前の記事の通り散々なスタートだったNY生活の初日。
初日の事件はあれだけじゃなかった。
あの後、結局乗ってた電車は止まってしまい、途中から普通のタクシーに乗って家に向かったんですが、その道中、僕は大切な宝物を1つ無くしました。

ディオールオムのレザージャケット(50万円)


をタクシーに忘れて…
レシートも貰わず下車して、英語も喋れないからもうお手上げだった…できる範囲で手は尽くしたけどやはり見つかる事は無く…

日本からスーツケース1つで引っ越して来た僕の荷物の中では一番高価な物だったんだけど。

それが大切だった理由は『高いから』ではなかったんだよね。


僕が専門学校に通ってる頃。Hedi Slimaneがクリエィティブディレクターを務めるDior Hommeが一世風靡してた時代。とにかく本当にカッコよくて。中でもレザージャケット。もう最強アイテムだったわけです。

でも学生の僕には手が出ない金額だった…だから、いつかこの店に戻ってきてパッと試着してサイズだけ確かめて「これください」って言えるように頑張ろ。

って、19歳の僕は思ったんです。

それからしばらく経って23歳の時。スタイリストデビューして初めての雑誌の撮影。

「全国誌でスタイルを載せたい」って田舎にいた頃の夢が叶った僕は、自分へのご褒美に『Dior Hommeのレザージャケットを、サイズだけ確かめてポンっと買う』っていう、昔は出来なかった"体験"を自分にプレゼントする事にしました。

内心ドキドキしながら試着して…

「じゃ、これください」

って。分割払いだったけどw

もうね、この頃にはデザイナーが変わっちゃってて"憧れの"レザージャケットとはちょっと違ったけど。

とりあえず、ここまで来たぞ


っていう。目印みたいなもんで。袖を通した時の高級感がたまなくて。まさしく宝物だったわけです。

それを"NYに来た日"に無くしちゃって…

めちゃくちゃショックなはずなのに

何故か、全く悲しくなかった。


日本で積み上げたモン全部一回捨てて、ゼロからやり直せ

って意味なのかな。とか思って。
(そりゃあ返してくれるんなら返して欲しいけどw)

だから、またゼロから積み上げて、ちょっと余裕が出来たらその時欲しい物買おう!って思ったわけです。

この記事でも触れたけど↓


激動の一年の後にちょっとだけ余裕ができて、まずは第一目標だった"NYでの安定した生活"を手に入れて、なんとなく未来が見えてきた。だからそろそろ"目印"でも打とうかなって思ったんだよね。そんな時にある出来事を思い出した。

極貧時代に出張カットをしてた時のお客さん。彼女は高級時計ブランド、PANERAIに勤めてる方でした。

NYに来たばかりの僕をとても応援してくれて「いつか成功したらウチのお店に時計買いに来てね」って言ってくれて。非売品のキーホルダーももらっちゃったりして。

もともと好きなブランドだったし、男たるもの時計に対するロマンみたいなのってあるしさ、

これだな


って思ったわけです。

一番カッコいいヤツ買おう!って思ってお店に行って、

なんとなく、パネライの相場は50〜60万くらいかな〜。TAX入れても70万くらいあれば足りるかなぁ〜とか思って、出陣!

Madison Aveにある路面店でお客様に会って

「本当に、しかもこんなに早く買いに来ると思わなかった!」


って言われて。へへへって思いながら店内にある全種類のラインナップを見て回る僕。

そしたら1つだけ。ピンと来たヤツがいたんです。どれも似てるし、本当些細な違いなんだけど、俺にはダントツカッコ良く見えたヤツが。

でも、聞いたら想定してた予算の3倍だったw


さすがに即決できなくて、周りの人に相談しまくったよね。買うべきかなぁ?って。

本当に驚くほど、全員に

いや、無いだろ。


って全否定されましたよ。w
だったらいい時計3つ買えるだの、他の物も買えるだの、むしろ車買えるとか。とりあえずバカだろってw  

本当にみんなに否定されたから

買った方が面白いな


って思った。しかも、やっぱコレがいい!って思ったやつ買わないと妥協したみたいで

まずはここまで来たぞ!


って思えない気がして。

お金なんてまたすぐ取り戻せるしね。当時は独身だったし。

こっちでのcredit history(信用)もまだビルドアップする途中だったから当時のクレジットカードの限度額はたったの$4500。

だから現金下ろしてドキドキしながら店に向かって、一括キャッシュで買いました。こんなにキャッシュ持ち歩くのは怖いから先輩についてきてもらってw
こいつ。だいぶ年季入ってきたなぁ。

これもまた宝物なんだけど

やっぱさ、ただ時計買うのとはちょっと違って

いつ

何を

どんな時に

どんな想いで

誰から買うか


っていう、そのストーリーの方が価値があると思うんだよね。

これは売るときでも一緒だと思うんだ。

"誰"が、どんな"想い"を込めて創ったモノなのか


なぜ"あなた"に届けたいのか


そんなストーリーが伝わると俺は買いたくなっちゃうなぁ。


via TOMOHIRO ARAKAWA
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