新しい服が大好きな王様の元に、二人組の詐欺師が布織職人という触れ込みでやって来る。彼らは何と、馬鹿や自分にふさわしくない仕事をしている者には見えない不思議な布地を織る事が出来るという。王様は大喜びで注文する。仕事場に出来栄えを見に行った時、目の前にあるはずの布地が王様の目には見えない。王様はうろたえるが、家来たちの手前、本当の事は言えず、見えもしない布地を褒めるしかない。家来は家来で、自分には見えないもののそうとは言い出せず、同じように衣装を褒める。王様は見えもしない衣装を身にまといパレードに臨む。見物人も馬鹿と思われてはいけないと同じように衣装を誉めそやすが、その中の小さな子供の一人が、「王様は裸だよ!」と叫んだ。ついにみなが「王様は裸だ」と叫ぶなか王様一行はただただパレードを続けた。
なお、日本でのタイトルが「裸の王様」なので、何も身につけていない全裸だと思われている節があるが、実際のところは下着だけは身につけている。絵本版などの挿絵もそうなっている。
企業の経営者・政治家・組織のトップ・ある分野におけるカリスマ的存在が、失脚や逮捕など自分の意に反する形でその分野の表舞台から姿を消す、あるいは自身の権勢の基盤としていた企業・組織を凋落・破綻させるなど、トップ・カリスマ・権力者という社会的地位を喪失した後に、「結局は裸の王様でしかなかった」という人物評で語られる場合がある。特に、全盛期にあっては「ワンマンオーナー」「ワンマンリーダー」「○○(ジャンル)の絶対的カリスマ」「○○業界のドン」などとして知名度を持ち、全盛期には自身の組織のみならずその分野全般に対して絶大な影響力を確立し権力を振るった人物や、同様に全盛期には莫大な収入と派手な言動で知られた人物に対して使われることが多い表現の1つである。
概して、マスメディアのニュース報道・記事や読物などにおいては、一時はトップに上り詰めわが世の春を謳歌したにもかかわらず、後に失脚・破産・逮捕などにより社会的地位を失うという経緯を辿った人物を評して、「裸の王様」という言葉で総括していることがある。この場合には、その社会的成功と権勢の拡大の裏返しとして、
諫言してくれる人物を自ら煙たがり遠ざけた
その性格的な問題や成功による増長が原因となり、苦言を呈してくれる人物が周囲から去っていった
社会経験の浅い若者が時流に乗って一気に大成功したが、ブレーンとなってくれる人物が現れなかった
その権勢が絶大になっていったがゆえに忠言できる人物がいなくなり、側近にイエスマンしか残らなかった
成功と共に熱狂的な信奉者やファンがついたため、彼らの批難・攻撃・中傷を警戒して誰も諫言しなくなった
専門性が高すぎるあまり、理論的・客観的に苦言を呈することができる人物が存在しなかった
忠言や諫言をしても本人の耳には届かず、むしろそれに反発する所属企業・事務所が何かにつけて警告や告訴、脅迫をちらつかせたため、誰もが萎縮して何も言わなくなった
以上のような状況のいずれかが発生した結果、その人物の周辺には金や出世を目当てに群がる追従者だけが残り、当人は耳に快い言葉ばかり聞かされて現実を直視・把握できない状況に陥り、最後には時代の潮流から取り残されて転落し、全盛期には周囲に群がっていた人々は見捨てて全て去っていった、などという筋書きとなることが多い。