雨風吹きすさぶ台風の中、投票帰りに買ってきました(´・ω・`)

 

 

いつも以上に時事ネタっちゅーか、あるあるネタが分かりやすく盛り込まれてたような…。

もしや秋のリメイクでティーンが初めて手に取るのを想定して、より噛み砕きやすそうなネタを選んだ的な…(^_^;)   いやいや。でも買って良かったです。

信頼と安心の… というか、

変わらぬクオリティを維持し続ける努力みたいなのを感じる作家さんだなぁ、と。

 

『キノの旅』に関しては「真新しさ」とかより、「いつも通りのキノっぽい話」を重視してる自分なので、連載初期の頃の雰囲気が戻ってきて、嬉しいな、と。

あと やっぱりショートショートは感想が書きやすくて、そこもキノが好きな理由のひとつなので、

どうかこの方向性のまま行って欲しいなぁ…と(´∀`)

 

 

以下、ネタバレ全開の簡単感想

 

「見える真実・b」 最後のaの方にまとめて書いてます。

 

「巨人の国」

宗教令により、神様の像より高い建造物を立てられない国。それを、神様の像そのものをビルや家にしてまえ、という粋な発想で乗り切ったお話。合理的でいいと思います(神様的にそれはオッケーなんかいという…(゚∀゚ )

 

「有名になれる国」

いわゆる実況配信者がネタになってる国。

ラストの炎上騒動はあきらかにYoutuber、どこでも配信可能な携帯ラジオっていうとツイキャスっぽいし、「プロ歌手デビューへの足がけ」のくだりはまさにニコ動

1に知名度、2に再生数… 有名になるためなら、他人の事情や自分の命すら軽んじる姿は、異国の異文化 …とか笑い飛ばせない、完全に「あー…、この人たち見たことあるぞ…」ワールドに仕上がってます(いつものこと

 

「美男美女の国」

美的感覚が真逆の国同士で、移民しあった結果のお話。

バランスよく整ってるけど、個性が均された似たような顔立ち」評に、なんとなく某整形大国への皮肉を感j…ゴホゴホ

この国では美形と美人のDNAを掛け合わせると、どんどん無個性な顔になっていく…という設定だけど、

実際、美男と美女が結婚して生まれた子供なのに成長してもかわいくない、つまりどっちかが整形してるんじゃ… みたいなネタはちらほらありますよね。

犬目線で見てもシズ様の容貌は「ハンサム」らしいです。

 

 

「Nの国」

従来の学校制度の「いじめ」「思春期への悪影響」が懸念されたことにより、パソコンによる通信教育が義務付けられている国。

さらーっと描かれてましたが、キノが普通にPC使えてることに結構衝撃。エルメェスに教えてもらったんか(;・∀・)

 元ネタが、ちょっと前話題になった「N高校」なのは明らかで、時雨沢さんにしては、ド直球なタイトル。

 思春期の義務教育はともかく、自発的にやる資格の勉強ともなると、通信制はサボりがちになってしまった自分の黒歴史を振り返ってしまって…←  やはり周りで同じように勉強してる人が見える方が、身にはなるかなー…という気がしなくもないです。

>意志薄弱

 

ただ、これも従来の学校制を知りつつ、通信制をやった人間の感想なんで、生まれた時からこのシステムに慣らされているこの国の子供にとっては、ムダがなくて効率的なのかも。

 

 

「読書が許されない国」

どこに行っても国民全員が読書をしてるのに、なぜか「読書をしてはいけない」法律がしかれている国の話。わずか5ページの超短編です。

 

「読書嫌いな人が多かった」過去のこの国って、要するに 「強制されないと本を読まない」「紙の本離れをしつつある、今の日本」に近い感じなのかな。

 「禁止されるほどに、その行為をやりたくなる」を逆手に取った現国王の作戦は、極端だけどお見事。

そして、以前の世界ならおそらく罰則も同様の扱いだった「読書感想文」が、罰則の名目はそのままに、国民の憧れる目標 みたいになってるオチも中々ナイスでした。

 

 

「満員電車の走ってる国」

前のお話と同じく、5ページ半ばの超短編。今作で一番おもしろかったです(笑)

通勤手段ではなく、ガチガチのスーツを着させられ、ぎゅうぎゅうの満員電車に乗せられ、意味もなく延々往復させられることが「犯罪者の罰則」という、なんかめっちゃギリギリな話。

 

よく地獄に落ちると、賽の河原で小石を積み上げる作業をさせられ、完成間近になるとそれを破壊されて、延々と同じことをやらせる…みたいな罰がありますが、こちらは「生産性すらない」ことに加え「密閉された空間で」「見知らぬ他人と」「ただ延々と耐え続けなければいけない」ストレスが凄そうです。

