「永い言い訳」西川美和監督 (ネタバレ注意)
人にとっての幸せのカタチは色々あるだろうけれど、第一には、誰かの役に立っていることを実感できること、誰かを大切にできていること(もちろん大切にされている実感もあればいいが)、これはかなり重要な要素ではないかと思う。
不倫の情事中に妻を不意の事故で失っても少しも泣けなかった主人公は、妻の友人ではやり同じ事故で奥さんを亡くした男の子供二人の面倒をみているうちに、人にとっての本当の幸せは何かを見出していったようだ。
小さな妹の世話のために中学受験を諦めようとする12歳の少年は、がさつで体育会系の長距離ドライバーの父ではなく、何故聡明でしっかり者の母が死んだのだろうと、自己嫌悪の入り混じった涙ながらに主人公に打ち明ける。
その時、がさつでも混じりっけないストレートな愛に溢れた少年の父親のことや、自分の言葉に傷ついている聡明な少年を心からいとおしめるようになった主人公が少年に言うのだ。
「自分のことを大切にしてくれる人のことを軽く扱ったりり貶めてはいけない」(正確な台詞ではありませんが)
これは、妻に申し訳なかったと心から思えるようになった主人公だから言える台詞で。
皆、そんなことは当たり前ではないか、と思うだろうけれど、人はそんなに強く清くはいられない。
一番近い関係としては親兄弟が当てはまるが、人は愛されていることに慣れると、時にその人へのリスペクトや価値を重んじることが難しくなっていく。
かくも人間は弱い。時に卑小な自分を認めながら、それでも、自分と他人の価値を同等に慮れるようになれたら。
その難しさを私は知っている。






