最初に防疫についての書き込みをするのには理由があります。
私が鳥を飼い始めた頃は、まだ雛を育てる餌は粟玉と言われる粟に卵黄をまぶして乾燥させたもの(繁殖者によって様々な拘り有)が主流でした。
この頃一番怖い病気と言っても、アスペルギルス症や、ワクモ等のダニの一種が殆どで、ほかには家庭内での事故(踏んでしまったり、逃がしてしまったり)が多かった世の中です。

その頃は、鳥を育てるにも病院など無いのが主流で、当然ネットなども無い時代でした。
そんな中、愛鳥家達は集まっては飼鳥方法の情報交換や、飼育鳥の自慢大会等をしていたものです。
今はそれも、ネットと言う情報媒体の中に多く集約されつつあります。
我々は、いつでも、非常に便利に、欲しい情報を得る事が出来ます。

しかし、果たしてその情報は全てが自分自身にとって有益たり得るでしょうか?
私は、否と思います。
情報の中には、根拠のない物もあり、または誤っている情報も残念ながら存在します。

ですから、当ブログに訪問された方は、どうか、自分自身で考える時間をお作りください。
その情報が、自分にとって本当に有益かどうか。
私は、押しつけません。断定しません。
しかし、お勧めはします。


最初に皆さんにお勧めしたい事。
それが、表題でもある、防疫の為の参無運動です。

はて、耳にした事が無い…と思われる方が多いでしょう。
当然です。この言葉は私が作りました。

では、
参無とは何を指すのか…


防疫の為の参無運動
一、病気を持ち込まない。
一、病気を拡散しない。
一、病気に近付かない。


この三つは、鳥を飼う上で…だけでなく、生き物を飼う上でも、胸に留めておいてほしいと思います。

詳しく説明します。

今現在、無軌道な繁殖、病気に対する防疫の意識の低さから、日本国内では恐ろしい伝染病が蔓延している状況です。
いささか大袈裟な記述でしょうか。
否、今、ショップで雛で売られている多くのセキセイインコには、かなり高い確率で感染しているのではないか?と言われている病気があります。


