「何でもかんでもさ、様式美で済ませるの、ほんと良くないよ」


僕がもう何度目かもわからない苦言をため息と一緒に差し出せば、探偵はへにゃりと気の抜けた顔で笑う。


「いやぁ、でもほら、なぁ?」

「『なぁ?』じゃないよ、ほんと良くない、良くない!」


全身傷だらけだ、消毒薬もガーゼも軟膏も包帯も無限に消費されていくような錯覚さえする。

最悪だ、いつものことだけど、本当に毎回最悪が更新されてる。


「だいたい、様式美ってだけで、なんで館が燃えるのを容認できるんだよ、なんで積極的に罠にかかりにいくんだよ、なんで通信手段をたたれて閉じ込められることになんの抵抗もしないんだよ、ほんとなんでだよ」


なにより、そうだなにより、だ。


「なんで犯人にわざわざ直接推理聞かせてんだよ、なんでノコノコやってくるんだよ、そもそも僕を守るな、僕の盾になろうとするな!」

「いやあ、探偵はともかく、助手が危機に陥るのはなぁ、体を張って阻止するか助け出すのが様式美だからなぁ」

「だから! その様式美をやめろって言ってんだよ! あんたは唯一無二の名探偵で! 僕はかえのきく助手なんだよ、分かれよ、理解してくれよ!」


ありったけの想いに道理と常識をまぜて懇願する僕に、手当を受ける探偵はまだヘニャヘニャと笑ってみせる。

犯人から僕を庇った傷だらけの体で、血の拭いきれない顔で、笑い続ける。


「いやだな、助手の替えが効くだなんで、そんな思想は美しくないよ」


ただその台詞だけがポツンと宙に浮かんでいた。


to be……?


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