■災厄の町
■作:エラリイ・クイーン 訳:越前敏弥
エラリィが降り立ったのは、ライツヴィルという名の美しい田舎町だった。
執筆のネタを探す彼はそこで、町の名士であるライト家の秘密、そして奇妙な毒殺事件に巻き込まれることとなる。
本格ミステリの中でもロジックとパズルの巧妙さで魅せるエラリィ・クイーンが贈る「人間」を描いたある旧家の物語。
ケレン味あふれる事件の代わりに、起こるのは毒殺。
そして綴られるのは、丁寧に織り上げられていく人間模様という不可思議さです。
エラリィ・クイーンシリーズとして知っていたこれまでの作品たちとは違う手触り、そして読後感でした。
余所者たるエラリィとともに、読者はこのライツヴィルという町を知っていかねばならないわけです。
ライト家の3人姉妹を中心に、恋や愛や嫉妬、閉鎖的な田舎町ならではの視線と噂話に巻き込まれていく。
『本当は何が起きているのか』を探るにしても、『災厄の家』にまつわる出来事を追いかけるにしても、どこまでも『余所者』の感覚がついてまわるわけです。
誰も彼もが秘密を抱え、時に嘘をつき、時に沈黙し、時に手のひらを返してあることないこと喋り続けるような、そんなもどかしさが付きまとう。
身動きが取れないわけではないけれど、沼地で足を取られながら進むかのような感覚で、エラリィが解き明かさんとする『毒殺事件』の物語を追っていた気がします。
丁寧に丁寧に人の心の奥底に触れていくような、そんな時間を過ごせました。
