灯す。
ガイストが状況を把握するよりも早く、ソラが裏庭へと投げたガラス瓶は破裂した。
炎が広がり、風に揺れるのを見届けてソラはゆっくりとガイストに向き直る。
跡継ぎが魔法を使ったと思い込んだ教会側が口を半開きにして驚く中、ソラはガイストを凍てつく視線で見つめた。
三歳の幼児が放り投げたガラス瓶が炎を撒き散らす。casio カシオ
目の前で起こった事実を理解するのにはかなりの時間を必要とした。
「跡継ぎが魔法使い……。」
ガイストの護衛が困惑と共に思わず口に出した呟きにソラがほんの一瞬だけ嘲った。
「その男を捕まえろ。反逆者だ」
第十四話 ハメ手と提案
「その男を捕まえろ。反逆者だ」
ソラがそう言って護衛の男に人差し指を突きつける。
その言葉の内容と子供らしくない振る舞いが場を更に混乱させる。
演技していないソラを見慣れている警備兵が真っ先に立ち直り、ガイストの護衛を見る。しかし、反逆者扱いされている理由にまでは頭が回っていない。
それを見越してソラは口を開く。
「俺は魔法を使っていない。二等司教の持っている反応石が光っていない事からも明らかだろう。その男はクラインセルト家跡継ぎである俺に魔法使いだと濡れ衣を着せて“神の名の下に処刑する”つもりだ。手勢も引き連れて館の周りを囲んでもいる。動かぬ証拠だ」
ソラの指摘こそ濡れ衣である。しかし、状況証拠はソラの論を裏付けてもいた。
警備兵は顔を見合わせて頷き合うと素早く護衛の男を取り押さえた。
抵抗しかけたガイストの護衛は他ならぬ雇い主に制止された。領主軍を相手に騒動を起こせばそれこそ反逆者になってしまう。
混乱した頭でもガイストは冷静に対処したのだ。
その対応にソラも感心するが表情には出さない。
「跡継ぎ様、我々は反逆など企ててはおりません」
ガイストがソラに目線を合わせ、取り繕った笑顔で弁解する。なけなしのプライドで余裕があるように見せているが内心は混乱していて収拾がつかない。
「我々はそこにいるメイドを追っていただけなのですから」
ガイストがラゼットを手で示し無実を訴える。
しかし、ソラは眉ひとつ動かさない。
「そうだろうとも、領主軍を真っ正面から相手には出来ないから人質に選んだんだろ? 跡継ぎの側付きなら俺が駄々をこねて領主軍を押し止め、積極的な攻勢には出れないものな」
ガイストが目を剥く。
ラゼットを追いかけていた事実を逆手に取られたのだ。
「残念だったな。捕まえられなくて」
ソラがにっこりと微笑んだ。casio プロトレック
それは圧倒的な余裕。勝者の笑みだ。
踊らされていたのだとガイストはようやく気が付く。最早、外堀は埋められ弁明の余地がない事も分かってしまった。
「……何時から」
何時から計画されていたのか、あのガラス瓶は何か、本当に魔法を使っていないのか。ガイストは脳裏をよぎるあらゆる疑問から首謀者を探す。
──そう、自分を罠にはめたのは誰か。
「ラゼットさん、あなたがこれを?」
恨みを込めた視線でガイストがラゼットを睨む。
ラゼットは肩を竦めてソラを見た。ソラは一瞬だけ苦笑したがすぐにそれを打ち消し、ガイストに声をかける。
「ガイスト、二等司教と名乗るからには教会の者だな?」
ソラの問いかけに何か罠があるのではないかとの懸念がガイストの頭を占拠する。
跡継ぎはラゼットに何かを吹き込まれ操られているのだろう、慎重に考えを巡らせた彼はとりあえず事実のみを答えることにした。
「その通りです」
「そうか。ではそこで捕まっている教会信者
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