ご存じ怪盗猫娘 第8話 告白 | 高須力弥のブログ「ローレンシウム荘事件」

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 停泊しているイコマイヤーに近づいて来る1人の男がいた。

「あ、あいつは神堂十蔵!間違いない!」
船内でユーゴが叫んだ。

「私は君たちのよく知っているダイモンシンジケートの頭首神堂十蔵だ!この通り武器は持っていない!大事な話がある。猫娘と直接話がしたい。中に入れてくれ!」
十蔵は船に向かって両手を上げて叫んだ。

「近くに手下の姿は見えませんがどうしますか兄さん?」
マナブがユーゴに指示を求めた。

「絶対に罠だ!あいつを船に入れるんじゃない!」
ユーゴが叫んだ。

「いいえ。例え罠だったとしても彼と直接話が出来るまたとないチャンスです。船に入れましょう。」
猫娘は決断した。


十蔵は船内で猫娘たちと対面した。

「頼む!猫娘!私の息子ルシファーを止めてくれ!ルシファーは世界を破滅へと導こうとしている……!」
十蔵は床に顔を着けて猫娘に懇願した。

「俺たちのおやじとお袋を殺しておいてどの面下げてぬかしやがる!」
ユーゴが叫んだ。

「君たちのご両親たちを殺したのは私ではない。かつての私の息子ルートヴィヒだ。」
十蔵が打ち明けた。

「けっ!そんな事誰が信用するもんか!」
ユーゴが言った。

「本当だ……。結論を出すのは私の話を聞いてからにしてくれ……。」
十蔵が話し始めた。




 11年前、トウマたち「ブラックジャック」が神堂邸に忍びこみ、ルートヴィヒの研究室から完成したばかりのアンドロイドとサポートロボットの2体を盗み出し、某所に隠していた。

その事に怒ったルートヴィヒは「ブラックジャック」全員が留守中に手下にアジトに侵入して4人の子供を誘拐し、自分の所有するビルに監禁させた。

ルートヴィヒは「ブラックジャック」をビルに呼び出し、ロボットの隠し場所を聞き出して、その後仕掛けてあった爆弾で殺害したのだった。

ルートヴィヒは自分に似せて造ったアンドロイド「ルシファー」に自分の全記憶を移植した後、自ら命を経った。

一人息子を失って悲しみにくれていた十蔵は目覚めたルシファーをルートヴィヒの生まれ変わりと思って可愛がっていた。

しかしルシファーの怪しい行動に気づいた十蔵は、腹心の部下であるグレイをお目付け役としてルシファーの元に送り込んだのだった。

そして最近、十蔵はルシファーが全人類を死滅させる計画を実行しようとしている事をグレイから聞いたのだった。






「すべて私の責任だ……。許してくれとは言わないが君たちにはどんな償いでもするつもりだ。だから私のただ1つの願いを聞いてくれ!」
十蔵は再び床に顔を着けてクロネコブラザーズに懇願した。

猫娘は十蔵の目を見た。
その目には偽りは感じられなかった。

「わかりました十蔵さん。ルシファーの野望は私たちが必ず止めて見せます!」
猫娘が十蔵に言った。

「あんたの事はまだ信用しちゃいないが、世界の滅亡を防ぐためなら俺たちも一肌脱いでやるぜ!」
ユーゴが十蔵に言った。

「すまない猫娘!君たち!ルシファーを……頼む!」
十蔵は涙を流した。



「大事なお話の途中申し訳ございませんが、失礼いたします。」
突然グレイが部屋に入って来た。
その手には拳銃が握られていた。

「グレイ!なぜここに来た!」
十蔵が叫んだ。

「ルシファー様からのご命令を執行しにまいりました。」
グレイは十蔵の胸に向けて拳銃を発射した。

「グ……グレイ……き……貴様………。」
十蔵は胸を押さえて床に倒れ、そのまま動かなくなった。

「私はルシファー様の忠実な下僕でございます。」
グレイは平然と言った。

「貴様!ここから逃げられると思ってるのか!」
ユーゴがグレイに叫んだ。

「私が何の策も講じず敵地に乗り込んで来たとお思いですか?」
グレイは不敵に笑った。

グレイはスーツを脱いだ。その体には大量の爆薬が巻き付けられていた。
「私の手の中にあるこの起爆スイッチを押せば、この船は跡形も無くなるでしょうね……。」

「どうせハッタリだ!奴を取り押さえましょう!」
ユーゴは猫娘に叫んだ。

「いいえ!みんなを危険にさらすわけにはいかないわ。ここはあいつの言う通りにしなさい!」
猫娘は強い声でユーゴを制した。

「くそっ!」
ユーゴは悔しそうに呟いた。

「それでは皆様。またお会いできるのを楽しみにしております。」
グレイは一礼して、十蔵の体を背負い悠々と部屋から出て行った。



 学校から帰って来たマオは自室に入った。

「ただいまー。ピコ?」
部屋の中にピコの姿は無く、見知らぬ封筒が残されていた。

マオは封筒を開けて中身を読んだ。
「野々原マオ様。今夜8時あなたを晩餐にご招待します。神堂邸にお越しください。 神堂ルシファー」



次回より最終章開幕