私はよく『死にたい』という感情を覚える。

いや、どちらかというと『消えたい』に近いのだろうか。自分の語彙がないせいでうまく表せないのだけれど、眠りについて、そのまま死んでしまいたい、だとか苦しまずに死にたいだとか…具体的な方法を考えるでもなく、ただそれを考えているだけ…そんな甘そうに見える私の『死にたい』だけど、本質は実は本気の『死にたい』よりも厄介なのかもしれない。

本当に行動に移したのならば、気づいてもらえる可能性が生まれてくるけど、こういう私のような場合、言葉に出しても心配される事はまずない。いや、心配されたいという訳では無いんだけれど。


……そんな思考を脳内でぼんやりと巡らせていると、背中から声が聞こえた。

「ユキ、何かあったの?」

…落ち着いた声。

「ん、いいや、何にも。そっちこそどうしたの?」

できる限り、いつものように返す。ひさびさに喉を使ったせいで少し掠れた声はどうにもならなかったけれど。

「いや、ただ暇だからここにいるだけ。この席が一番日当たりが良くて心地いい…」

微妙にズレているようなズレていないような返答が戻ってきて、いつもの日常だなぁと安心した。

「…そうだね、日当たり最高だよね、リノの席。でも暑くないの?夏とかさ」

「日向ぼっこは嫌いじゃないからね」

ふてぶてしくリノがつぶやく。

「そうなんだ…初めて知ったかもしれない」

少し大げさに話してみる。

「嘘だ、わたしユキに言ったよ?」

「えー?覚えてないや」

……そんな、よくある日常の会話を交わした後、一呼吸置いてリノが話し出す。

そして、これもまた私たちの『日常』の会話。

「…それでさ、話は変わるんだけど…」

「また死ぬ時の話?いいよ。丁度したいと思ってたんだ」

「そっか。えっと…昨日はどこまで話し合ったっけか」

リノに聞かれ、必死で記憶を探る。

「確か…あれだよ。……そう、死ぬ方法!」

「…あぁ、そうだったね!いやー、うっかりうっかり。」

えへへ、と笑うリノを見て、今日も幸せだなぁなんて思う。


「んと、結局二人であの山の崖から飛び降り自殺…だよね?」

「いや、違うよユキ…向かい合って首つりにするって最後に言ったよ」

「そっかー」


あはは、と笑い合う。

楽しい時間。

この希死念慮が私たちの友情の証。

死ぬ時は二人一緒に死ぬ。そう決めたんだ。

『死ぬ事』が、二人の永遠の友情の証……


そう信じていた。





その日の帰り。


リノが事故で死んだ。


とにかく悔やんだ。

もっと遊びたかった。
もっとふざけてたかった。


そして、
一緒に死ぬって約束を果たせなかった。



私の中に後悔の念が渦巻いて、くらっとして……気がついたら、



死んだはずのリノが、隣にいた。

そして、死ぬ少し前に、時間が巻き戻っていた。




それで、私は必死に頑張ってリノを救おうとした。どこかで聞いた曲を思い出したけど、今は秋だから。





そして、最後にたどり着いた結末。



望んだ死ではなかったけど。

それでも…




『次のニュースです。○○市○○町の○○で、交通事故がありました。この事故で中学二年生の平川 有希さんと相山 凛乃さんが亡くなりました。

………次のニュースです』