※理佐さん男性化させています。リクエスト作品です。
由依side
私はこの六本木にある会社で働く普通の社会人。
今日も定時で帰るべくお仕事を頑張っている。
去年まではこんなに忙しくなかったんだけどなぁなんて、
柄にもなく弱気になってみる。全ては、去年、上司だった人のせい。
去年までの上司、渡邉さんはとっても仕事のできる人で沢山溜まっている人がいたら半分掻っ攫っていき、その人よりも早く終わらせて返してくるような優しい人。いわゆるハンサムというべきの類。
その優しさに心掴まれる女性社員も多く、とても人望が厚い。
私は渡邉さんが嫌いなわけではないが周りの人達が癪に触るため渡邉さんが出社したときには周りを取り巻く女性社員に対して「うっさいな…」とぼやく毎日をついこの間まで送っていた。
そんな渡邉さんはその仕事っぷりが評価され、今年の春、昇格されたのだ。そのお陰でうちの部署は人が減り、毎日大忙し。おまけに、いなくなったらいなくなったで「寂しいな」なんて思ったりして。
あーあ、私馬鹿みたい、あんな人ほっとけばいいのに…
全ては疲れのせいだと言い聞かせる。
そんなことはさておき、お仕事だ。画面と向き合ってどれくらい経ったのだろう。気づけば周りに人がいなくなっていて外も暗くなっていた。
小林「みんな帰っちゃったのか…」
まだ少しかかりそうだな……。残りの仕事を見て思う。渡邉さんがいた時はこんなに溜まることなかったのに…。あぁ、私渡邉さんに頼りすぎてたんだ。今更気づく。すると扉の方から聞き覚えのある声がした。
「がんばってるか?」
小林「っ!あ、渡邉さん…。びっくりしましたよ(笑)」
渡邉「ハハッ、ごめんごめん。驚かせたくて。」
そう言って近づいてくる。渡邉さんのスーツ姿は不本意だけどいつ見てもカッコいいなと思う。だけど、私は気づく。渡邉さんのネクタイが違うことに。
いつも渡邉さんはお気に入りのネクタイと時計をつけて出社すると前に本人から聞いていた。
こだわりが強くて新しく買ってもなんだかんだで慣れ親しんだ方をつけてしまうとかなんとか言っていたっけ。新しいネクタイも、しっくりくるまで大分時間がかかるとか。
…渡邉さんが新しいネクタイに慣れてしまうくらい長い時間が経っていたのだ。
そんな私の見たことないネクタイをつけている渡邉さんをみて「あぁ、もう私の上司じゃないんだな」と実感する。
渡邉「どう?仕事は?困ったことない?」
小林「はい、なんとか。」
渡邉「それは良かった。…ぁ、データ作ってたのか。」
小林「はい、色々悩んでたらこんな時間に…」
渡邉「どれどれ……」
小林「あっ、えっと、まだ途中なので…!」
私の声も聞かずに、私に覆いかぶさりマウスを動かして見ていく渡邉さんに不覚にもドキッとしてしまう。 少し下から見ても綺麗なお顔…。そりゃ社員さんたちがキャーキャー騒ぐわけだわ。
渡邉「……うん。よくできてる。流石、小林だな。」ポンポン
小林「…//」
優しく微笑んできたと思ったら私の頭を撫でてくる。誰にでもやっていることとよく分かっているけど、私だけにやってくれているのではないかと錯覚してしまう。
渡邉さんはいつもこう。私が入社したときから上司だったというのもあるのか、いつまで経っても私を新人扱いする。「大丈夫か?」とか「わからないとこない?」とか思わせぶりな態度を取ってはサッとどこかへ消えてしまう、そんな狡い人。
いや、今はそれはどうでもいい。早く家に帰るためには仕事を片さなくては。だけど、さっきまでずっと悩んでいた問題が解決していないために先へ進めない。八方塞がりだ。
そんな私の心情を読み取ったのか、渡邉さんが言ってきた。
渡邉「ちょっと飲みいくか。」
小林「えっ…」
渡邉「安心しろ、俺のオ・ゴ・リ。そんな考えてばっかいたら
つまらない大人になっちまうぞ〜♪」ワシャワシャ
小林「ちょっ…!なんですか!」
渡邉「へへっ、ほらっ!行くぞ!」
小林「……もう、(笑)」
渡邉「ふふ、やっと笑った。」
小林「え?」
渡邉「小林は笑ってたほうがいいぞ。折角のいい笑顔が
台無しだ。」
またそうやって私をもて遊ぶ。だけど、遊ばれたって嫌いになれない私はもう渡邉さんの沼にハマってしまっているのかもしれない。
はぁ、ついこの間まで渡邉さんの周りにいる社員さんを悪く思ってたけど、私も大概だな…
ー居酒屋ー
理佐side
俺はいつものように慣れ親しんだ居酒屋へ入った。女の人とご飯に行くときはいつもこう言う砕けたお店に入るようにしている。
