仕事でソーシャルグラフ(Social Graph)関連のリリースを担当した際に少し考えた事をまとめます。
ソーシャルグラフとは、個人的な理解ではネット上での関係性を「サイト」の壁を取り払って把握出来る為の仕組み作りをしようという活動だと認識しています。Googleも関わっているOpenSocialやDataPortability Workgroup、あるいはYahoo!も対応を決めたOpenIDの取り組みなど、サイト間の垣根を除き個人に属する情報を自由に扱えるようにしようとする動きは現在のトレンドです。
ソーシャルグラフ(あるいは類似した取り組み)による成果として、「初めて利用するサイトでも他のサイトでリンクしている友達をすぐに見つけることができ、今まで作り上げた友人関係を利用できる。」点を強調されることが多く、取り組みも「共通規格の策定」と「利用する仕組み(API)作り」に注力しています。確かに、他サイトでのリンクなどを簡単に移行できるのは便利です。しかし、それほど必要なのでしょうか?例えば、Brad Fitzpatrick氏のレポート
でも指摘されている通り、人はネット上の全ての関係性をまとめたい訳ではないです。ソーシャルグラフをはじめとした取り組みを非難しているわけではありません。素晴らしい取り組みだと思っていますが、現在、成果として語られることはいささか近視眼的だと思います。
それでは、実際にネット上に散らばっている自分の活動の結果を全て利用できるとしたら、何が出来るのでしょうか?私の答えは「自分の分身を作れる」です。
ネット上の活動結果を自由にまとめられる様になれば、最初に行うのは友人関係をリアルの世界の様にいくつかの人格(例えばプライベートと会社など)に分けて統合するでしょう。これはインターネットの特性の中で「地域や時間を越える」というWeb1.0的なメリットを享受しているに過ぎません。つまり、リアルの世界の延長です。しかし、そもそもWeb2.0と呼ばれた動きの大きな要因は、CGMつまりユーザーが発信者となる変化によるものです。「個人が発信者(メディア)となる」に「全ての行動結果(情報)がサイトを超越して個人に帰属する」が加わると、個人の発信した情報がサイトを超え関係性を持つのでは無いでしょうか?つまり、自分の人格の一部を切り出して活動(ネットワーク化)が出来るという事だと思います。あたかも、自分の分身を作ることが出来るようにです。
大航海時代には多くの人間が異国(違った習慣を持ったコミュニティ)へ行く事が日常となり、飛行機が出来て素早く移動する事が可能になりました。電話やメールで遠くの人間と連絡が取れるようになりました。やがて、宇宙船での旅行が普通となり、最終的には瞬間移動を行う手段が出来るのではないでしょうか。一方で、自分の時間を有意義に使いたいという望みは、自分の代わりに働いてくれる人間を雇ったり、さまざまな電化製品を使って作業を軽減・短縮化してきました。そして、ソーシャルグラフ(あるいはその先にあるもの)により人脈(ネットワーク)の構築においても代わりに行ってくれるものが出来るのではないでしょうか?さらに想像を膨らませれば、もしかしたら分割された人格が独自のネットワークを作り上げて発展していく事で、複数の人間の思考が合わさった人?格が出来上がり、一種のコモンセンスの固まりの様な物が出来上がるかもしれません。
ただし、現在まだ議論が詰まっていない課題が「どうやってネットワークを作り上げるのか」です。個人の活動履歴が自由に使えても、友達リストだけでは非常に単純なネットワークしか作り上げることが出来ません。しかし、ネット上の活動履歴は発信した情報(記事、画像、動画)、閲覧の履歴やコメント、トラックバックなど様々な形式をとります。これらを紐付けて関連性の高いものを自動的に抽出する仕組みも重要な技術になってくると思います。
先日発表したソリューションは、扱える情報も限られ、サイト内での相関度の計算を行う仕組みとなっていますが、既にコミュニティサイト(ミニブログ)で実装され、人以外にもFeedの相関性を求めるデモを開発するなど、将来的には上記の分野にいくのではないかと思っています。
【参考:本文で述べたリリースの関連記事】
ソーシャルグラフをサイトに導入できる「zero-Matrix」、ゼロスタートが提供 (CNET Japan)
http://japan.cnet.com/marketing/story/0,3800080523,20365678,00.htm
「友人おすすめ」機能付き 携帯専用ミニブログ「chopi」 (ITmedia)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0801/17/news008.html
【参考:Social Graphについて】
「"Thoughts on the Social Graph" Brad Fitzpatrick」
http://bradfitz.com/social-graph-problem/
上記の日本語訳
http://www.ce-lab.net/ringo/socialgraph_proposal.html
http://d.hatena.ne.jp/antipop/20070819/1187527599
【参考:ミニブログ「chopi」】
http://chopi.jp