ロケ地は山がよく見えるように
山の麓の湖畔に決まった。
夕陽が映えるように、
そしてその残映が映えるように、
選ばれた場所だ。
雅紀は、
仕事の顔でファインダーを覗き込み、
夕陽が落ちるのを待つ。
陽が落ち、
茜色にあたりが染まり出すと、
連続したシャッターが
山に、
湖畔に、
空に、
色々な角度から連続して切られる。
細かに移動しながら、
その時のベストを切り取る姿は、
カメラマンとしての雅紀の優秀さがわかるだけでなく、
どこからどう見てもシャープで美しい。
靡く髪、
華奢なスタイル、
キリリと結ばれた表情。
誰が見ても、神が見ても、
雅紀の姿を手に入れたいと思うだろう。
時が経つにつれて黄昏が辺りを包む。
様々な色に変化する空や山が
全て闇に覆われて黒く染まった時、
雅紀はカメラを下の岩のところに置き、
感謝するように深くお辞儀をした。
そして、
山に向かって合掌し、
左手の薬指の指輪にキスを落としたあと、
湖に近づいて一歩湖の中に入ると、
薬指の指輪を抜き取り、
右手で大きく湖の中に投げ込もうと振りかぶった。
つづく☆