人目も多いし明るいし、もし俺が変な事をしようと考えているとしたら不利になるところだからだ。つまり、「変なことはしませんよ」と間接的に伝えているつもりだ。
そして、今日小林をここへ連れてきたと言うことは少なからず俺は小林の事も女として見ているというわけだ。いや、違うな。唯一、女として見ていると言った方が正しい。
だって居酒屋なのにこんなにも心臓がバクバクしている。
こんなの相手が小林じゃなきゃありえない。
何年か前に新人で入ってきたときは、何も出来ずに毎日「すいません、すいません」と頭を下げていたのに今では一丁前に残業とかしちゃって……。成長したもんだなと感心する。
オドオドしてて、ミスが多くて、会議でメモ取ってると思って覗いたらウトウトしてて何書いてあるかさっぱり読めないし、飲み会に誘ったら次の日二日酔いで、家に帰したら変なLINEが来るし、ここまで言うと何もできない奴だな本当。
だけど、守りたくなる。必死にメモを見てパソコンカチカチする姿は応援したくなるし、できた時には頭を撫でてやりたい。
_____あぁ、つくづく好きだな、俺。
渡邉「おい、そんな呑んで大丈夫か?小林、前に酔って
家帰したことあったろ?」
小林「らいじょぶです…、」
その数秒後、スゥッと聞こえてきて寝てしまったことを悟る。あー、少しは深い話でもできるかと思ってたんだけど。頬を赤くして酔い潰れてしまった小林に目を奪われる。
渡邉「好きだ、小林……」
俺は寝ている事をいいことに小林の頭を撫でた。
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由依side
翌朝、起きたら知らない匂いがした。自分の家の布団の匂いじゃなくてもっと爽やかで柔軟剤の香りがする。
思わずいい匂いすぎてスゥッと目一杯息を吸ってみる。
はぁ、いい香り。なんだか安心する。
そのまま二度寝をしてしまいそうになっているとガチャっと扉が開く音がして反射的に目をやる。
渡邉「あ、起きた?」
小林「っ、?!!渡邉さんっ!なんで……?!」
待って、私昨日何してたんだっけ。、少し不安がよぎる。
もしかして、私、渡邉さんとしちゃった感じ?
バッと布団をまくって服を確認すると着ていたけど昨日のスーツではなかった。
そんな私の姿を見て、渡邉さんが焦り始める。
渡邉「あっ!なんも!本当になんもしてないから!!!
ただ、その、小林が酔い潰れたから家わかんなくて
俺の家に呼ぶしかなくって…!」
小林「あっ、どうも、ご親切に……」
渡邉さんの明白がわかって少し安心するけど、着替えていると言うことは、、、
小林「あのっ……見ました…?」
渡邉「っ?なにが?」
小林「そ、その着替え…とか///」
渡邉「あっ、見てない!見てない!服、渡したらちゃんと小林
自分で着替えたから…!俺、着替えの最中、外いたし!
」
はぁ、良かった。無意識に力が入っていたのか、肩の力が抜けてストンと落ちる。
渡邉「……あの、さ。」
小林「っはい?」
渡邉「朝飯、食う?」
それから、朝ご飯をご馳走になって渡邉さんと一緒に渡邉さんの家を出た。その頃にはもういつもの私たちに戻っていて「服が変わってないから怪しまれちゃうかもね」なんて笑いあった。
小林「……迷惑、たくさんかけちゃったので今度お礼させて
ください。」
渡邉「あ?あぁ、いいよ。別に。酒飲ました俺も悪い」
小林「いえっ、私がしたいので。」
渡邉「ふふ、わかった。んじゃ小林の奢りで高級焼肉な!」
小林「はっ?!それは違うじゃないですか!自分は居酒屋
なくせに!」
渡邉「ハハッ朝から元気だな、小林。」
側から見たら付き合っているように見えるのだろうか。
そうみえていたら、少しばかり嬉しいな、なんて思ったりして。
それから会社でいつも渡邉さんの周りを取り巻いている社員さん達に質問攻めをくらい朝からヘトヘトになったのはここだけの話。
ー数日後ー
渡邉「んぅ〜!最高!やっぱり人の金で食う飯は美味い!」
嘘だと思っていたのに、本当に焼肉奢らせられるとは…。
だけどこんな無邪気な渡邉さんの表情をみるとたまには人に奢るのも悪くないかもって思ってしまう。
小林「良かったです(笑)」
笑ってそう返すと酔いが回っているのか渡邉さんは変な事を言ってくる。
渡邉「…小林の笑った顔って本当にいいよな」
小林「えっ…?」
渡邉「いや、さ。俺、たまに思うんだよね。笑顔世界選手権が
あったら絶対、小林は上位だろうなって。」