それが、PBFDと、AGYです。
この感染症については、御存じの方も多いでしょう。
PBFD"Beak and Feather Disease Virus"
(オウム類嘴羽毛病)(コロ)
現在に至るも、治療方法の確立していない病気です。
治療方法どころか、感染経路すら判明していません。
様々な説がありますが、親から餌をもらう垂直感染、接触感染等が挙げられていますが、この病気に感染すると最初に脂粉が喪失する現象が確認できるため、空気感染についても非常に高い感染力を持っていると想像するのが理にかなっています。
まず、羽毛の色が悪くなり、風切り羽が抜け、尾羽も抜け、体毛がどんどん脆弱になり触ったり動いたりしただけで失われて行きます。再び生えてくる羽毛ももろく、羽軸の状態で抜け落ちる事も特徴的です。
通常は羽の症状が出てから暫くして、嘴や爪の変形、顔の表情(骨格)の変形も始まりますが、ここまで症状が進行しても生き続ける個体も少ないようで、特に小型のセキセイインコなどですと、症状がある程度で落ち着き、一生風切り羽が伸びずに病気と折り合いをつけて生き続けるか、急性症状により死に至ります。また、病気がある程度慢性化しますと、血液検査でも検出できない場合もあります。この場合は陰性と言われますが、巣引きをして雛を得ますとこの雛に感染している場合が高く、現在日本でここまで感染が拡大している最大の理由がこれに当たります。
消毒についても殆どの消毒薬に耐性があり、一般的に安価に入手できる次亜塩素酸系の消毒薬は全く効果が無く、アルコール系の消毒にも耐性があるようです。
唯一非常に効率的に消毒できる製品として、バイエル社製のアンテックビルゴンs(通称:ビルコン)がありますが、こちらは複合次亜塩素酸系消毒剤になります。この製品は養豚業界で広く使われていますし、先日の口蹄疫の大感染に置いては殺菌力を広く知らしめました。残念ながら非常に強力な殺菌剤であるために、一般には流通していない為、獣医師などを介して入手するしか方法がありません。また、色がピンク色で着色されてしまう事、製品が強力なので素手で触るとかぶれなどが起こる方も居る事から、出来るだけこの病気には出会いたくないと言うのは私の感想です。
私の実体験であり、学術的な後ろ盾はありませんが、以前10年ほど前になりますが、ショップに勤務していた時、私はインコオウム類以外でのPBFDの感染を目にしています。
一番感受性の高かった鳥はカナリヤで、十姉妹の感染も目にしました。
つまり、インコオウムには留まらない可能性も高い病気だと言う事です。
仮に、全ての鳥類に感染したとしたら?
鳥が嫌いな人は良いでしょう。
しかし、食卓に上る鶏肉、あれは鶏の産物です。万が一、鶏にも感染するように菌が変化したら?
これは、新型インフルエンザや口蹄疫をはるかに超える、本当に恐ろしい事になるでしょう。
鳥に感染する物は、やがて数十年、数百年のちには、人間にも何らかの影響を及ぼさないとも限らないのですから。
PBFDの感染の確定診断をするには、もっとも信頼できる検査は血液検査ですが、この検査も検体の状態によって非検出(陰性)になる事も知られています。また、たまたまその検体には菌の量が少なくて非検出になると言う事も残念ながらある病気です。
見た目に羽毛のおかしい様子、嘴のおかしい様子がありましたら、疑い、たとえ非検出になっても、疑い続ける必要のある病気だと思っています。昔の記憶ではありますが、この病気に実際触れて本当に恐ろしい病気だと思いました。
そして感染力の強い病気ですから、この病気の感染している鳥を飼養している場合には、その後新たに別の鳥を迎え入れる事はお勧めできません。
PBFDには、慢性症状と急性症状があります。急性症状ですと、感染してほんの数分で(羽毛など外的な症状が見受けられず)死に至る事が知られています。大型繁殖場等で、頻繁に鳥が死に至る現状があるならば、私はPBFDをはじめとする恐ろしい感染症の感染を疑い、そこから新たに鳥を得る事を避けます。


AGY

(メガバクテリア)(マクロラブダス症)
こちらはインコオウム類に限らず、カナリヤやキンカ鳥にも感染する事が知られています。
以前はメガバクテリアと言われていましたが、その後、真菌に分類されるのではないかと言う説が有力になり、特に酵母菌の一種なのではないか?と言う説もあるようです。現在ではマクロラブダス症と言われ始めているようです。
しかしまだまだ知られておらず、そのう炎とだけ言われて適切な治療を受けられ無い状況もまだまだあります。

こちらは感染が垂直感染(吐しゃ物を含める)のみではないかと言われていますが、例えば大型のペットショップでは雛1羽1羽に分けて餌を与えませんので、感染鳥を差し餌した後に別の鳥に差し餌をして感染させた結果、現在の感染拡大につながったのではないかと言われています。

初期でしたら抗真菌剤の内服投与が有効ですが、慢性化すると治療をしても慢性症状を呈し、予後不良(死に至る)となるケースが多いようです。また、抗真菌剤については、私個人的な感想ですが非常に強力な薬剤が多いため、小型の鳥に投与する場合はよく注意しないと脳障害を起こすケースがあります。



他にも怖い感染症としては、人獣共通感染症としてかなり有名である、オウム病があります。
この病気は、現在飼鳥として販売されている物も含めて、国内の6割が感染しているのではないかと言われています。
オウム病に鳥が感染しましても、殆ど症状が出ないのが特徴で、感染した鳥を接触し、飛沫感染しますと人間はクラミジア肺炎になります。
ただし、このクラミジアはオウム病を引き起こす物以外にも、人間、猫、犬等々、様々な物がありますので、鳥だけが悪者…とも言い切れません。
しかし、我々は鳥を飼育する時に、必ず「持っているかもしれない」と言う頭で接する必要があるかと思います。

