「———ん…」

少しぼんやりとした視界の中、
右腕がいつもの癖で温もりを求めて動く。

「…帰ってない
     のか…」

隣にいるはずの◯◯の温もりも香りもなく、冷たい彼女の枕が、一層の孤独感を際立たせる。

◯◯を求めるように、彼女の枕を手繰り寄せると、一瞬にして◯◯の香りが鼻に広がり、ざわつく心が少し穏やかになった。

昨晩は、心の痛みを一時的に忘れたくて、
クロムハーツのデキャンタに入っていたウィスキーを全て飲み尽くしたばっかりに、全身が重い。

気だるい体を布団から解放し、朝の冷たい空気を感じる。
いやでも、意識が少しずつはっきりし、夢と現実の境目が消え、
昨晩のことで頭がいっぱいになる。

たわいもない口論だった。

いつもなら、笑って済ませれたことなのに。
何気なく放った一言が、◯◯を傷つけてしまった。

どうしてあの時、部屋を出る彼女を追いかけなかったのか。

「余裕ないな…かっこわる。」

あんな顔が見たかったわけじゃない。

久しぶりの2人の時間、
話したいことがたくさんあった。
◯◯にたくさんキスして、
抱きしめたかったのに。

「今日は昼から撮影か…」

こんな時でも、当然仕事は待ってくれない。
重い足をなんとか引きずりながら
洗面所へ向かい、顔を洗おうとタオルを手にした時

玄関の方から物音がした

「っ、◯◯…」

と言いかけて口を紡ぐ。
どんな顔して彼女に会えばいいのか、
今更自分のプライドや恥ずかしさが邪魔をして、どう言葉にしたらいいかわからず
振り向くことすらできずに
その場から動けないでいると

彼女が俺を見つけて
少し空いていた洗面所の扉に手をかけた。

『……おはよう』

少し鼻声で、覇気のない◯◯の声。

鏡越しに彼女を見ると

目が赤く腫れ、俯いたままでいる。

そんな彼女をみて
さっきまでのちっぽけなプライドなんてとっくに消え去り
彼女の手を引いて
強く 抱きしめていた

いつもの彼女の温かさに、鼻がツンとする
ああ、こんなにも、
俺には◯◯が特別な存在だったんだと
改めて思う。

失いたくない。

◯◯の震える手が、俺の服をギュッと掴んだ

『たか…ごめんね…私…』

「ごめん。俺が悪かった…」

ほぼ同時に
お互いの声が重なる。

「…◯◯?
  顔が、みたい。」

俺の胸に顔を埋めたままの◯◯は、
『…ひどい顔、してるから。』
と、小さく顔を横に振る

そんな彼女の両頬に手を当て
少し強引に顔を近づけ
「どんな◯◯も、可愛い。」と
おでこ、目、鼻にキスを落とす。

『…可愛いなんて、何年も一緒にいるのに、
初めて聞いた。』
目をまんまるにして、真っ直ぐに俺を見る

「…いつも思ってる。
ごめんな。恥ずかしくて言ってやれなかった。
…もう、俺のそばからいなくならないで」

◯◯に、気持ちが伝わるように
互いを確かめ合うように
何度も何度も
唇や舌を触れ合わせる。

どれくらいの時が経ったのか。
————
足りない


もっともっとと

彼女を深く求める

◯◯が欲しい。

『っ…ふぁっ…タカっ

  んんっ…』

「おっと!

   っあぶね…」

滑り落ちそうになる◯◯を、両腕で抱えこみ
グッと強く抱きしめた

『ご、ごめん…』

そう言う
彼女の耳元で、
「くすっ。
もしかして、
キスが良すぎて
腰抜けた?」

と意地悪げに呟く

『!!!

  だ、誰のせいだと…』

真っ赤な顔して俺を見つめる彼女を
そのままひょいっと抱き抱えると、
そのまま寝室へと足を向ける

今から起こるかもしれない状況を予測したのか

『え、、た、タカ?もうマネージャーさん迎えに来るんじゃ…』

焦る彼女をよそに、
ベッドへ連れ込んだ俺は

逃げられないように
彼女に跨り

着ていたTシャツを乱暴に脱ぎ捨てる

『あっ、ま、ま、待って!タカ…』

「無理。待てない。」

俺の胸を押し出す
無力な◯◯の両手を片手で掴み、
さらに激しくキスを求めながら
彼女の服のボタンを外していく

『っんんっ…はぁっ…
タカ…あぁっ…やぁっ』

彼女の甘い声に
待ち望んだ香りと
柔らかい体に全身を支配されたいと。


彼女を求めて

まるで麻薬のように
頭がクラクラする

『もっと、
 ほらもっと、
   たくさん聞かせて…
     そのえっちな声。』

俺から一瞬でも離れらなくなるくらい
心も体もいっぱい、
一緒に気持ちよくなろう?




その後。
〇〇は遅刻しそうな俺を叱りながら、
今夜は餃子作って待ってるからねと
俺のダボダボなTシャツを着て
お見送りしてくれる〇〇を見て

もうすでに彼女を求めたくなっている
ドス黒い俺がいることを
知らない彼女は

呑気に
『行ってらっしゃい』
なんて可愛い笑顔で
俺を見送る


『…いってきまぁす。』

餃子も食べたいけど、
帰ったらすぐ。


今夜は寝かせないから、
覚悟しといてね?