ブログ小説72話の続きです。

 
 
「ごめんねー。ホントにごめんねー·····ワタシは、イ・ヤムチャさんのキモチを受け止める事は、出来ないんだー。」
実尋は、静かにイ·ヤムチャに伝えた。
 
「イ・ヤムチャさんは、ホントに良い人だと思うよー。それでも、今のワタシは、そのキモチに答える事は、出来ないんだ。」
「そ、そうか・・・・あぁ、解ったよ☆」
悲しげな表情を浮かべる実尋に、イ·ヤムチャは、明るい表情で応えた。
 
「イ·ヤムチャさん?」
実尋は、明るい表情のイ·ヤムチャの顔を見て不思議に思った。
 
――どうして?どうして、そんなに清々しい表情でいられるのかな?
――ホントは、傷ついてるハズなのに・・・
 
イ・ヤムチャは、本当に明るく優しい表情だった。
しかし、澄んだ瞳が涙で潤っているが、実尋から眼を逸らさなかった。
 
――イ・ヤムチャさん・・・
 
実尋は、イ・ヤムチャにかける言葉が見つからない。
 
「残念だ・・・どーやら、俺はここまでのようだな・・・女々しく、ウジウジしていても・・・仕方がない☆この際、俺の事は・・・・」
イ・ヤムチャは、「忘れてくれ」と言って走り去ろうとして、実尋に背を向けたが・・・
 
「忘れないよ!」
実尋は、大きな声で言った。
 
「ワタシ!・・・・今のワタシには、イ・ヤムチャのキモチは受け止める事は出来ないけど!!」
 
「絶対、イ・ヤムチャの事・・・忘れないから!!!」
実尋は、震わせながら、精一杯のキモチを込めて叫んだ。
イ・ヤムチャは、こぼれ落ちそうな涙をついに我慢できず走り去っていった。
 
恵比寿・イ・ヤムチャ。かつて、これほどまでに、純粋に一筋で思いをぶつけてくれた男性が居ただろうか・・・
 
私も、自分のキモチを伝えよう!!
過去のトラウマに逃げずに・・・
 
イ・ヤムチャさんの純粋な思いに応える為にも・・・
 
自分自身に決着をつけよう!!
 
 
実尋は、走り去っていくイ・ヤムチャの背中を見ながら決意を胸に秘めた。
 
 
 
 
 
 
鯖学☆(サバガク)73 「ロンリー・ウルフ」
最初のタイトルでネタバレ感が半端じゃないので、ここにタイトル書きますw
 
クールな眼差しホットなハート~♪
俺が噂のナイスガイ~♪
イ・ヤムチャさ☆
☆☆
 
 
 
修学旅行の二日目、俺(ネロ)は体調を崩してしまった。
原因と思われるのは、カキフライの食べ過ぎだったのか・・・それとも、カキフライのカキが若干生だったのが当たってしまったのか・・・・正直、今となっては解らない。その出来事があってから、俺はカキを使った料理を食べなくなった。
 
二泊三日の、修学旅行はそんな形で終わってしまった。
俺の中の思い出と言えば・・・女子部屋のトーク緊張しながら盗み聞きしてしまった事。そーいえば、イ・ヤムチャが翌日告白をするとか言っていたが・・・その後どーなってしまったのだろうか。
修学旅行が終わり、またいつもと同じ様に学校の生活が始まった。
 
イ・ヤムチャは、修学旅行が終わってから、学校に来てないらしい。
 
 
 
「クッソー・・・俺としたことが・・・アイツ(ネロ)の事をすぐに諦めるヘタレ扱いしておきながら・・・この俺自身、実尋さんにフラれて傷心しているようじゃ・・・」
 
「くっ・・・立て!立つんだ!イ・ヤムチャ!!立つんだ俺ェェ!!」
イ・ヤムチャは、自分自身を奮い立たすように、自分に声をかけた。
「むっ!ハイィィィ!!!」
そして、掛布団を蹴り上げ勢いよく飛び起きた。
「よーし!イ・ヤムチャ様の完全復活だ!・・・そーだな、修学旅行が終わってから、もう一週間も学校に行ってない・・・言い訳は・・・・」
 