 というか、こんな罰に近いことをほぼ毎日やってる日本人の勤務体系を皮肉ってるとしか思えないという(^_^;)  その内「ブラックな国」「幸せに働ける国」とかでてきそうな勢い。

 

 一つ前の読書の話では、罰則が罰則扱いになってなかったのと逆に、こちらは罰則じゃなかったことが、あまりのつらさから、罰則扱いになってる と対の話の様になってるのがナイス。

 

「消えた国」

ほんとうにヤバいこと=、非常識な先導者に耳を疑うような法律、というヤバい環境にいる中、そのヤバさに気付けないくらい毒されてしまってること、みたいな話。

元ネタは、やっぱり北のあの国…?

めちゃめちゃホラーな展開で見せてて、ホラーオチじゃないんだろうな、とは思ってたので、そこは安心でした。

 

「完璧な国」

教育者自体が人間である以上、教えられた子供にも「間違い」が発生する… ってことで、生まれてから15歳になるまでの教育を、すべてAIに任されて育った子供たちの話。

 

 具体的に大人が要求した、「間違いのない完璧な人間」の条件↓↓とは… 

「人に優しく」「差別せず」「心身ともに健康で」「常に冷静で」「慎重さを忘れず」「情に流されず」「どんなことにも熱意を持って」「勇気があって」…と、明らかに両立不可なことばかり。

そんなすべての要求を可能にした恐るべき種明かしは… という、かなり後味の悪い話です。

 

 子供への教育理念、って意味では「Nの国」と同じ。だけど、前者が「子供のため」にあのシステムを作ったのとは逆に、これは大人にとって都合の良い行動を取る子供を作るためのシステム、ってことですよね…。そのリンクというか、違いがおもしろいです。

 

「鍵の国」 

国民全員が首から鍵をぶら下げ、一日一回国の中心にある石碑にそれを差し込み、ひねる。

誰もその意味がわからないまま、それでも長年の「しきたり」としてずっと守られてきた行為が、ついに破られ… というお話。

大昔から続きすぎて、何のためにやってるのか、やってる本人たちもよくわかってない迷信や伝統、こういうの昔は多かったんだろうなと思います。

 

それこそ、親世代やその親の世代から、続けなければ神罰がくだる的なことを言われてやってきたものの、一人がサボり二人がサボり、「え、何も起こらねーじゃん」「うし、やめるか…」の流れで、伝統が崩れ、廃止になる…のも、正にあるある。

 

で、この「鍵を回すこと」 ほんとうに意味のない行為だったのかと思わせきや、石版裏に書かれていた、誰にも解読できない碑文を、唯一読むことができたエルメェスに、国外に出てから明かされる真実。

それは「鍵を回す者がひとりもいなくなった時に、地下に埋められた大陸間弾道弾が世界中に向けて発射される」というどエライはた迷惑なもの。

 

要するに、本来は国中の人間が滅ぼされた時の反撃手段として作られたシステムなんだけど、実際は平和な期間があまりに長く続いて、その意味自体を忘れられたせいで、国民のほとんどがそのしきたりをやめちゃって、知らぬ間に滅びの危機に瀕しているという皮肉。

 むしろ「国が果たすべき、本来の役目」を全国民が忘れてるってこと自体、ある意味「国として死んでる」のを意味してるお話なのか。

 

関係ないけど、キノの「石版の碑文を、読んで解読して欲しい」を→「頭痛が痛い」的に突っ込んだエルメェスのセリフ、時雨沢さんが普段から思ってることなら、物書きっぽくていいなぁと思いました(何

 

「女の国」

ここでまさかの師匠過去エピ。まさかというか、事前情報(ネタバレ)でそういう話があるのは聞いていたので、多分これだろうな、と…。

 

師匠の過去の名前はレジー。明るく前向きで溌剌と笑うけど、少しドジ…と、まるで朝ドラヒロインのよう(爆)。クールで現実的で、淡々とした今の師匠像からはかなりかけ離れています。

 

レジーの育った国は、平たく言えば女尊男卑のルールが敷かれる世界。腕力で劣る格差をなくすため、男性の武器の所持、その他諸々の権利を制限して秩序を保っている という国。

 女性であり、本来それを喜ぶべき立場のレジーはその社会に「不平等だ」と異を唱える一方で、恋人のアルト君は男性であり不遇な扱いを受けながらも「差別ではなく、区別だ」と、受け入れているというスタンス。

 

 購入前、半端にネタバレ情報を聞いてたぼんくらレラージュなので。

過去のレジーが、今の師匠とかなり性格にギャップがあるように、この一緒に出てるアルトも紆余曲折あって、「あの豪胆な性格の相棒になるのかー…」ぐらいに思ってたんですが。

