週末、ふと思い立って『マトリックス』三部作を一気に観返した。
正直、10代の頃に初めて観た時は、あの緑色のデジタルコードや、スタイリッシュなアクション、銃弾を避ける「例のポーズ」にただ圧倒されていた気がする。
でも、30代になって、社会の波に揉まれる経験を少しだけ積んだ今。
3作目『マトリックス レボリューションズ』のラストシーンで、私は不覚にも泣いてしまった。
あれは、ただの「救世主の勝利」の物語じゃない。
一人の人間が、自分にとって一番大切な人のために、そして自分を信じてくれた世界のために、すべてを捧げる「覚悟」の物語だったんだ。
特に、ネオとトリニティーの関係がもう……胸に迫る。
3作目の終盤、光のない世界を抜けて、雲の上の青空を二人で一瞬だけ見るシーン。
あそこでまず堪えられなくなった。私たちが当たり前に享受している「空の青さ」さえ、彼らにとっては命を懸けた旅の果てに見つけた、奇跡のようなご褒美だったんだと思うと、胸が締め付けられる。
そして、ラストのネオの決断。
最強の敵であるスミスを倒すために、彼が選んだ方法は「勝ち取る」ことではなく、自分を「明け渡す」ことだった。
誰かの期待に応えるためでも、ヒーローになりたいからでもなく、ただ自分の愛する人たちが生きる未来を守りたいという一心。その静かで、でも揺るぎない「善良な男の覚悟」みたいなものが、画面越しに痛いくらい伝わってきた。
若い頃は、もっと派手な大団円を期待していたのかもしれない。
でも今は、あの雨の中の自己犠牲や、静かに訪れる朝焼けのシーンが、何よりも美しく、救いのあるラストに感じる。
「なぜ立ち上がるのか?」と問われて、「選んだからだ」と答えるネオ。
私たちOLの日常も、大きな戦いこそないけれど、毎朝「今日をどう生きるか」を選び取っていく連続だ。彼ほどの壮絶な覚悟は持てなくても、自分が大切にしたいもののために、誠実に、真っ直ぐに歩んでいきたい……なんて、夜中のリビングでちょっとだけ背筋が伸びた。
数日経った今も、あのラストの静寂が心に残っている。
しばらくは、仕事で嫌なことがあっても「私は私の戦場を、自分の意志で歩いているんだ」と、少しだけ強気でいられそうな気がする。