「よし!旅行疲れ出て・・・一週間も寝ちまったぜ☆へへへ・・・・これで、完璧だ!」
イ・ヤムチャは、顔を洗いに洗面台の方に向かった。
夏旅行に女性陣をエスコートしようとした際、中華料理屋でアルバイトをした。その際、清潔感を一生づける為に髪をバッサリ切った。
今では、中途半端に髪が伸びてきたので・・・秋の学園喫茶の宣伝活動が終わった頃からかエクステーション(つけ毛)を装着していた。
ロン毛は、俺のポリシーだぜ!という妙な拘りがある為、基本的にはロン毛だった。
「ははは・・・なんだよ、この寝癖・・・それに、酷い顔だぜ・・・こんなんじゃ、実尋さんに会った時に合わせる顔が・・・」
イ・ヤムチャは、鏡に写る自分の顔を見ながら、ふと渋谷実尋の顔を思い浮かべた。
 
「・・・・・・・・・・・・・・・くっ・・・」
イ・ヤムチャは、急に胸が痛くなってきた。
まるで、心臓に針を五本くらい刺したかのような、とてつもない痛みだ。
 
「なんだ・・・実尋さんの顔を思い浮かべた途端、急にこの胸の痛み・・・」
「もしかして、これは・・・心臓病か!クソ・・・トランクスに電話して、特効薬を・・・」
 
イ・ヤムチャは、一人芝居をしてスマートフォンを片手に取った。
 
「・・・・・・くぅぅぅ・・・ちっくしょぉ・・・・なんだよ!一人で自分の部屋で、俺は何を言ってるんだ・・・」
イ・ヤムチャは、力なく膝をついた。
 
失恋の痛み。
 
その痛みが、徐々に強くなってきた。フラれた直後は、自分のキモチを伝えきったという「達成感」と、「緊張感」で緩和されて、自分でも感じなかったもう一つの感覚。「喪失感」という感情だった。
突然襲ってきた寂しさ・・・学校に行けば、いつも通り友達や、仲間に会う事が出来るのは変わっている。しかし、何かが違う。
いや、何かが違うのではなく・・・何もかもが違う感じがした。
 
――今まで、好きだった人が自分の中から遠くなった気がする。
おそらく、実尋さんは・・・俺(イ・ヤムチャ)が、気まずいという雰囲気を微塵も出す事無く、親友として話を聞いてくれるだろ・・・
気にせず話しかければ良い!そんな事は解っているんだ!
 
解っているけど、今の俺は出来ない・・・・
 
実尋さんに気持ちを受け入れてもらえなかった自分自身が・・・
 
好きになれない・・・
 
 
イ・ヤムチャは、次々に溢れ出る涙を強引に拭きながら顔を洗った。
 
 
☆☆☆
 
イ・ヤムチャは、コンビニ出かけた。
週刊誌を買いに来たのだ。こんな時は、全く違う事を考えて現実逃避しよう・・・
外で、週刊誌を読んで漫画の世界に没頭しようと決めたのだ。
 
200円ほどの週刊誌を一つ買って、ジュースとお菓子を買ったイ・ヤムチャ。
――ここの河原、そーいや・・・夏旅行を控えたアルバイトの面接で連続で落ちた時・・・ここで一人でバカみたいにふさぎ込んでたっけ・・・
へへっ、今となっては懐かしいぜ・・・実尋さんをエスコートする為に、ウマイ手料理をご馳走する為に、中華料理屋に拘って・・・汗水流して頑張ってたっけ・・・
 
イ・ヤムチャは、一人で河原で寝転がって週刊誌を読み始めた。
 
ところが、いくらページを捲っても何も内容が頭の中に入ってこない・・・
いくらで、漫画の絵を見ても、台詞を読んでも・・・何も入ってこない・・・
頭の中に、思い出されて来るのは・・・初めて実尋と出逢った職員室の廊下の前での会話や、ネロと競い合って勉強をした事、夏休みの旅行、学園喫茶、文化祭、そしてクリスマス会の準備・・・
 
――こうして思い出すと、大体俺って走ってたり、大きな声出したり、常に身体張ってたよな・・・
――なんであんなに身体を張ってたのかな・・・
 
イ・ヤムチャは、再び実尋の顔が浮かんできた。
 
-絶対、イ・ヤムチャの事、忘れないから!!!-
 
――俺は!実尋さんの・・・あんな泣きそうな顔を、悲しそうな顔を見る為に、身体を張ってきたんじゃない!
 
