長くてつらい西湖の復路(南側)を抜け、
暗いトンネルを抜けた先に見える河口湖に
これまで毎年のようにホッとさせられてきた。
静かゆえに孤独を感じる精進湖から踵を返して戻ってくる。
少しずつ、気持ちが前向きになってくる。
沿道の人も増えて、にぎやかな雰囲気が漂ってくる。
ここまで帰ってきたんだな、という安堵感も湧いてくる。
その一方で今年、自分が襲われた最も大きな痛みは
足の裏だった。
右足は小指の周辺とその付け根、左足は親指のすぐ下、いわゆる外反母趾のあたり。
それぞれ、もう9時間以上も衝撃を表立って受け止め続けてきた場所。
一歩一歩がとても痛いのだが、それでも踏み込んでいく。
庇ってしまうおかげで、フォームが崩れてヒザや腰に負担がくるよりよっぽどいいからだ。
下り坂がきつい。勾配が急な区間は無理せず歩きに変えた。
それでも、歩いていても痛みが伝わってくる。
「水ぶくれはしゃあない。血豆にだけはなってくれるな」と祈りながらの河口湖。
80km。9時間半を切って通過する。
「残り20kmで4時間の貯金(80kmを10時間)」が、一応の安全圏。
4時間あれば、最後の急坂を含めて半分以上歩いたとしても、立ち止まりさえしなければ14時間以内の完走はまず間違いない。
しかしそれよりも自分には、目指すべき目標がはっきりと見えていた。
5年前、初めて100kmを完走した時のタイム(12時間59分29秒)が自己ベストという情けない状況を打破することである。
当時とはコースが変わり、標高の累計が大きく増えたので
自分の地力では13時間を切れるかどうかも微妙だなと思っていたのだが、このまま例年どおりのペースでいけば、なんとかなりそうだ。
とはいっても、両足の裏は絶望的に痛く、
もはや胃は水分すら受けつけなくなりつつある。
90km手前の「おかゆエイド」
・・・おかゆすらも食べたいと思えないこのつらさ。
昨年と同じ身体の状況で、
昨年と同じ判断に至った。
胃に何も入れないのなら、立ち止まらないほうがいい。
せっかく入っているギア落としたら、また足の裏にきてしまう。
軽く走れている状態をキープすることを優先し、
今年もおかゆエイドをスルーした。
そして今年も、沿道で愛想を振りまくキューピーちゃんも視界から外した。
ごめん。ごめんよ。
でも我が家の冷蔵庫にはキユーピーのマヨネーズとドレッシングとあらびきマスタードが常に入ってるから、なんとかこれで勘弁してくれ。
残り8km。
私が最も心震える瞬間。
河口湖に背を向け、富士山と対峙する。その時がやってきた。
(つづく)
【ごまめちゃんクイズ】
第4問:
各ポイントで応援してくれた嫁はもちろん、
「がんばれ!」「ナイスラン!」「いいペース!」など、
今年も私は沿道からたくさんの方々に励ましの声を掛けて頂きました。本当にありがたかったのですが、
私は今回、特に終盤に応援して頂いた沿道の皆さんに
「申し訳ない」という思いでいっぱいになりました。
なぜでしょう?
答え:
沿道からの声援に対して、最初のうちは
「ありがとうございます!」としっかり声を返していたのだが、
だんだん疲れてくるにつれて「ありがとうございます」の発音がおざなりになってしまい、最後のほうは「ニャース」としか言えなくなってしまった。