以前の記事から3年も経つあいだ、世の中では「ソーシャルメディア」という言葉が浸透して、「CGM」が過去の言葉になって、メディアはますますリアルタイム性を強めて世界が変わる速さは加速度を増している様に思う。
 個人的にもモバイルメディアに可能性を感じて仕事を移ったものの、今やスマートフォンの登場によってPCとの垣根は融合し、ソーシャルウェブの広がりで情報はリアルタイムで更新され、位置情報の利用も加わり、リアルとも融合も進んできている。
 たぶん世の中は情報の発信者が様々な組織(国や会社、トップクリエーター)の代表者から個人に移っていく過程なのだと思う。そして、自分が知覚できる情報が世界なのだとしたら、世界の中心は個人となる。
 個人が主役の世界は、twitterに見られるようにリアルタイムで感情的な世界になるだろう。ピラミッド構造の組織は作りづらくなりプロジェクト型の組織や、組織を超えたプロジェクトで働く事が多くなるだろう。国など地域を超え、価値観を同じくする大多数の人向けのサービスや商品を提供する事が多くなるだろう。移り変わりの激しい世界で組織の壁で守られる事も少なくなる中、自分のアイデンティティを見直す事が多くなるだろう。
 顧客のニーズから市場が作られるとすれば、上記の様な世界で個人が抱える課題が市場となる。

 個人は、より個人間でのつながりを求められるようになり、多くの情報の中で必要な情報を取捨選択する技術(キュレーション)を磨くか、それを身に付けた人物を自分のネットワークに持つ必要が出てくる。
 情報の発信者が個人となる流れが進むほど情報の量は爆発的に増加して、避けられないリアルタイム性の進行は個々の情報の質を下げる(断片化させる)。
 その中で情報を見極めるには、何人かの自分と共通の価値観を持っている人物の取捨選択する情報から自分の求める情報へたどりつく、あたかも自分のネットワークの人物を使ってダウンジングをする様に情報を取り扱う必要に迫られる。
 必要な事は2つあり、「他人と自分の間で共通の価値観を理解する」事と、「自分の価値観について体系化する」事と思う。他人と共通の価値観を見つけるには、ケーススタディを繰り返したり、共通の体験を見つける・行う事により実現できる。自分の価値観について理解するためには、自分の体験(歴史)を振り返り、価値観を決めた事象についてのコンテクスト(歴史、あるいは文化)を理解する事が必要。
 従って、自分や他人の体験をネットを使って整理して、コンテクストを理解するのに役立つサービスの開発に取り組もうと思う。
Googleの発表した"Social Graph API"は、Googleの資産を利用して、特定のタグの検索結果をAPIとして返す仕組みでした。
つまり、Googleの指定したタグを埋め込めば勝手にクローリングして表示しますという仕組みです。これは、対応サイト側も、Googleのクローラーがアクセス可能な場所にタグを含んだ情報を置かないといけないので、ユーザーに紐づいた情報を外部に公開する必要が出てきます。
リンク情報などユーザーの行動結果をユーザー自身に所属する物として取りあつかい、複数のサイト間で利用できるようにしようと(私が理解している)いうOpen化の流れと今回のSocial Graph APIのアプローチはズレがあると感じます。
とはいえ、携帯電話などネットにアクセスするハードの多様化に伴いどんどんユーザーが増えネットリテラシーの低いユーザーが増えている世界では拒否反応は少数派になってしまって、個人に属する情報もどんどん公開されていく流れは止められないのかもしれませんが。

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■Webマーケティングセミナー

 2/29「Social Graph~新しいネットの潮流~」セミナー(東京)

 主催:株式会社ゼロスタートコミュニケーションズ

 詳細:http://zero-start.jp/seminar_20080229.html

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Googleの提唱するOpenSocialや、Yahooも対応したOpenIDなど、ネットに押し寄せている共通化・共有化の波と対策について、ネット業界を代表するプロデューサーとエンジニアが語る。


日時:2008年2月29日(木)16:00PM~18:00PM(受付開始15:30)
会場:第二鉄鋼ビル9Fジャフコホール(最寄り駅:東京駅)
http://www.jafco.co.jp/others/map.html


<講演内容>
16:00~17:00
「共通化、共有化、そして何が起きるのか?」
 株式会社ゼロスタートコミュニケーションズ
 専務取締役 伊地知 晋一
 
17:00~17:10 休 憩
 
17:10~18:00
「Social Graphがもたらす次世代ソーシャルメディア」
 株式会社ゼロスタートコミュニケーションズ
 代表取締役社長 山崎 徳之


詳細・お申込みは以下のURLをご参照下さい

http://zero-start.jp/seminar_20080229.html


===【関連情報】====================

■現在CNETにてSocial Graphについてのコラムを連載中です。
http://japan.cnet.com/marketing/socialgraph/

■SocialGraphのデモサイト作りました!
http://socialmatrix.jp/
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※本案内は転載可です。ご関心のある方にお伝えください。


仕事でソーシャルグラフ(Social Graph)関連のリリースを担当した際に少し考えた事をまとめます。


 ソーシャルグラフとは、個人的な理解ではネット上での関係性を「サイト」の壁を取り払って把握出来る為の仕組み作りをしようという活動だと認識しています。Googleも関わっているOpenSocialやDataPortability Workgroup、あるいはYahoo!も対応を決めたOpenIDの取り組みなど、サイト間の垣根を除き個人に属する情報を自由に扱えるようにしようとする動きは現在のトレンドです。

