NHK-BSで現在放映中の連続ドラマがかなり良い。
感想書く前に断っておくと、自分は、このドラマの原作小説(三浦しをん「舟を編む」)も、映画化作品(石井裕也監督・松田龍平主演)も、テレビアニメ(フジテレビ放送・ZXECS制作)も一切読んでいないし、観ていない。
そもそも波瑠さん出演以外の日本映画は見ないし、日本人作家の小説もほとんど読まないもので…。
で、このドラマなんだけど、この冬クールの連続ドラマで欠かさず観ているのは、波瑠さん出演の「グレイトギフト」とこのドラマだけ。何故このドラマを観ようと思ったのか、何の気なしにたまたま、というか、最近少し気になっていた池田エライザが主演する、世間で評判の良い原作小説の主人公を替えたオリジナルのドラマ化作品ということで、予告編を見て、キャスティングやNHK-BSらしい丁寧で上質なヒューマン・ドラマの雰囲気に興味を持って、これは、と思って、初回から録画して観てみることにした。
結果、自分の予感は正解!
非常に面白いドラマで、ストーリーやプロットの巧みさだけじゃなく、主人公・岸辺みどり(池田エライザ)はじめとするキャラクターの魅力に引き込まれる。
まだ前半(全10話のうちの第5話まで)が終わったばかりだけど、廃刊になったファッション誌の編集部員だったみどりがまったく門外漢の辞書編集部に異動になり、鬱屈した気持ちで、とまどいや困惑を抱えながら、それでも「ことば」を探求することの大切さ、辞書作りの楽しさに目覚め、自分のこれまでの生き方、考え方にも新たな気づきや学びを得て、成長していく物語がとても心に響いて、心地良い。
毎回のエピソードは、みどりの私生活や人間関係の変化を踏まえながら、「ことば=キーワード」をめぐる一話完結のような形で展開していくのだけど、様々な人間ドラマを下敷きにしたプロットの構成が非常に上手く、どのエピソードもうーんと唸らされ、しみじみとした感動がある。
ことばに対する深い洞察、ことばに込められた様々な人々の想い、ことばをどう選び、どう使うのか、その難しさや楽しさ、奥深さに、新しい発見がある。
世間一般でことばに対する知性や感性の乏しさ、人と人との関係の粗雑さ、共感や思いやりの欠如を感じることが多い昨今、文字通り、心が洗われる思いがする。
とにかく、主演の池田エライザがよい。
(波瑠さん以外の女優でこんなに気に入ったのは異例中の異例(笑))
喜怒哀楽の表情が豊かで、芝居に嘘がない。自然体とかいう言葉はあまり好きではないのだけど、この人は、芝居が誠実で、とても素直。もちろん、ビジュアルも非常にチャーミング。見た目の第一印象だと、ファッショナブルで華やか、ポップなイメージだけど、芝居やインタビュー(土曜スタジオパークとか)からは、すごく繊細で知的な人柄が窺われる。
主演以外のキャスティングも素晴らしい。
原作小説の主人公・馬締光也を演じる野田洋次郎は、はじめて芝居を見たけど、見事なはまり役。辞書編集部の佐々木(渡辺真起子)、天童(前田旺志郎)、監修者の松本(柴田恭兵)、社外編集者の荒木(岩松了)、馬締の妻で料亭を営む香具矢(美村里江)、辞書用紙メーカー営業の宮本(矢本悠馬)という、みどりを取り巻く主要キャストの人物描写、キャラクター相互の関係描写も、これだけ多くの登場人物がいても一人ひとりが決して薄っぺらくならず、立体的で奥行きがあり、見応えがある。
出演場面の少ないキャラクターにも、ネーム・バリューのある役者を惜しげもなく起用しているのは、さすがNHK、ってことじゃなく、それだけ一人ひとりのキャラクターを大切にしたい、という意識の表れに思われる。
なので、主演・池田エライザの魅力的な芝居もあり、ストーリーとプロットの面白さもあり、キャラクー陣が織りなす世界観のリアリティーもあり、観ていてすっかり安心してドラマの中に浸っていられる。
正直、ここ近年では稀有なドラマだと思う。
って言うか、自分が波瑠さん主演以外のドラマで、放映途中のドラマの感想を書くのは初めて(笑)。というのも、このドラマ、ここまでの展開とエピソードを踏まえて、さらにこの先の予告編を見ると、きっと素晴らしいドラマになること、まず間違いないだろうと確信したから。
後半もすごく楽しみ。