ご存じ怪盗猫娘 第4話 夏の夜の猫 | 高須力弥のブログ「ローレンシウム荘事件」

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少年は美しい物が好きだった

木や草や石

山や川、海などの自然を愛していた

少年はこの地球のすべての美しい物を永遠に守りたいと思っていた

少年の名は神堂ルートヴィヒと言った



幼い頃に母親を亡くした少年は生まれつき天才的な頭脳を持っていた

少年は自分の夢を実現すべく遠大な計画を立てた

父親の財力を使って入念に準備した計画の第1歩を踏み出した矢先、少年を突然の病が襲った

自分の命が残りわずかだと知った少年は、自分の夢を自分に似せて造ったアンドロイドに託した

少年はそのアンドロイドを、光をもたらす者…ルシファーと名付けた。




 ある夏の日
マオとピコと想一と未央奈を乗せた乗用車が海水浴場に向かって走っていた。


「マオちゃん。おれの車の乗り心地はどうだい?」
運転席の男が助手席のマオに話しかけた。

彼の名は影森一雄。
野々原家の隣家にひとりで住んでいる大学生であった。
「せっかくのお休みを影森さんに運転してもらってすみません。」
「なーに、どうせ暇だったしマオちゃんのお母さんから宿泊費も出してもらってこっちがお礼を言いたいぐらいだよ。」

宿に到着した4人は部屋に荷物を下ろし、水着に着替えて浜辺に出てきた。

偶然、マオが松池を見つけた。


「あっ!松池さんこんな所で何してるんですか?」
「やあ、野々原さんか。偶然ですね。今日は仕事でこの辺りに潜伏しているという詐欺集団の隠れ家を探しているんです。君たちも怪しい人を見かけたら僕たちに知らせてください。」

「おい松池!何か進展があったのか?」
向こうから八木沢がやって来た。

「八木沢さんお久しぶりです!」
マオが八木沢に挨拶した。
「げっ!いつぞやの女子高生じゃねえか!こんな所で出会うなんてなんだかいやな予感がするな……。」

「マオちゃん刑事と知り合いなの?」
影森がマオに尋ねた。
「八木沢さんと松池さんとは最近街で出会って知り合いになったんです。」
「へえー。そんな事があったのかい。」

4人はひとしきり海水浴を楽しんだ後、宿に戻って行った。




 その夜、マオとピコは皆が眠った頃にひそかに宿を抜け出し、詐欺集団のアジトを探しに出かけて行った。
周りに人気の無いのを確認してマオは猫娘に変身した。

 

 

ピコが宿から離れた場所に廃屋を発見した。

猫娘は廃屋の壁に耳を押し当て、聴覚をアップさせて耳を澄ませて聴いた。
すると複数の男たちの話し声が聞こえてきた。
「警察がこの近くを嗅ぎまわっているらしい。」
「ここが見つかるのも時間の問題だ。」
「早いとこ金を持ってずらかろうぜ。」

猫娘は部屋の扉を勢いよく蹴り開けた。
部屋の中には3人の男たちがいた。

「お前たちの悪行もそこまでだ‼」

「誰だお前は‼」
男たちが叫んだ。

「夜の世界をひた走り 悪を見据える二つの目 その名も怪盗猫娘 悪党どもを退治いたします!」
猫娘はスタンロッドを構えて名乗りをあげた。

「やっちまえ!」
男たちは武器を持って猫娘に襲い掛かった。

猫娘は男たちを次々とスタンロッドで倒していった。
そして意識を失った3人をロープで縛りあげ、天井から吊り下げた。





 数時間後、八木沢と松池が廃屋に乗り込んだ。

「警察だ!そこを動くな!」
八木沢と松池が部屋の扉を蹴り開け、銃を構えて叫んだ。

しかし部屋には縛られている詐欺集団が天井から吊り下げられていた。
「この者達極悪詐欺集団」と書かれた猫娘のカードが額に貼られていた。

「くそっ!また猫娘に先を越されたか!」
八木沢が悔しげに呟いた。





 翌朝、マオは目を覚ました3人と宿の広間で朝食を取っていた。

「きのうは楽しかったわね。今日も帰る前またひと泳ぎしましょ。」
未央奈が言った。
「さっき聞いた話だと、ゆうべ松池さんたちが詐欺集団を逮捕したみたいだぜ。」
想一が言った。
「へえー。あの刑事たち見かけによらず優秀なんだねえ。」
影森が言った。
「影森さん、そんな言い方松池さんたちに失礼ですよ。あはは……。」
マオが弱々しく言った。



 同じ頃、イコマイヤーの中でマナブがカケルたちの調査の結果をユーゴに報告していた。

「カケルたちの調査のおかげで重大な情報が得られました!」

パソコンの画面上に一人の男の姿が映し出された。

 

 



「この男が神堂十蔵。ダイモンシンジケートの首領であり、10年前の事件の首謀者です!」