波瑠さんのドラマだけじゃなく、ちょこちょこ映画も見に行ってるんだけど、きちんと感想をまとめてブログに書く時間もないので、今年ここまでに観た映画の簡単な感想を一言コメントでまとめてみた。映画の内容やストーリーは割愛してるので、悪しからず。

 

「スパイダーマン・ノー・ウェイ・ホーム」

言わずと知れたマーベルMCUのスパイダーマン映画最新作。マーベル作品鑑賞歴の浅い自分にとっても、さすがにこの映画には大興奮して、映画館で3回観た。ソニーピクチャーズ版を含めて過去の主演3人のスパイダーマンの揃い踏みには、背筋がぞくぞくするほど感動。マルチバースという枠組みを使えば、エンタテインメント映画の可能性は無限に広がるのを実感。そういう意味では、率直に言って、映画史上かつてない画期的な作品だと思う。ストーリー的には、誰の記憶からも忘れられ、すべてを失ったスパイダーマンが、それでも「大いなる責任」を全うすべく、黙々と孤独な戦いを続ける、というエンディングがスーパーヒーロー映画のコアの価値を見事に表現していてGOOD。

 

「グレート・インディアン・キッチン」

インドの伝統と格式を重んじる中流だが由緒ある家柄の夫に嫁いだ女性に降りかかる不条理で苦痛に満ちた家父長制とミソジニーによる酷い抑圧を描いた作品。夫や舅の独善とプライドに振り回されて、奴隷のように家事にこき使われ、夜は性の奉仕、生理になれば穢れの忌避と汚辱の日々。タイトル通り、家畜小屋のような台所でひたすら料理とその後片付け、洗い物、臭い生ごみの始末に苦しむシーンがえんえんと続く。問題告発の映画ではあるが、結果として救いはなく、解決策の暗示もない。非常にリアルでインパクトの強い作品ではあるけど、リアリズムとしての明確なビジョンを持った作品ではないのが少し残念。

 

「フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ カンザス・イブニング・サン別冊」

こういう映画は結構好き。俳優たちが皆楽しそうに芝居をしている。突然のアニメーションのシーンでは爆笑。何とも言えない独特のユーモアとエスプリ、感受性に富んだ品のよいペーソスがしみじみと感じられる。レア・セドゥやティルダ・スウィントン、フランシス・マクド―マンド、リナ・クードリなどの女優陣が好印象。監督の過去作「グランド・ブダペスト・ホテル」とも似たような作品のイメージだが、オムニバス形式で多義性だったり、テーマやモチーフどうしの共鳴を感じさせるこの作品の方が自分はずっと好き。

 

「ゴーストバスターズ/アフターライフ」

この映画を鑑賞する前に若いころ観たオリジナル映画をネット配信で見返してみたんだけど、いやあ、昔は結構楽しんだ作品も今になってみると、何てくだらなく、バカバカしくストーリーがすかすか、特撮もチープで情けない。テーマ曲だけでヒットしたような感じ(笑)。でも、この映画は悪くない。オリジナルをリスペクトしつつも、映像や演出のクオリティーが高く、あえて家族愛をテーマにしたのも的確。しかし、何と言っても、この作品の魅力は、主人公の理系オタク少女フィービーの健気で真っすぐで、表情豊かな躍動感とそれを演じたマッケナ・グレイスの最高のチャーミングさ。子役で注目を浴びた「ギフテッド」も素晴らしかったけど、この映画ではまたイメージを一新、いや、彼女の将来が楽しみでしょうがない。

 

「355」

女性だけのチームが主人公で悪党の男どもとバトルするアクション・ムービーって、ここ2,3年、自分が観たので言うと「チャーリーズ・エンジェル」とか「ハーレクインの華麗なる覚醒」とか、最近かなり増えてきているようだけど、作品によって出来不出来の差は結構あると思う。ポイントは、主人公が女性であることの必然性とシスターフッドの描き方。男が主人公のアクション映画と何が違うのか。テーマ、設定、キャラ描写、プロット、演出等々の独自性やリアリティーの有無が重要。そういう意味で、この作品は、相当がっかり。男が主人公の作品と違いがほとんど感じられない。ストーリーも、どこがスパイなのか、お互い正体も狙いも行動もばればれで、裏をかく駆け引きもなく、真正面から力ずくでぶつかりあってるだけ、敵も味方も皆おバカなのか、登場人物たちのやってることに対してツッコミどころが満載(笑)。何よりシスターフッドの描写がまるで希薄。粗暴で無神経な男のB級アクション映画を見ている気分。

 

