浜離宮恩賜庭園。
大好きな庭園の一つ。
商談を済ませたあと、気分転換に散歩に行った。
歩き進むにつれ、気がついた。
庭園内には至るところに黄色の花が咲いている。
懐かしく、心がほっとする色合いの花だ。
郷愁、情緒、親しみ、落ち着き、安らぎ、穏やかさ、優しさ、新鮮さ…。
この花を見て、そういう気持ちが私の中に生まれた。
私は不思議だった。
私は確かに花が好きだけれども、とりわけ、
この花の何が私の心をこんなにも惹き付けるのだろう…と。
遥か見渡せる広い空間、芝生、池、松、オレンジ色に紅葉した葉っぱ、優雅に飛ぶ白鷺、ねぐらに帰るカラスたちの鳴き声、大きな夕陽、肌を吹き付ける風、踏みしめる砂利とその音、土の感触…。
これらはすべて、私の子供時代に当たり前に側にあったものだ。
私はこんな風景の中で、子供時代の毎日を過ごした。
私は思った。
この庭園の風景は、私の元風景にとても近い。
だから、この空間はこんなにも私を癒すのだ、と。
でもまだ分からないことがある。
「黄色の花」だ。
私の心を惹き付けてやまない。
母が育てていた「菜の花畑」に似ているからかな、そんな風に思いながら色んなアングルで写真を撮った。
小一時間ほど散歩し、庭園の出口までやって来た。
日も暮れだし、風も冷たくなって来た。
ここは居心地が良いけれど、そろそろ帰らねばならないだろう…。
少し心残りに思いながら出口を出ようとしたその時、やはり出口にも黄色の花があり、間近でその花を見て私ははっと気がついた。
ああ!これはツワブキの花だ。
母が好んだツワブキの花。
母は生前から「ツワブキが好きなの。黄色の花でね」と良く話していた。
しかし、私はその花を最近までちゃんと見たことがなかった。
「ツワブキ」を間近で見たのは、ごく最近、母が亡くなってからだった。
だから、この浜離宮に咲くこの美しい黄色の花が、直ぐにツワブキだとは分からなかったのだ。
でも私は最後に気がついたの。
嬉しかった。
ああ、そうか、ここはお母さんの庭園なんだ。
ここは、お母さんの愛したものに溢れてる。
お母さんの風景そのものだ。
お母さんそのもの。
私はここでお母さんに包まれてるんだ。
だから、私はここにいると、こんなに、落ち着いた豊かな気持ちになるんだ。
子供時代の元風景であると同時に、母が愛した場所そのものだから。
道中、桟橋には猫がいた。
猫は人に慣れていて、私が足を止めてしゃがむとすりよってきた。
撫でたり抱っこしたり話しかけたり、猫ともひとしきり遊んだ。
私は猫が大好き。
猫。
これもまた母がこよなく愛した存在の一つ。
またここに来よう。
出来ることなら今度は愛する人と。
私の気持ちに寄り添って、「そうだったんだね、そうだったんだね」と、母の話を共有してくれる人と。
ああ、そうだった。
と、私は色んなことに気がつく。
母と言う存在を通して色んなことに気づく。
私は色んな幸せに包まれている。
母を通して、母のことをきっかけに、私は豊かな気持ちになる。
今日もまた、
お母さん。
おかあさん(^-^)と、思いながら。
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