翼
それは ある日、 突然だった。「さぁ これで 好きなように 飛んでみな」神とも悪魔ともわからない それ は言った。願った訳でも 望んでいた訳でもない。でも 受け入れてしまった。そして 少しだけ その翼を 動かしてみた。何かが起きるかもそんな かすかな 期待の元に。何の確信も保証もないまま。もちろん 飛べるはずもなかった。飛び方もわからず 独りぼっちそんな私が 飛べるはずはなかった。ほんの少し 浮いただけで 大自然の驚異を 十分に味わった。「好きなように」? 「自由に」?それまでの私は そうではなかったの?いや 違う。何十年もかかって築き上げてきたものの大切さに気付かないふりをしていただけだった。それが どんなに大切なものだったのかを。どんなに 大金を積まれても 買えない かけがえのない宝物。全てを失って 途方に暮れる。這いつくばって 大空を見上げる。そこに 自由は あるのだろうか。自由って 幸せなんだろうか。答えも 励ましも 気にかけてくれる人も何もない。ただ そこには 今日も 空がある。