ふとそんな殺伐とした思い出が急に蘇ってきた。
あれはたしかまだ私が肥満児の代表だった中学二年生の頃。
身体測定の数日後にこっそり保健室に呼ばれて注意を受けるという、肥満児でしか知り得ないイベントに参加していたあの頃。
若干14歳にしてコレステロールの基準値を大幅に越えたために、医者に茹で玉子のドクターストップをくらっていたあの頃。
いや、この話は肥満とは関係ない。
あれは学年全体で行った林間学校みたいな感じのレクレーションの時間。
一学年の約150人が集められて実行委員みたいな人たちが行ったゲーム。
たしか名前は
『ウインク殺人事件』
とかそんな感じだったと思う。
「今から全員座って顔を伏せて目を閉じてください。
これからランダムに各組で二人の肩を叩きます。
肩を叩かれた人は犯人になります。
犯人に選ばれた人は、これから他の人と目が合った時にウインクをすると、その人を殺せます。
ウインクをされた人は静かにその場に倒れてください。殺されたらゲームオーバー。
犯人は捕まらないように、ウインクをしている場面を他の人に見られないようにどんどん殺してください。
もし犯人を目撃して見つけた人がいたらその場で捕まえてください。犯人は捕まえられたらゲームオーバー。」
そんなルールで、犯人が殺しきるか、他の人が捕まえるか
みたいなルールだったと思う。
背の順で前後に並んでいた友達のクリと、面白そうだな、みたいな話をしつつ、
因みにクリとは、骨折したり打撃を受けた腹が一日痛んだりするようなケンカをしたこともあったけど、まぁ、友達である。
そんなわけで体育座りして顔を伏せて目を閉じた。
「これから肩を叩きます。
しばらくして、スタートと言ったら全員立って歩き回って下さい。」
私としてはこういうのには乗り気。
絶対捕まえてやろう、
と思っていたんだが、ここでまさかの出来事。
そう。肩を叩かれのである!
俺は犯人に選ばれてしまった!!
こりゃ大変だ!!!
たくさん殺さなければ!!!!
そしてしばらくして切られたスタートの合図。
みんなソワソワした様子でニヤニヤしながら立ち上がる。
私もそんな感じで立ち、さてどうするか?なんて考える。
目の前のクリは特にヘラヘラしていた。
「やべぇ、誰だろ(笑)やべぇ、誰だろ(笑)」みたいな。
基本陽気なニヤケ男なのだが、こういう特別な時はさらにヘラヘラするのである。
まぁでも、無理もない。
公式の行事で、しかも学年全員でソワソワするゲームを始めたのだから。
よし、
手始めにこいつを殺っとくか。
そんなわけで
「な、誰なんだろうな?」
と、言いながら渾身のウインクを放った。
唐突だが、この話はここで完結してしまう
ウインクを受けたクリ
目を見開いて大声で
「え!?ジン!!お前、まさか!?
え?嘘だろ!!おい!!!犯人なのか!!??」
あ、
あぁ、、、
あーあ、、、
そうだ、こういうやつだったわ。。
こいつ、早く死ねよ
そう思ったのも束の間、私は難なくあっけなく捕まった。
想像していた華麗なる連続殺人は一人も殺すことなく、被害者になるはずの友人によって殺人未遂で終えたのです。
余談だけど、その後クリとは成人式の同窓会でバンドをやったり、群馬の橋の上からバンジージャンプしたり、直近だと今年の宮城のアラバキロックフェス現地で会ったり。
夜は10℃を下回るアラバキ。
彼はキャンプをするのに寝袋や防寒着をまったく持ってきておらず、ホテルを予約してた私に
「頼む、部屋に泊めてくれ!これじゃ凍死してしまう!」
と泣きついてきた。
そういやその時は
こいつ、早く死ねよ
とは思わなかったな。
俺も大人になった。
でもそのあと部屋で酒飲んで喋りだしたとき、眠いのになかなか話を止めなかったときはこう思った。
こいつ、早く寝ろよ。
そして翌朝、彼のお陰で寝不足だったのだが、彼が集合時間より遅れて起きてきたこと。
そして2日目の会場へ向かう道中、
「うんこしてぇ」
と言って長時間コンビニで止めたあげく
「コロコロしか出なかった」
と言ったときは、さすがに改めて
こいつ、早く死ねよ。
成人式バンドやバンジージャンプでもそれぞれこんなエピソードがある。
それはまた次の機会に