例えば手乗りで飼っていますと、ついつい落とし物があります。
沢山の羽数を飼育していますと、落し物も大量になりまして……そこらへんの掃除がおろそかになります。
例えばエアコンの上に止まるのが好きな飼い鳥がいたとします。
この鳥の落とし物が、エアコン内部にまで入り込んだとしたら?
確実に飛沫感染の原因になります。

動物を飼うと言う事は、動物の命に責任を持つ事は当然の事で、更に自分自身のみならず、家族、そしてほんのすれ違うだけの隣人にも人獣共通感染をさせないように注意する事が必要になるのではないでしょうか。


その為に、参無運動をお勧めします。


一、病気を持ち込まない。

まずは、皆さんの幸せの為に、病気を御自宅に持ち込まないようにお気を付け下さい。
持ち込まないようにするためにはどうするのが良いのか?
これは答えが出ませんが、例えば盲点として、病院も感染する可能性がある事をあえて書き込みます。

よく、定期的な健康診断は重要…と仰る愛鳥家さんがいらっしゃいます。
それはとてもよい事だと思います。
しかし、それは果たして本当に防疫になっているでしょうか?

病院には、当然重篤な感染症を持っている鳥も、治療の為にやってきます。
上記した、とても恐ろしい病気、これを治療するために藁にもすがる思いで病院を訪ねる飼い主も確かに存在しているはずです。

他にも、鳥が多く集まる施設、イベント。
感染の可能性としては十二分にあります。

では、そう言う所にはいっさい行かずにひきこもるのが理想でしょうか?
それは否と私は思います。
それこそ本末転倒です。

まずは、病院に行けば感染する可能性があると言う事。
鳥の居る場所に行けば感染する可能性があると言う事。

そして、あらゆる病気について最大の防御は、薬でもワクチンでも無く、健康とストレスの無い環境だと言う事です。
太り過ぎでない程度によく食べ、健康に生きている事。

その上で、例えば鳥の居る施設に行った場合は、着ていた服は玄関で脱ぎすぐに洗濯、自分自身もシャワーなどで清潔を保ってから飼い鳥の所に行く…等が防疫では有効かと想像します。

たまに、可哀想だから…と、明らかに病気を持っていると想像できる子をお迎えされる方がいます。
私は、経験から言って、こういう行動をお勧めしません。
私は、自分の手がどれほど小さく、力無いかをよく知っています。

自分なら治せるだろう…と言う思いあがりで、本当につらい思いを何度もしてきました。

お勧めしません。
どんなに技術ある医師でも、病気の子をあえて迎え入れる事はありません。
何故なら、医学も医療も、薬品も、殆どの病気に対して非常に無力な事を知っているからです。

既に飼っていない場合、もちろんお迎えするのに問題は無いでしょう…が…

既に飼っていても、飼育場所を隔離できるから…とお迎えされる事を私はお勧めしません。
何故なら、PBFDをはじめとする恐ろしい感染症の一部には、単純に場所を隔離し服を着替えたりする程度では何の防疫にもならないと言う病気が多く存在するからです。

どうか、持ち込まないでください。
それが、広い意味で感染拡大を防ぐ最大の防御です。



一、病気を拡散しない。

もし万が一、自分自身の飼っている鳥が何らかの病気を発症してしまったら。

まずは、絶対に鳥や愛鳥家の集まる場所、イベントに参加しない事をお願いします。
あなたの行動で、多くの方が涙するかもしれません。

また、明らかにおかしい様子のある鳥をお迎えしない事をお勧めします。
まずは買う前に、肛門が汚れていないか、仕草におかしい所は無いか、目は生き生きとしているか、汚れていないか、羽は健常で抜けていたりする所が無いか。最低限この項目は厳しく考えてください。