話が進むにつれ「あ…違う。これ彼だけ死ぬやつや」って気付いて「やっぱ商人とのバトルでレジーを庇って犠牲になるとか、そういう感じ?」…ぐらいに思ってたんですが。

 

甘かったですよね。あの師匠があの師匠になるまでの話だけあって、相当にシビアでした。

 

車で国外に出た後、テンションの上がったレジーが「このまま戻らないで旅に出ちゃおうよ」と言った時、アルトはいかにその国が男に対して理不尽を強いる国であると分かっても、あわてて「それはダメだ」と断るんです。

だけど、国外の商人から「この世界の男女の常識」が信じていたものと逆だったことを聞いた後は、彼の価値観が一気に崩れ、行動もまた一変してしまう。

これって自分が常識(多数派のルール)を守っていると信じていたからこそ、「差別ではなく、区別である」と受け入れられていたんだろうな、と思います。

だからこの後のアルトの行動は、なんか責められない。

自分の意思っていうよりも、ちょっと言い含められた感じだったしね。

この信じていた環境へのカルチャーショックみたいな描写は、少し前にあった「消えた国」のテーマとリンクしていて、相変わらず読ませ方が巧みだなぁと感じます。

 

無論、作中最強の人間に育てられた作中ナンバー2のレジーがそう簡単にやられたりはせず;;  最期に「ずっとタメ語だったレジーがアルトに敬語になったことに、どういう意味があったんだろう」ってのがわからなかったんだけど…

「『男が女に敬語を使わないといけない国』から出て、『女から男に敬語を使った』ことで、『もう2度と国には戻らないという決意』」的な考察を見て、「おぉう…なるほど;;」と。

 

これはね、もう絶対、相棒の過去話も来るものと疑っていない自分がいますです(´∀`)← 

とても楽しみ

 

「毎日死ぬ国」

前の晩に自撮りした自分の写真を額縁に入れ遺影として飾り、毎朝自分の「プチ葬式」を執り行う不思議な国。実況配信の話が来たので、てっきりインスタの国、とかSnowの国 的ノリの話かと思いきや、全然関係ありませんでした(爆)

 

「眠った後、魂はその体を離れ、次の朝目覚めた時体に宿る魂=昨日とは別の人間のもの」説、自分も昔どっかで聞いたような気がします。

賛否ありそうな考えですが、確かに「一日一日を、精一杯生きるべし」とかボヤッと言われるより、「あなたの魂が生きるのは、今日という一日だけなのだから」とそれらしい理由がついた方が、納得しやすいような気もします。

 

「鍵の国」のように、続けてる伝統の意味がわからないままだと、いつかやめてしまう人も絶対出てくる一方で、こういう一風変わったしきたりの中にも、それなりに筋の通った理屈が添えられていれば、続くものなんだろうなぁ…とかちょっと思いました。

 

ちなみに、そのしきたりをなんとか曲げないように現実の生活と上手く融合させた国が「巨人の国」、とも言えるので、まさに三者三様(´∀`)

 

「見える真実・a」  

巻頭にあった「見える真実・b」の前半部分の話。

「心霊写真を題材に、感動話に仕立てる」って、それ何て世にも奇妙な物語(笑)  

それはともかく、家族から事情を聴いて、超スピードで真実にたどり着くフォトの察しの良さに、「えっ…そんな子だったか」と、そっちにびっくりポンなお話でした。

 

個人的にこの二人(フォト・ソウ)の長編話だけ、キノ世界から浮いてる感じがして、実はあまり好きにはなれないので…(すみません)   いつも、これくらい短ければなぁ…(すみません)

 

多分、キノや師匠の話って常に神視点というかナレ視点で、それがキノ世界のお話って認識が強くて。だから、人物のモノローグや本音が入って進む彼らの話が苦手なのかもです(それ言っちゃ陸・シズもそうだが)。

 

 

総評 ✩✩✩✩(4)

冒頭にも書いたけど、アニメから入ってキノをはじめて見る人にも読みやすいネタや文体を心がけてるのかも…?と思いました。けど、それが面白くないとかそんなことは決してなくて。

 

 いつも思ってるし(むしろ)言ってるような気もしますが、この方長編よりもやっぱりショートショートな話の中で綺麗にオチをつけるのが一級に上手いなぁ、と再確認できました(満員電車、読書の国あたり)。

 特に近年でる新刊は、初期の一番好きだった頃の空気感がまた戻ってきてる感じがして、次の巻も楽しみに待てるなぁ、と素直に胸をふくらませた一冊なのでした(´∀`)

 

ではでは。