らのようなコーラスグループは掃いて捨てる程存在していて、最初から時の流れと共に忘れ去られる運命だったに違いない。そんな刹那な空気を微塵も感じさせずに、思わず笑ってしまう程の甘々ソングを熱唱する(メインボーカル鼻声だけど)彼らの音源の中には、ショービズの嵐に立ち向かう強い魂を感じてしまう。タイトルをバカにした(すみません)曲はどれもじんわりくるし、"Together"なんて、ソウル界最強のラブソングだと思う。気になった方、是非聴いて下さい!life is sweetsoulmusic-The intruders