■キネマ探偵カレイドミステリー 会縁奇縁のリエナクトメント
■作:斜線堂有紀
映画好きな作者による、映画への想いがあふれるミステリ作品。
シリーズ完結から7年を経ての新刊です。
嗄井戸の物語が一旦幕を下ろし、そこから続く探偵と助手それぞれが紡ぐ物語集でもあります。
6編からなるミステリ短編は、これまでのパターンを踏襲しつつも、「これはたしかに完結した物語の続きなのだ」とわかる変化が仕込まれてます。
相変わらず映画への愛にあふれ、映画の蘊蓄に触れ、映画が観たくなるのですが、探偵が謎を解く過程に、確かな変化が存在してる。
それがじわじわと後半に向けて効果を発していく演出なのが面白いんです。
主軸として私が感じたのは、『探偵助手とはなにか』というアイデンティティの物語なのでは、ということ。
助手として探偵の隣に立つための条件は?
役割期待というものがあるけれど、奈緒崎が自身に見出していた『嗄井戸の助手としての意味』が揺らぐ今作。
彼の周りというよりも、彼自身の内面の変化がとても丁寧に紡がれているのが良いなと思うのでした。
そして、助手はいつまで助手たり得るのか?
探偵はひとりでも探偵たりえるけれど、探偵助手は探偵がいないことには始まらない。
助手の存在意義とは、では何によるのか?
探偵を真似て探偵役を演じたとしたら、それはもう助手ではない別の探偵なのか?
大学生というモラトリアムにも期限が存在する。
同じ大学というカテゴリで括られた彼らが、それを失った先での関係性をどう捉えればいいのか惑うことにもなりうる。
繋がりとは、所属に左右されるとも言えるわけで。
これは、奈緒崎と嗄井戸が『大学生』だからこそ、卒業をひとつのキーとしつつ、自分自身と相手について強制的に見つめ直す機会に繋げられるのもいいなと。
時間の経過と関係性の変化、心境の変化を、これまでの積み重ねからもう一度再認識し、再構築していけるのではとも思えたのでした。
お互いがお互いに抱く想いの重さや質や熱量は、本人たちが一番見えていないのでは、という不器用さともどかしさには青春ミステリ的な手触りを感じたりもしました。
6つの謎はそれぞれがトリックとしてネタを効かせつつ軽やかに楽しめ、同時に探偵も探偵助手のあり方と互いの存在への想いに触れて掘り下げられる過程も楽しめ。
探偵と探偵助手の形について、ひとつの回答を得られたような、そんな物語でした。