イ・ヤムチャは、立ち上がり手元に転がっている石ころを河原に投げようとした。
立ち上がろうとしたが、全身に力が入らず、その場に座り込んでしまった。
 
「クッソ・・・・」
イ・ヤムチャは、胸を押さえて再び寝転がった。
「また、俺はここでふさぎ込んでいるのか・・・俺って、進歩ねぇな・・・」
 
「おサボリですか?」
イ・ヤムチャの後ろから女の子の声が聞えてきた。
 
「うわっ!!」
イ・ヤムチャは振り向くと・・・そこには、生きているのだか、死んでいるのだか解らない程、血色の悪い女の子が立っていた。
目の下には恐ろしい程濃いクマ。瞳には生気というべき光が全く入っていない。
髪は、黒髪ショートヘアであり、長い髪の幽霊という訳ではないのだが・・・・短い髪でここまで生霊と見間違える女の子も、あまり居ない。
 
「えっ・・・もしかして、御徒町さん?」
イ・ヤムチャは、髪型が大幅に変わった為か、御徒町霧恵にすぐには気づかなかった。
「ウフフフ・・・こんな美少女の顔を忘れちゃいましたか?」
霧恵は、イ・ヤムチャの隣に座った。
イ・ヤムチャは、霧恵が自らの事を美少女と語った所と自分の事を美少女だと思い込んでいた事に、驚き固まってしまった。
 
「御徒町さんこそ、こんな早くに・・・もう授業は終わったのか?」
「はい。今日はキリエのクラスは、午前中授業でした。アナタこそ、こんな所で何を?」
イ・ヤムチャの質問にキリエは静かに答え、イ・ヤムチャに再度質問した。
 
「ふっ・・・情け無い事に、俺は実尋さんにフラれてしまった・・・。それで・・・」
「それで・・・?」
「なんとなく、実尋さんに会いにくくなった・・・俺は、学校を休んだ・・・」
 
「・・・・イ・ヤムチャさんは、フラれてしまった事で、渋谷センパイの事を嫌いになってしまったのですか?」
「違う!俺が、実尋さんを嫌いになるなんてありえない!・・・・」
「じゃあ、何故・・・会いにくくなってしまったのですか?貴方は、渋谷さんの事が好きだから、自分のキモチを伝える為に告白したのでは無いのですか?」
「勿論だ!俺は、実尋さんの事が・・・好きで・・・自分のキモチを・・・」
 
「では、何故・・・学校に行って、再び挨拶する事が出来ないのですか?」
 
「だから!好きだから・・・好きだからこそ、辛いんだ!好きだからこそ、やっぱり傷ついて・・・」
「傷ついたのは、アナタだけだと思っているのですか?」
 
「!!!」
「アナタが、一週間程学校を休んでいる間・・・アナタのキモチに応える事が出来なかった渋谷センパイは!傷つかないとでも思っているですか?人一倍、友達思いな渋谷センパイの事です・・・アナタが休んでしまった事で、自分のせいで傷つけてしまったと、罪悪感に苦しんでいるとは思わないのですか?」
 
 
「ぐっ・・・・・・・」
「アナタは、好きな人に告白する勇気はあるのに、フラれる覚悟は持っていなかったのですか?フラれる覚悟も持たずに、相手のキモチも考えずにただ、自分のキモチだけを伝えたのですか?」
 
「ぐっ・・・・」
「アナタのキモチを受け入れないと言い切った渋谷さんは、アナタと再び友達として挨拶する為に・・・学校に来ています。そんな中、アナタは一人、逃げるのですか?」
 
「そうだ!俺は、逃げたんだ!」
 
「俺という人間が受け入れてもらえなかった・・・自分という人間が全否定されたみたいで、悔しくて、悲しくて、寂しくて・・・」
「そしたら・・・なんだか、急に一人ぼっちになったみたいで、心がさっきからずっと痛いんだ!少しでも彼女(実尋)の顔を思い浮かべると、今までの記憶が走馬灯の様に蘇って来て・・・涙が止まらくなるんだ!」
 
「だったら・・・泣いてしまえばいいじゃないですか・・・」
 
「俺は、自分の弱さを見せるのが怖いんだ!」
「フラれた事を相手のせいにする卑怯者さ!」
「女の子にフラれて、みんなに笑われるのが嫌で、学校に行けない・・・弱くて、卑怯な、臆病者さ!!」
 
「みんなの前では、常にカッコよく振舞っていないと・・・自分が自分で居られなくなってしまう・・・」
 
「だから・・俺は、常に校則違反であっても、人と同じ格好はせず、エクステーションでロン毛にして、常にカッコつけてきた・・・」
「本来なら、怒られる事を、平気でやってのける事は強い事だと・・・周りに誇示する為に・・・景親(担任)に何度職員室に連行されても、反省する事無く続けた・・・・その意気がってた無駄な反骨心こそ強さだと・・・俺は勘違いして・・・」
 