「ウエスト・サイド・ストーリー」

誰もが知る1957年初演のブロードウェイ・ミュージカルの名作で、1961年の映画化作品はアカデミー賞10部門を総なめした。その作品は昔から何度も観てるし、来日したブロードウェイ公演の舞台も観に行ったことがある。だから、スティーブン・スピルバーグがこの映画をリメイクすると聞いたときは、少なからず今更感があったし、旧作とのギャップというか、落差が心配だったのだけど。実際に観て、いや、これは旧作を明らかに凌駕してるでしょ、とすっかり感心。旧作でアニータ役だったリタ・モレノ以外の出演者は知らない俳優ばかりだったけど、マリア役のレイチェル・ゼグラー筆頭に、アニータ役のアリアナ・デボーズなど、皆芝居が上手く、そして何より歌と踊りが素晴らしい。演出やカメラワーク、曲の構成も非常に洗練されている。テーマも過度に社会性を前面に出さずに、しかも現代的な意義を感じさせて、なかなかの秀作。

 

「ガガーリン」

老朽化して解体が計画されているパリ郊外の公営集合住宅を舞台に16歳の黒人少年の恋と友情と宇宙飛行士への夢を描いた青春映画。時代に取り残され、貧困層や移民ばかりが暮らす団地を解体の危機から守ろうと努力する主人公の姿が痛々しくも健気で感情移入を誘う。でも、経済的にも家庭環境にも恵まれず、社会的な将来性を閉ざされている主人公のような若者にとって、自分の生まれ育ったコミュニティーや家族との思い出を守ることだけが唯一の希望というのは、何とも悲しく、その夢が団地を宇宙船に仕立て上げるという美しくも儚い幻想に収斂していく展開も何だかやり切れない感じ。フレンチ・ディスパッチでも印象的だったリナ・クードリが主人公の恋人役を好演していて、こちらの方が現実的でたくましく前向きな女性に見えて、やはり、主人公は女性の映画の方がいいな、と感じた。

 

「ガンパウダー・ミルクシェイク」

上に書いた「355」と同じく、女性主人公がチームで男どもと熾烈なバトルを繰り広げるアクション映画。ストーリーとしては、「355」と大差ない、上映時間のほぼ8割方がアクション・シーンというシンプルなものなんだけど、こちらの映画はそんなに酷くない、っていうか、割と好きかもしれない、ってのは、単純に主演のカレン・ギランが魅力的だから、というだけかもしれない(笑)。ま、映画の好き嫌いってそういうもんだよね、って言ったら身も蓋もないか(笑)。あえて言うなら、こちらの映画の方が60年代風でありながら無国籍な原色ド派手なビジュアルとか、女性キャラのスタイリッシュで華麗なアクションとか、母と娘の愛を中心に、父親を亡くした(主人公に殺された(笑))少女に母に捨てられた自分を重ねて、懸命に守ろうとする主人公と女性同士の絆とか、それなりに見どころあり。身勝手で悪辣な男どもをかっこよく蹴散らす爽快感もあり。続編がある予定らしいけど、たぶん続編も見る、と思う(笑)。

 

「ザ・バットマン」

バットマン映画は過去作品とか、もともと好きじゃないし、そもそもスーパーマンをはじめとするDCヒーロー映画はマーベル作品と違って、潜在的にポジティブで前向きな人間ドラマ要素に乏しく、性悪説じゃないけど、人間描写に何か全体的に重くて暗いイメージがあり、過度に社会性テーマを押し出してくるのが苦手な印象。で、この映画も、例によって、ヴィランが精神的におかしいのは当然として、主人公もかなり病んでる(笑)。でも、ま、ストーリーの軸が単なるバトルではなく、手掛かりに基づく「捜査」なのは、陰鬱な気持ちにならずに、素直に物語の展開を楽しめる要素にはなっている。ツッコミどころは多々あるけど、ゾーイ・クラヴィッツ演じるキャット・ウーマンは魅力的なキャラだし、続編も見る可能性あり。てか、我ながら、ほんと登場する女性キャラだけで映画の好みが左右されすぎじゃない??(笑)。

 

「オートクチュール」

クリスチャン・ディオールのオートクチュール部門のお針子のベテラン・チーフと彼女に才能を見込まれて見習いに雇われた貧しい移民の若い娘との心の絆を描いた作品。登場人物のほとんどが女性(トランス女性含む)という、女性同士の気持ちのやり取り、心情描写が丁寧かつ細やかで、感情がぶつかる場面では、もやもやしたり、じりじりしたり、痛々しかったりしながら、最後は観ていて何だか心がなごむ作品。ストーリーとしては、当初は若い娘の才能の開花を軸にした内容かと思ったけど、お針子の仕事や職人技の描写は意外と少なく、それよりもあくまで心理面、母と娘のような世代の違う女性同士の関係が中心テーマなんだと観ていて次第に気づく。鑑賞ポイントがちょっと定まらなくて、作品の印象がフラットになってしまったかもしれない。あと、お針子見習いを演じたリナ・クードリは、何と今年観た出演作品は3本目、一昨年は主演作品「パピチャ」も観たし、どんだけ気に入ってんだか(笑)。でも、どの映画も、ちょっと素行不良で気の強い、おてんば娘のような役ばかりなので、別の映画ではもう少ししっとり落ち着いたキャラクターも観てみたい。