※リクエスト作品になります。

だいぶ前のお話の続きなので忘れてしまった方は是非⇩




理佐side




朝起きてみると、身体がやけに重たかった。疲労からくるものではないと瞬時に察したけど、身体が動かない。

しばらく意識を朦朧とさせていたけど、意を決してとりあえず身体を起こす。隣のベビーベッドではまだ由依が寝てくれているみたいだった。

はぁ…ありがたい。由依が大人しく寝てくれているだけで少しは落ち着いて行動できそうだ。

移しちゃ可哀想だからマスクつけて、夢見心地な足取りで体温計を取りに行く。

脇に挟むと同時にベッドに座ると、ドッと疲れが来た。


理佐「はぁ、、、つら、」


無情な電子音が鳴ってみた数字は37.4。微熱。

これくらいなら仕事いけるかなぁ…、でも行けたところで動けない気がする。バレたら速攻友香に摘み出されるだろうし。

夢が現実かもわからない中でぼーっと優柔不断になっていると、ふがふがとぐずり出した由依が泣き始める。


由依「んっ、…ふぇ、えーん…!(泣)」


寂しがり屋な由依は近くに握れるものがないとよく泣くんだけど、今日はその泣き声がズキスギとこめかみに響く。

でも仕方ない。抱っこしてあげよう。

だって、この家にはこの子と私しかいない訳で、私が体調を崩したからと言って代わりに子守りをしてくれる人なんていない。

…こんな時、やっぱり過去の自分を恨む。


理佐「…泣かないで〜由依、お願い…」
由依「え〜ん、ふぇーん、(泣)」
理佐「いい子だから、、、お願いだから泣かないで、」


そう言いながら由依を抱き上げた時、腕に上手く力が入らなくて怖くなった。今にも落としてしまいそうな由依のことをそーっと膝に乗せる。

するとさっきまですごい泣きっぷりだった由依は静かになってぴたっと私の身体にくっついて寝てしまった。その仕草がどうしても可愛く思えてしまう私。

……本当、由依のことだけは何しても許せてしまうなぁ、私(笑)さっきまでは悪魔だと思っていたはずなのに。

そして、由依が完全に熟睡して落ち着いてから私はある人に電話をかけた。



友香side




まだ出勤には早い早朝の時間、珍しい友達からの電話で私は起こされる事になった。


プルルル…プルルル…


もう、後少し眠れたのに…。誰だろうこんな時間にかけてくるのは、。と思って見てみると「理佐」の文字。

何かよくないことを感じ取って、さっきまでの悪口を忘れて素早く通話にした。


友香「…もしもし、理佐?」
理佐『、ごめん友香……、早いのに、』
友香「うん、大丈夫だけど、、どうしたの?」
理佐『熱出たみたいで……会社、休みたいから、、』


上の人に伝えてほしい、とだけ私に言う理佐だけどそんなメールでもできることで理佐が電話してくると思えなかったし、なにか言いたいことが喉に詰まってるようなものを感じた。


友香「…それだけ、?」
理佐『…。』
友香「、、、理佐、遠慮はなし。本当はどうしたの?」


そこまで私が詰め寄れば苦しそうにボソボソと話してくれる理佐。


理佐『……由依、』
友香「由依ちゃん?由依ちゃんも風邪ひいちゃってるの?」
理佐『ちがっ、、由依、泣くとつらくて……、助けてほしいっ   て言うか、』


誰にも助けてと言えなくてパンクする理佐を今まで何度も近くで見てきた私は、今のこの理佐がどれだけ弱っているのか安易に想像ができた。


友香「そっか。わかった、じゃあとりあえず私今から理佐の家   向かうから。理佐は大人しく寝てて。」
理佐『迷惑、かけてごめん。』
友香「償いは元気になってからでいいから。ほら早く切って寝   な?」


それから、プツっと切れたスマホを片手に着替えて財布だけ持って家を出た。

もう、本当に手が掛かる友達なんだから。

それにしても、自分がピンチになった時に真っ先に考えてるのが由依ちゃんのことだなんて。理佐も変わったんだなと思った。




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普段会社に向かう方向とは真反対に車を出して少しだけ。由依ちゃんを産んで育てる覚悟を決めた理佐が、由依ちゃんの為に思い切って購入したマンションが見えてくる。

玄関の鍵は開けたままにしてくれているらしい。

防犯的にも、理佐は尚更危ないんだから「私が来た時に開けて欲しい」とは言ったけど、だいぶ体調が悪いのか、動くのが面倒だからと。

案の定、扉を引いてみればやっぱり鍵はかかってなかった。本当に危なっかしい性格なんだからって言うお説教は二の次にして、寝室へと急ぐ。


友香「理佐…?」


静かに扉を開けて見れば、だいぶしんどそうに寝込んでる理佐がいた。


理佐「友香、」
友香「遅くなってごめんね。」
理佐「ううん、ありがと…」ゴホッ、ゴホッ


マスクして冷却シートをおでこに貼ってる理佐。

学生の時は、理佐、自分で熱に気づかなくて学校で倒れていたこともあったのに。一丁前に大人になったんだなぁ、なんて。

そんなことは一旦置いておいて、熱がどれくらいなのか、首を触ってみると、だいぶ熱かった。と同時にちょっと手に擦り寄ってくる理佐。


友香「わあ、凄い酷い風邪ひいちゃったみたいだね」
理佐「ん、平気、。それより、由依、」
友香「うん、わかった。私、由依ちゃんの面倒みてるから。大   人しく寝てなね?」