 
「・・・・・・・・・・・・」
霧恵は黙ってみていた。
 
「でも、俺は・・・強くなんかなくて・・・」
 
「何がロンリー・ウルフだ・・・何が一匹狼だ・・・」
「俺は、一人じゃ何もできないじゃないか!くっそぉぉぉぉぉ・・・・・」
 
「うぉぉぉぉぉぉん・・・・」
 
「俺は、アナタに傍に居て欲しかったんだァァァァ!!」
 
「み、実尋さぁぁぁぁぁぁん」
イ・ヤムチャは、川の流れに自分のキモチをぶつけるかのように叫んだ。
自分の思いも悲しみも、やり場のないモノを全て・・・
目の前の川にぶつけた。
 
 
夕暮れの河原に、イ・ヤムチャと霧恵は並んで座っていた。
 
「・・・ふっ・・・カッコ悪い所を見せちまったな☆・・・俺としたことが・・・」
イ・ヤムチャは、自分の中に隠し持っていたホントの自分を洗いざらい吐き出した事で、スッキリした顔になっていた。
 
「いえ☆カッコ悪くなってないです・・・どっちかというと、時々で良いので・・・そんな弱さを見せた方が・・・」
「ん??」
 
「この人は、ホントにガンバって生きてきたんだな~って、それで頑張りすぎて・・・疲れちゃったんだろうなって、好感が持てるかもしれませんよ?」
「なに!?それは、ホントか!」
 
「えぇ☆だって、世の中には・・・稀に、ギャップ萌えという言葉もありますから☆」
「ギャップ萌えだと!!」
「はい・・・ですから、ここに来たのがキリエじゃなくて、渋谷センパイだったら・・・なにか、好感度があがるイベントがあったかもしれませんよ?・・・フフフ、勿体ない♪」
 
「ガーーーン・・・・くっそ!やり直しだ!すまないが、ここに実尋さんを呼んできてくれ!!」
「俺は、・・・えっと・・・なんて言いながら泣いてたっけ?・・・と、とにかく、悔しそうに泣いたら・・・実尋さんは、俺の事を好きになってくれるかもしれない!そーいう事だな??」
 
「・・・・・・・ハイ・・・ウフフフフ・・・・・・」
霧恵は、笑いだした。
 
「な・・・なんだよ・・・//////」
「アナタは、なんだか・・・面白い人ですね☆・・・・それに、すごく前向きで・・・」
霧恵は、静かに立ち上がった。
 
「元気になったみたいだから、そろそろ行きますね♪」
霧恵は、イ・ヤムチャを残して帰って行った。
 
「・・・・・あ・・・ありがと☆」
――御徒町さんか・・・まさか、あの子に元気づけられるとは夢にも思わなかったぜ・・・6月頃、学校に来なくなって逃走して・・・目黒先生やネロ達と一緒に捜索活動をした事があったっけ・・・
――あのコも、確かネロにフラれた事が原因で・・・ヤケを起こして、色々問題かけたんだよな・・・
 
――それも、昔の話・・・あのコも、随分変わった・・・俺も、後輩に負けないように・・・少しだけ大人にならないとな・・・
 
 
 
その夜、イ・ヤムチャは長いボサボサのエクステを外し、バッサリ髪を切った。
 
そして、次の日・・・イ・ヤムチャは学校へ行った。
 
「おっ?イ・ヤムチャ!!久しぶりだな?珍しく・・・図書室で何やっているんだ?」
ネロは、昼休みで学校の食堂に向かう途中だった。
イ・ヤムチャは、滅多に行かない図書室でアマゾン熱帯植物の本を読んでいた。
 
「おぉ!ネロ☆久しぶりだな♪・・・実は、最近読書に目覚めたんだ☆どーやら、読書の秋って奴さ☆」
「オイ・・・いま、真冬だぜ??」
 
「ん??そうだったか?」
 
ネロとイ・ヤムチャは二人で笑った。
 
「でもよー・・・カレンダー見てみろよ?もうすぐ、2月も終わるぜ??」
「あっ、ホントだ・・・・」
「3月は、もうすぐ・・・そこだ☆もうじき春がやってくる!そうだろ?」
イ・ヤムチャは、とても清々しい顔をしていた。
 
「あぁ☆そうだな♪」
ネロ達が見たカレンダーは、2月の終盤の日付となっていた。
 
もう、春はそこまで来ていたのだ。
 
 
つづく
 
 
(もうじき、最終回です☆ ラストに向かってガンガン飛ばしていきます!)
 
鯖学プロジェクトより、卒業の撮影を開始してます☆
ご協力、よろしくお願いします
 
 
次回予告?
ついに、未来の鯖学の新一年生になってくれるであろう、
学校見学にきた中学三年生の学校案内だ☆
 
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