特に、既にほかに飼鳥がいて、次にお迎えされる場合は尚更です。
何故なら、お迎えする事によって病気を拡散する可能性があるからです。

拡散してしまってもちゃんと病院に連れて行って治すから大丈夫…と思っても、それに巻き込まれる鳥は、そんな状況を望んでいるでしょうか?
私は否と思います。

鳥は自分で自分の一瞬すら、選択する事ができません。
選択するのは、その生殺与奪権含め全て、飼い主なのです。
寄る辺なき魂をどうか、受け止めてあげて下さい。

また、自宅でも、鳥の落とし物(糞)の処理は適正に行い、常に消毒を徹底される事をお勧めします。
鳥は、糞をします。
その体の構造上、10~20分に1回糞をする生き物です。
あんまり頻繁にするので「掃除なんかめんどくさい」と思う事もあります。
しかし、人と言う生き物は、習慣化してしまうと大して不都合を感じません。
習慣化するまで、1週間、3週間、1カ月、3カ月、1年、3年…と言う周期で、めんどくさくなってしまいます。しかし習慣化しますとそんなに不都合ではないもので、そうなるまでは自分との闘い、努力したい物です。

また、空気に拡散する可能性のある物、特にエアコンや扇風機などに糞をされないように注意しましょう。飛沫感染の原因になります。


一、病気に近付かない。

これは、上記している内容に前後する部分もあるのですが、例えば病院も感染源になりかねない事。
しかし、かかりつけ病院は絶対にあった方が良い。
ですから、付かず離れず、適度な距離を持ってお付き合いされる事をお勧めします。

また、感染している動物を販売しているショップを避ける事、そう言うショップからお迎えしない事。

感染している鳥を飼養している施設で繁殖した子を、たとえ無償であってもお迎えしないこと。

感染していると思われる鳥を触る事が無いように、御注意される事をお勧めします。





さて…こんな事を書いていますと、じゃあ鳥なんか買わない方が良いじゃないか!と、お叱りを受ける事があります。
いえいえ、最初に記述していますように、これは鳥だけに言える事ではありません。
犬猫も、最近で言えばもっとも恐れていた「ブルセラ症」感染の報告がちらほら聞こえてきました。
ブルセラ病は本当に恐ろしい病気です。
欧米のある地域では、非常に貴重な植物がこのブルセラ症によって絶滅の危機に立たされています。

ブルセラ病の感染力は非常に強く、ブルセラの感染検査をする施設で、完全に防護しているにもかかわらず検査員が感染している事が知られています。
治療法が確立してはいますが、非常に長い期間を要し、治療中は感染力を持っている事が問題です。

ブルセラなんて名前ですと、一般的に想像するのは全く別の話ですが、このブルセラ症に感染しますと、流産と死産を繰り返し、妊娠できない体になります。男性も当然感染し、また感染させてしまいます。


こう書くと、何だ犬猫も怖いではないか!では動物は一切飼わない方が良い!と、お叱りを受ける事があります。



いえいえ……
犬猫も、鳥も、あらゆる人獣共通感染症などたいした事はありません。

何故なら…

人間の最大の脅威は、人間だからです。
HIVをはじめとする、治療の確立していない感染症。
近年では中高年の結核感染が広がっています。
そして毎年、インフルエンザはどこからかやってきて感染し、感染した数%の人は脳症を起こし、また死に至ります。

これらの危機に比べたら人獣共通感染症など毛ほどの脅威もありません。



重要なのは、病気に関して適切な知識を得る事です。
知識は最大の武器であります。

昔の人は良い事を言いました。

敵を知り、まず自分を知れば百戦危うからず


適切な知識を持って愛鳥との幸せな暮らしを楽しまれる事を、私は応援いたします。