 ソーシャルグラフ(あるいは類似した取り組み)による成果として、「初めて利用するサイトでも他のサイトでリンクしている友達をすぐに見つけることができ、今まで作り上げた友人関係を利用できる。」点を強調されることが多く、取り組みも「共通規格の策定」と「利用する仕組み(API)作り」に注力しています。確かに、他サイトでのリンクなどを簡単に移行できるのは便利です。しかし、それほど必要なのでしょうか?例えば、Brad Fitzpatrick氏のレポート でも指摘されている通り、人はネット上の全ての関係性をまとめたい訳ではないです。ソーシャルグラフをはじめとした取り組みを非難しているわけではありません。素晴らしい取り組みだと思っていますが、現在、成果として語られることはいささか近視眼的だと思います。

 それでは、実際にネット上に散らばっている自分の活動の結果を全て利用できるとしたら、何が出来るのでしょうか?私の答えは「自分の分身を作れる」です。

 ネット上の活動結果を自由にまとめられる様になれば、最初に行うのは友人関係をリアルの世界の様にいくつかの人格(例えばプライベートと会社など)に分けて統合するでしょう。これはインターネットの特性の中で「地域や時間を越える」というWeb1.0的なメリットを享受しているに過ぎません。つまり、リアルの世界の延長です。しかし、そもそもWeb2.0と呼ばれた動きの大きな要因は、CGMつまりユーザーが発信者となる変化によるものです。「個人が発信者(メディア)となる」に「全ての行動結果(情報)がサイトを超越して個人に帰属する」が加わると、個人の発信した情報がサイトを超え関係性を持つのでは無いでしょうか?つまり、自分の人格の一部を切り出して活動(ネットワーク化)が出来るという事だと思います。あたかも、自分の分身を作ることが出来るようにです。

 大航海時代には多くの人間が異国(違った習慣を持ったコミュニティ)へ行く事が日常となり、飛行機が出来て素早く移動する事が可能になりました。電話やメールで遠くの人間と連絡が取れるようになりました。やがて、宇宙船での旅行が普通となり、最終的には瞬間移動を行う手段が出来るのではないでしょうか。一方で、自分の時間を有意義に使いたいという望みは、自分の代わりに働いてくれる人間を雇ったり、さまざまな電化製品を使って作業を軽減・短縮化してきました。そして、ソーシャルグラフ(あるいはその先にあるもの)により人脈(ネットワーク)の構築においても代わりに行ってくれるものが出来るのではないでしょうか?さらに想像を膨らませれば、もしかしたら分割された人格が独自のネットワークを作り上げて発展していく事で、複数の人間の思考が合わさった人?格が出来上がり、一種のコモンセンスの固まりの様な物が出来上がるかもしれません。

 ただし、現在まだ議論が詰まっていない課題が「どうやってネットワークを作り上げるのか」です。個人の活動履歴が自由に使えても、友達リストだけでは非常に単純なネットワークしか作り上げることが出来ません。しかし、ネット上の活動履歴は発信した情報(記事、画像、動画)、閲覧の履歴やコメント、トラックバックなど様々な形式をとります。これらを紐付けて関連性の高いものを自動的に抽出する仕組みも重要な技術になってくると思います。

 先日発表したソリューションは、扱える情報も限られ、サイト内での相関度の計算を行う仕組みとなっていますが、既にコミュニティサイト(ミニブログ)で実装され、人以外にもFeedの相関性を求めるデモを開発するなど、将来的には上記の分野にいくのではないかと思っています。



【参考:本文で述べたリリースの関連記事】

ソーシャルグラフをサイトに導入できる「zero-Matrix」、ゼロスタートが提供 (CNET Japan)

http://japan.cnet.com/marketing/story/0,3800080523,20365678,00.htm


「友人おすすめ」機能付き 携帯専用ミニブログ「chopi」 (ITmedia)

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0801/17/news008.html


【参考:Social Graphについて】

「"Thoughts on the Social Graph" Brad Fitzpatrick」

http://bradfitz.com/social-graph-problem/


上記の日本語訳

http://www.ce-lab.net/ringo/socialgraph_proposal.html

http://d.hatena.ne.jp/antipop/20070819/1187527599


【参考:ミニブログ「chopi」】

http://chopi.jp


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googleのソーシャルネット規格?に関してのコラムを読んで、ますます会員の囲い込みが難しくなる将来の見通しに共感しました。
一時期流行った、今までデータとして溜まりにくかった口コミなどの情報を溜め込んで、金のなる木を作りましょうといった考えは、情報の所有者の曖昧さの上での話でしたが、情報の提供をユーザーに依存するがゆえに、緩やかにユーザーに所有権が移っていくのが避けられない事だと思いました。
これからのサービスは溜め込んだ情報を開放することで、ユーザーに逃げられない事に気を付けなければならないでしょう。その為に、ますますAPIの実装が開発要件として重みが増して来る筈です。開発への負担のみならず、お金の流れにも影響がでるのでしょうか。また機会を改めて掘り下げてみたいテーマです。