『フェルマーの最終定理』

サイモンシン著 青木薫訳 新潮文庫 1997年


xⁿ + yⁿ = zⁿ この方程式はnが2より大きい場合には整数解を持たない。この証明をここに書くには余白が足りない」


フェルマーがそう書き残した17世紀から現代までに、医学は遺伝子組み換えに成功し人類は宇宙を構成する基本粒子を突き止めるまでに発展した。しかしこの「フェルマーの最終定理」は350年経ってもなお当時の姿のままであった。


勇気、不正、競争、成功、孤立、嫉妬、敗北……数学者を巡る冒険の中心にあるのがフェルマーの最終定理だ。コーシー、オイラー、クンマーはじめ数え切れないほどの数学者が証明に挑み続けた。アンドリューワイルズも情熱を注いだ1人だ。彼は7年の歳月を捧げ、1994年、ついにこの難題に終止符を打った。数学者たちがフェルマーの最終定理に振り回された訳は、一つにこのクイズを解いてみたいという無邪気な好奇心だ。二つ目に歴史に自分の名を刻みたいという人間的な欲や野心が知の共有を阻んでいたせいではないかと著者は言う。オープンにアイディアを共有していたら、もっと早い段階で証明されただろうか。


本書は数学に詳しくない読者でも理解しやすいよう易しい言葉を使って数学の奥深さと美しさを教えてくれる。またフェルマーの最終定理の証明が単なる数字的パズルではなく、数百年にわたる知の探求の結晶である事を実感させてくれる。音楽の和音から惑星の軌道に至るまで背後に数が潜んでいると言う。本書を手に取ればきっと新しい発見があるだろう。