厚生労働省が7日発表した9月分の毎月勤労統計調査では、物価の影響を考慮した働き手一人当たりの「実質賃金」は。前年同月より2.4%減少し18か月連続の目減りとなった。名目賃金にあたる現金給与総額は21か月連続で上昇する一方で、物価の上昇がそれを大幅に上回る状況が続いているためである。

 

 現金給与総額は27万9304円で、前月より1,2%増えたものの、9月の消費者物価指数は3.6%増であった。このような物価高騰が、なかなか沈静化する気配がないこともあって、少しばかりの賃金アップがあっても、焼け石に水といった状況で、家計の目減りは当面続きそうである。

 

 先日、国内総生産(GDP)が今年度はドイツに抜かれて4位に下がりそうという予測が出た。また数年のうちにインドにも抜かれるということである。中国やインドは人口が10億をこえることもあって、仕方がない一面のあるが、バブル崩壊以降、日本経済の地盤沈下はとどまることを知らないようである。

 

 その結果として、為替安をはじめ、エネルギーおよび原材料輸入国家の宿命として、国民の家計をますます貧しくする要因ばかりが目だつ。GDPが、国の経済実態を示す指標として経済の実態を映し出してはいないという懸念もあるが、人口比で1.5倍の人口を有する日本がドイツを下回る状況をむかえるのは、いくら為替の影響を受けるにしても、日本の経済力の低下は歴然としているのではなかろうか。

 

 岸田首相は賃上げを企業に要求するなどしているが、大幅な賃上げをする財源を日本の企業は持ち合わせていない。消費の縮小に合わせて家計を節約する傾向にあわせて、商品価格を上げるような仕組みを作ってこなかった結果である。陰りを見せ始めた自動車業界の動向も気になるところである。賃上げが進まない日本。金利を引き上げられない日本。前途は多難である。