世界一の映画館と日本一のフランス料理店を山形県酒田につくった男はなぜ忘れ去られたのか | れいよん・雑記

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明日はあしたの風が吹く。

2月半ばの寒い日に、“運命的な出会い?” を体験した。


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朝おきた時から強い北風が吹いていたが、午後になってもちっとも止まない。

窓越しに風に揺れる篠竹を、なんとな~く眺めていたら、無性に本屋さんに行きたくなった。

特別欲しい本がある訳でもないのに、今すぐ本屋さんに行かねば、と急き立てられる感じ!

いつもなら、こんな日の夕方に出かけようなどと考えもしない私なのに、なんの苦もなく出かけたのである。


平積み単行本コーナーで、突然、目に飛び込んできた1冊の本。


『世界一の映画館と日本一のフランス料理店を山形県酒田につくった男はなぜ忘れ去られたのか』


タイトル?それともレビュー? そんなことを思いながら手に取る。


なんと、それは、長い長い “本のタイトル” だった!

本の帯には・・・・・

映画館の名は 「グリーン・ハウス」。レストランの名は 「ル・ポットフー」。

日本海の港町で、伝説の男・佐藤久一は 

    命の炎を燃やした―――。


そのままレジに並んだ私。


何故ほかの本には目もくれず、レジに並んだんだろう?

もちろん、「世界一の映画館」 という言葉に惹かれたことは言うまでもないが

帯に書いてあるレストランの名 「ル・ポットフー」の文字が飛び込んできたからだろうか。


伝説の男・佐藤久一 伝説の男・佐藤久一


購入してきてすぐ読み始めた。

本を開くと、紋付姿の凛々しい20歳の佐藤久一氏の写真が!

  (私は、この本で、初めて佐藤久一氏の名前を知ったのであるが。)

う~ん、惚れ惚れする! かなり “イケメン”の佐藤久一氏!


数ページある写真を見て・・・・・


プロローグ 酒田大火 


一九七六(昭和五一)年一〇月二九日。

その日、酒田の町は鉛色の雲に覆われていた。日本海沿岸の晩秋特有の底鳴りする突風が、細かい雨をともなって港町を吹き抜けていく。人口一〇万人の都市といっても、田舎の町は都会より、はるかに夜の(中略)

そんな中で、酒田駅前にあるビジネスホテル「東急イン」三階のフランス料理店「ル・ポットフー」は、ディナータイムを迎えようとしていた。開店直前の調理場は活気に溢れ、ダイニングルームには(後略)

読み進むにつれて胸が高鳴り、早く早くと自分を急かしている私。


目次なんかに目もくれず本文を読み耽ったのだが、ここには目次を記しておこう。

 (年号は漢数字じゃ読みにくいので書き換えて記す。)


プロローグ 酒田大火


第一章 グリーン・ハウス その一 1950~55年

 若き映画館支配人・佐藤久一

 「おしゃれをして行かないとね」

 イベントの先進性

 佐藤家と酒田の歴史

 久一の生い立ち


第二章 グリーン・ハウス その二 1955~64年

 久ちゃんとセールスマンとの丁々発止

 淀川長治、荻昌弘らの応援

 「世界一」の映画館

 恋に落ちて


第三章 東京・日生劇場 1964~67年

 「東洋一」の劇場

 「あの方と食事がしたいの」

 食堂課への左遷

 再び、酒田へ


第四章 レストラン欅 1967~73年

 田舎町のフランス料理店

 辻静雄、ポール・ボキューズとの出会い

 デパートへの出店


第五章 ル・ポットフー(清水屋) 1973~75年

 「おまかせでお願いします」

 舌を巻いた食通たち


第六章 ル・ポットフー(東急イン) その一 1975~83年

 ジャン・ギャバン

 「列車を止めておけ」

 マダム・鈴木新菜の登場

 1976年のメニュー

 ポール・ボキューズとの再会

 日本一のメートル・ドテル

 山形産のワイン


第七章 ル・ポットフー(東急イン) その二 1984~93年

 「これは商売じゃない。趣味ですよ」

 臨時株主総会

 「ル・ポットフー」との決別


第八章 ふたたび、レストラン欅 1993~97年

 料理、それは思い出・・・・・・

 「久一さん、恋をしてください」

 ムーンライト・セレナーデ


エピローグ 見果てぬ夢


私が初めて佐藤久一という名前を聞いたのは、一九九九(平成一一)年初夏のことである。

で始まるエピローグは・・

「久ちゃん、どうやら私の中にあなたが棲みつき始めた」

で終わる。


これほど夢中になって読んだ本は、久々である。

岡田芳郎さん、佐藤久一氏を紹介してくださってありがとうございます。

私にも、「久ちゃん」が棲みつき始めました。そして、岡田芳郎さんも!


『世界一の映画館と日本一のフランス料理店を山形県酒田につくった男はなぜ忘れ去られたのか』

著者 岡田芳郎  発行所 講談社 2008年1月18日第一刷発行


  *上記の青字文章は全て、この本より引用。


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この本を読んで、若い頃食べた「ル・ポットフー」のおいしいフランス料理の味を思い出した。

私が、初めて「ル・ポットフー」 で食事をしたのは、1993年の4月下旬だった。

日本一のフランス料理を食べに行くという洋画家KT氏のお供で訪れた店が「ル・ポットフー」だった。

食事のためだけに山形県の酒田に行くなんて、なんという贅沢!

当時の私には考えられないことだった。 もちろん、今だってそう思う。



久一氏の愛した酒田に行ってみたい!この本をお供に!

この本を読み終えてから酒田への想いは募るばかり。


ということで、3月の始めに酒田を目指す!

意気揚々と旅をしたのだが、帰宅途中でショッキングな出来事が! 


デジカメのメモリーを全部消去してしまったのだ!

酒田の画像が一枚もない。酒田だけではなく立ち寄った山形県内の画像も全部消えてしまったのだ。


新幹線の中で、不要な画像を削除していたのだが手元が狂ってしまい、全削除をプッシュしてしまった。

本当に、悔しい! 自分の不注意に腹が立つやら情けないやら・・・・、とにかく大ショック!!


ま、しょうがないよ!と、ようやく諦められるようになった今日この頃である。