司法試験・予備試験過去問

司法試験・予備試験過去問

ブログの説明を入力します。

Amebaでブログを始めよう!

最初はどう書いたらいいのかわからない刑事実務基礎。平成23年の問題をやってみました。

 

手元にあった物が、急になくなった直後にすぐそばで別の人がもっていたら、その人が持ち去ったのではないかと疑いますよね。

短時間で他の人から受け取ったとかでなければ、その人が持ち去ったとみるのが合理的です。

本人がいくら否定しても、どうやって入手したか説明できなければ、その人が持ち去ったと疑われても当然です。

それを近接所持の法理といいます。

先に、時間的場所的近接性を認定しなければなりません。

 

第1 小問1

1 甲はキャリーバッグをベンチから持ち去った人物であるか。そうであれば、キャリーバッグを持ち去る行為は、窃盗罪(刑法(以下略。)235条)の「窃取」、または占有離脱物横領罪(254条)の「横領」として実行行為に該当する行為である。甲の犯人性の認定のために、特定が必要となる。

 そして、盗品を持ち去られた直後に近接した場所で所持していた者については、その入手方法を合理的に説明できない限り、持ち去った人物と推認できる(近接所持の法理)

 キャリーバッグは、午後2時25分頃にはホームのベンチにあったところ、甲は、午後2時30分過ぎに改札の手前でキャリーバッグを所持していた。その間わずか5分強であり、ホームと改札前の違いはあるが、同じ駅構内である。したがって、甲はキャリーバッグが持ちされた直後に近接している場所で所持していたといえる。したがって、甲は別の人物が持ち去ったキャリーバッグを受け取ったなどの特段の事情がない限り、キャリーバッグを持ち去った人物と推認できる。

2 甲は、窃盗罪を疑われているにもかかわらず、別の人物から受け取ったことを主張せず、自らも「忘れ物に違いないと思って、親切心から駅の事務所に持って行こうとした」と認めているのであるから、甲はキャリーバッグを持ち去ったのではないと認める特段の事情がない。

3 よって、甲がキャリーバッグを持ち去った人物と推認できる。

第2 小問2

1 乙の占有の有無 

⑴ 窃盗罪における占有の有無は、支配の事実と支配の意思から総合的に判断する支配の事実は、所有者と物との場所的時間的近接性から判断する。

⑵ 本件では、乙はキャリーバッグから15メートル離れた売店に新聞等を買いに行ったのであるから、距離がわずか15メートルであり、販売店の販売口まで間を遮るものがなく常に振り向けば確認できる状況にあったのであるから場所的近接性が認められる

 時間もわずか5分強であるから時間的近接性も認められる。

 甲は、偶然あった友人との話に夢中になり、忘れかけ逆方向に5メートル歩いた事情はあるが、すぐに気づいて振り向き、キャリーバッグがあるかを確認したことから、占有の意思は継続している。

⑶よって、甲は、キャリーバッグに対する支配を失わっておらず占有は継続している。

2 甲の窃盗の故意

1⑴ 甲は窃盗の故意を否定しているところ、客観的事情から間接事実として窃盗の故意を推認することはできないか。

⑵ア 甲は、B駅からA駅までの切符で午後1時5分以降にA駅のホームにいた。このことは、B駅での切符の購入時刻が午後0時55分であること、その直後である1時5分以降の防犯カメラの映像に紺色の白髪で手荷物を持っていない男性という乙の特徴と共通する人物が降りて、降りた客の中で唯一ホームに残ったこと、午後2時10分以降、乙が紺色のスーツで白髪、身長180センチメートルの男性をホームで目撃したことから明らかである。乙の紺色のスーツに柄が入っていることは、防犯カメラの性能、乙が3メートル離れた距離から見たにすぎないことを考慮すれば、柄までわからないことはあり得ることであり、この男性が甲であることを否定することにはならない。

 甲は、キャリーバッグを手にするまで1時間を超える時間ホームに滞在していたこと、キャリーバッグを手にしてから直ちにホームから立ち去ったことから、甲には窃盗目的でホームに滞在していたことが推認される。

イ もっとも、甲は、窃盗の故意はなく、キャリーバッグを忘れ物だと思い、駅の事務室に届けようとしていたと主張している。

 たしかに甲は階段を降りてから正面の改札まで最短ルートを通っておらず、駅の事務所の方に寄っていた。

 しかし、駅の事務室の近くにも改札はあり、必ずしも駅の事務室に向かっていたという認定はできない。改札に向かっていることをもって、窃盗の故意を否定する事情とまではいえない。

ウ また、甲はキャリーバッグを持ち去る際にコートは置いてきていることから、忘れ物を届ける意図であればコートも届けようとするのが合理的な行動である。コートをそのままにしてキャリーバッグだけを持ち去る行為は、窃盗の故意があると推認できる。

3 よって、甲に窃盗の故意は認められる。

以上