小林「なんですか、そのくだらない選手権(笑)」
そう言ってみたけど、口とは裏腹に私の心臓はバクバクと動いている。昔から「笑っていた方がいい」とか「笑えー!」とか呑気に言ってくる渡邉さんだけど、そんなに真剣に目を見つめられて言われたら流石に来るものがある。
するともっと礼儀正しく箸を置いて言ってくる渡邉さんに私も自然とそうしていた。
渡邉「小林、俺やっぱ小林のこと好きだわ。子供っぽいし
頼りないところとか気に入らないところとかあるかも
しれないけど、俺と付き合ってください。」
そう頭を下げてくる。
その下げてきた頭は今よりも明るい金髪寄りの茶髪だったな〜と、焦茶になった彼の髪を見て思い出す。あれから早、4年。
私は自分が入った時に渡邉さんが付いていた地位と同じところまで上り詰めた。
小林「おはよう。これ、すごい良かったから少しだけ直して
また出して。」
小林「髪の毛切った?スッキリしていいね」
小林「飲み物買ってくるから欲しい人〜?」
毎日下の子のお世話で忙しいし、身体が足りないと思うときもあるけど人の為になるってとても楽しいことだとこの地位についてから知った。
……あの時誰かさんがしていた、仕事を半分掻っ攫って行って本人より早く終わらせて返す、みたいなことはしないけどその気持ちもわからなくはなかったり。
やっぱり一緒にいると似てくるのかな、なんて。
あー、これ、社長室に持っていかなきゃ。ノートパソコンをどけると期限ギリギリのものが出てきて「危ない、危ない」なんて思いながら社長室に急ぐ。
小林「コンコンコン、失礼します」
? 「どうぞ。」
小林「…これ、来月の企画なのですが宜しければサインを
お願いします。」
? 「………ねぇ、今2人だろ。」
小林「仕事中です。」
? 「堅苦しいな〜もう。そんなんじゃつまんない大人に
なっちまうぞ〜!てか、もうつまんない大人か」ワシャワシャ
小林「っ!あぁもう!折角、朝うまくいったのに!社長の
バカ!」
? 「…『理佐の馬鹿』だろ?」
小林「なんでもいいよ、ほら早くしてよ」
そう、私が催促したにも関わらず、にやけ顔で全く焦る様子のないこの困った社長。
全く、こう言う子供みたいなところ全然変わんないんだから。渡邉さんにクシャクシャにされた髪の毛を直しながら思う。
渡邉「うん!いいと思うよ。」
小林「良かった。ならサインして。」
渡邉「はいよ〜」
高級感溢れるこの部屋には不釣り合いな100円のボールペンでサインしていく渡邉さん。
…あの時私はなんて答えたのか、そんなの言わなくたって彼の着けている私がプレゼントとしてあげたネクタイと、私と渡邉さんの左手の薬指に光る指輪が物語っている。
渡邉「はい。」
小林「ん、ありがとう。」
渡邉「…今日の夜ご飯何がいい?」
渡邉さんが手を離さないから一向に私は受け取れない。ここで彼の要望に従い答えるだけなのは私の称に合わない。
「ネクタイ曲がってるよ」なんて言いながら直すフリして引っ張り、少し背伸びをしてキスする。
小林「っ…」
渡邉「んっ…?!」
小林「……今日はカレー食べたいっ」
渡邉「ぉ、わ、わかった。」
小林「……じゃあね」
渡邉「ぉ、おっす。、」
室内で何事もなかったかのように「失礼しました」なんていい扉を閉める。そして、歩きながらさっきのシーンを思い出してニヤける。
ふふ、かなり挙動不審だったな〜。私の悪戯心がくすぐられる。さっき彼のことを「子供みたい」なんて茶化したけど、こんなことをする私も大概だ。
小林「……やっぱり一緒にいると見てくるのかも」ボソッ
早くこの破顔した顔を直さなきゃとか思いながらエレベーターに乗った。
to be continued…
お読みいただきありがとうございました!
1話完結にしようと詰め込んだから長くなりました、ごめんなさい。🙇♂️もう途中の展開で悩みすぎてよくわからないところも出てきてますがスルーでお願いします😅
そしてフォロワー様800名超えました…!つい最近、700名のお祝いをしたような……。いつもありがとうございます🙇♂️
そして、少しだけお知らせです。マシュマロで頂いているリクエストのことで、今までは貰った順に出していたのですが、これからは書き手が思いついたものから出していく形に変えたいと思います。
リクエストにお応えするのが遅くなってしまうものもあると思いますが、必ず全て書けるように頑張りますのでそこはご安心ください。これからもどうぞK46をよろしくお願いいたします
それでは、おっす。