ヒュペーリオン ヘルダーリン作

 星明るい夜は私の生活に無くてはならぬものとなつた。秘かに黄金の湧く地の底のように、あたりがしんと静かになると、私の愛の氣高い生活が始まるのである。


 かうした時は胸は詩作しないでは居ない。此の大地に降りて來なかつた以前、樂園の前庭にて、湧き水の快き調べの傍、此の世の枝ぶりに似て黄金の流れの中から美しく輝く樹蔭に、詩の如くであつた幼い頃、ヒュペーリオンの靈が優しいディオティーマと戯れた有様を私の胸は物語つたのである。


 そして未來の扉は過ぎし世の如く私の胸のうちに開いたのである。