頭をそっと撫でると力なく笑う理佐。その、いつもの元気な姿からは想像できない弱々しい姿に抱きしめてあげたくなった。

…全くもう。自分が辛い時に無理しなくていいのに。

そんな理佐が安心したように目を瞑って眠りについたのを確認してから、側にあったベビーベッドにいた由依ちゃんを抱き、リビングに戻った。


由依「んぁ、」
友香「ぁ、よしよし。大丈夫だよ〜。由依ちゃんもお熱だけ測   ろうね〜?」


リビングに戻ってからは、念のため由依ちゃんも熱を測って、おむつを変えてあげて、お腹が空いてそうだったからミルクをあげてと、、、椅子に座ってる時間がまぁ取れない。

…確かにこれは、高熱の中じゃ難しいね。

由依ちゃんと二人暮らしの家の中で無理して1人倒れられても困っちゃうし、理佐が助けを求めてくれて本当によかったと思った。

すると、ご機嫌に今までミルクを飲んでいた由依ちゃんが心地悪そうに動きはじめる。


由依「んぅ〜、ふぁ、、、ふぇーん、えーん…!泣」
友香「えっ、ど、どうしたの〜?」


子供の扱いなんてそんな慣れてないし、おむつやお着替えはさっき済ませたばかりだから何をしたらいいのかわからず私はその場で困惑。

しばらくしても泣き止まない由依ちゃんに、そろそろお手上げになりそうだったその時、横から手が伸びて来て、由依ちゃんを軽々と抱き上げられた。


理佐「…んしょ、」
友香「っ!理佐、ダメだよ、ちゃんと寝てなくちゃ!」
理佐「んーん、、だいじょぶ、」


やっぱりダルそうな様子は相変わらずで心配になるけど、理佐に抱えられた瞬間由依ちゃんが泣き止んだことに驚く。

そのことに感動していると理佐が「由依、あんまりミルク好きじゃないみたいで、私のしか飲んでくれないんだ」と。

そのまま由依ちゃんを抱えてソファーで授乳し始める理佐。でも、その心を許し切った姿に私は突っ込まずにはいられなかった。


友香「ちょっ、理佐もうちょっと隠れながらしてよ、(笑)」
理佐「えー……別にいいじゃん。温泉だって一緒に入ったこと
   あるし。」
友香「そうだけどさぁ、」


私がいることに構わず、何も隠さずに由依ちゃんに母乳をあげている理佐。

いくら友達でも、もう少し私のこと気遣ってくれてもいいのにと思った反面、自分の身体が辛い時にも由依ちゃんのために頑張れる理佐は本当にいいお母さんだなと思った。

きっと身体も怠いだろうから、私は手頃な薄手のブランケットを理佐の肩からかけてあげる。


理佐「…ありがと、」
友香「うん」


かけてあげた後にそっと由依ちゃんの頭に手を添えた。温かくて、ちゅっちゅって時折吸う音が聞こえてくる。


友香「……可愛いね、由依ちゃん」
理佐「ふへっ、でしょ。」


自分が褒められた時より嬉しそうな顔をする理佐。立派なお母さんの顔をしていた。

それから暫く黙って2人で由依ちゃんの飲んでる様子を見守っていた。時間が止まっているような、そんな静かさだった。


理佐「友香はさ、、なんでずっと私のそばにいてくれるの?」


体調が悪いからなのか、いつもなら絶対聞いてこないことを言ってくる理佐。


友香「なんでって……。」


私が理佐から離れるわけないじゃん。

由依ちゃんがお腹にいるってわかった後、理佐だけが悪いわけじゃないのに自分だけを責めるように、本当は産みたいはずなのに、

悔しそうに声を出さないように我慢して「この子さえいなければいいのに」って心にもないことを言って泣いていた貴女を1人になんてできるわけないじゃん。

でも、そんなこと言ったらきっと理佐の苦い思い出を思い出させてしまうだけだから。


友香「…理由なんてないよ。だって私たち友達でしょ?」


笑顔を作って嘘をついてあげる。

今日頼ってくれて嬉しかったんだから、もっと早く頼れよ馬鹿。

いつこんな時が来てもいいように私はずっと理佐からの助けの声を待ってたんだから……遅いよ…遅かった、遅すぎたよ今日まで。

理佐への心の中での罵倒は、その不器用さが生み出した愛しさの裏返し。

言葉にしなくとも理佐に思うことは沢山ある。だけど、それをあえて言わないで、理佐に何があっても私はいつもそっと隣にいてあげたいんだ。


理佐「…ありがとう」
友香「…なんのこと?」
理佐「…ううん、なんでもない。」


由依ちゃんを抱いてるのとは反対の腕を伸ばして抱きしめてくる理佐。

その気持ちだけで、私は何倍でも、何十倍でも理佐のために頑張れる。

貴女に何があっても私はずっと味方でいるから。

優しく理佐と由依ちゃんのことを包み込んだ。



fin





お読みいただきありがとうございました!

だいぶ前のお話の続きだったので、結構迷走した部分ありましたが、お許しください🙇‍♂️

このストーリーは後もう1話で一応リクエストが終わるのでそこで終わりになります。よろしければもう少しお付き合いください✨

おっす。