■キネマ探偵カレイドミステリー
■作:斜線堂有紀
留年の危機にあった奈緒崎は、ドイツ文学の教授からひとつの救済案を提示される。
かくして、自宅に引きこもった休学中の秀才を学校へ連れ戻すべく、彼のもとを訪れた奈緒崎だが、その先で待ち受けていたのはーー
映画を愛する作者による、映画へ限りない愛を注ぐ探偵とその助手が出会う、映画にまつわるミステリーたち。
諸事情により(好きなキャラの真相を知るべく)シリーズ完結から遡って読み進めてきたキネマ探偵シリーズ。
その一作目にして作者のデビュー作に辿り着きました。
冒頭の出会いからラストに至るまでに、少しずつ、でも確実に距離感が変わっていく過程を見ることができる今作。
映画といえばドラえもんの朧気な記憶という奈緒崎が嗄井戸と出会い、映画のうんちくを浴び、映画の背景を語られる、映画そのものに触れる。
そして映画にまつわる知識が増える頃には、持ち込まれた奇妙な謎までも家で映画を見ている探偵に解き明かされている、この構図が気持ちいい!
安楽椅子探偵が映画の城から一歩も動かない代わりに、奈緒崎が現場を引き受ける形となるのも面白いです。
大学の留年への特例処置としての条件は、彼が大学に来ること。
そのためにやってきた奈緒崎が、彼を引っ張り出すのではなく謎の解明のために彼の手足となり、目的が変わっていく過程とふたりの関係性が変化する様が「謎」と映画を通じて演出されていくのも良きなんです。
一見無関係に思える存在が不意に別の側面を見せてくるのも、心理描写によってじわりと哀切や寂寥、やるせなさ、想像できてしまうが故に刺さる痛みがそこかしこに埋め込まれているのも良いです。
シリーズの完結から遡って読んでいるからこそ生まれる、「ほのめかされていたアレは、このことだったのか」となる体験もちょっと面白いです。
善意も悪意も恋慕も執着も恐怖も、物語の中に落とし込まれ、スクリーンのの中にあるからこそ楽しめるのだということを改めてわからされる作品。
ここから斜線堂作品が紡がれていくのかと思うと、より感慨深いです。
