考えれば考えるほど、死は遠い存在となる。死への意識は、私を死から遠ざけた。

ただ、死は突然現れる。将来有望な友人Fは突如としてこの世を去った。いや、生命を突然奪われてしまった。明日を生きるために街に出た彼を、死神は見逃さなかった。わずか26年の生命しか、神は彼に与えなかった。

彼の死を考えれば考えるほど、私の死は遠い存在になっていった。

彼の死が遠い存在となるまでに20年以上の月日がかかった。突如として私の死が私の近くに忍び寄った。私は死を感じることはできなかったが、私の隣に死は確実に訪れていた。

私を死から救ったのは、血であった。だれの血かは分からない。私自身の血は私を救うことができなかったが、他人によって生命を託された大量の血が死神を遠くへと追いやった。

私の血が新しい血と入れ替わり、あらためて友人Fの死を考えた。やはりそれを考えれば考えるほど、私の死はまた遠い存在となるだろう。だが考えることをやめた時、私の死は突然現れるに違いない。それを受け入れる覚悟は、今はできている。