最終話は、期待を裏切らない、よい意味で予想した通りの安定かつハッピーな大団円だった。

ん、いんだよな、こういうので。うんうん(孤独のグルメ風(笑))

 

冒頭は、前回のエンディングから続いて、聡子と父・真との再会と対話のシーン。

いきなり感動の号泣かと思ったら、ここは意外に真がスタンダールの姿を借りた経緯とその思いの一部始終を語り、聡子は拗ねてみたり、恨み言を言ってみたり、素直になれずいじけて、父の優しさにちょっと甘えてる感じも。でも、真が捏造事件の裏にあった聡子との大切な時間を失いたくないという動機、結局はかえって聡子を苦しめてしまった自分の愚かさを謝ると、聡子も父を支えてあげられず、逃げてしまった自分のふがいなさを涙交じりに悔いて、二人の気持ちがしっかりと結びついていく。

真がもう行かなくちゃ、と言うと、抑えていた父への思いがこみ上げてきて、子供のように泣き出し、行かないで、ずっとそばにいて、と訴える聡子。

それに対して、大丈夫だ、と聡子を励ましながら、万平聡子は、優しくて、賢くて、誰よりも可愛い、俺の自慢の娘だ、と答える真の言葉にさらにあふれ出す聡子の涙、そっと父に抱きついて、お父さん、大好き、お父さん、ありがとう、という切ない聡子の姿に、自分もボロ泣き。

 

そこから先は、聡子の思いが図書館の仲間や子供たちに、そして、涼介に伝わる、明るく暖かいエンディング。

涼介の謝罪とあらためての告白に対しては、単なる恋の憧れとしてではなく、涼介の人間としての魅力、その作品への思いを告げる、というのは、聡子の成長の現れを感じた。

子どもたちへの読み聞かせ、マリウさぎのお話会では、あかりの思い、そして自分への父の思いにしっかりと答える。そんな聡子を見守る図書館の仲間たちの姿も物語の前半とは打って変わって爽やかで。

このお話会での波瑠さんのお芝居と声の素晴らしさには、もううっとり聞き惚れてしまう。いつまでもこの幸福感に浸ってずっと聞いていたい。

 

そして、エンディングのさらにエンディング、涼介の受賞パーティーに現れた聡子の眩いばかりの美しさには、心臓がどきどきして、何だか卒倒しそう。真っ赤なノースリーブのパーティードレスに、輝くように整ったメイクと髪型。こんなにエレガントでセクシーな波瑠さんのビジュアルを見たのは初めてかも。

しかも、その上品で華やかな歩みで静かに近づいてきて、少し伏し目がちな恥じらいからの、決めの合言葉ヴォレ、呟いて目を上げ、とろけるような表情での、何とも大胆かつ優美なキス。いや、息を飲む、ってのはまさにこういうこと。

この余韻だけで、ずっと幸せでいられる(笑)。

 

聡子と涼介が結ばれるこのシーンで潔くドラマが終わる。

そういう意味では、絵に描いたような、典型的なシンデレラ・ストーリーだった。

確かに、過去の父親との確執と隠された親子の愛情、誤解されていた周囲の人々との関係の深化というヒューマン・ドラマの要素が良いフレーバー、アクセントになっていたけど、物語のコアになっているのは、あくまでシンデレラ・ストーリーに沿った、ロマンティック・コメディーだったと思う。

波瑠さんにこういうドラマの主人公やらせたら、外れるわけがない。

 

このドラマ、感想書きながら、時間をかけてゆっくり鑑賞したので、途中でのネタバレを避けるため、なるべくSNSの感想やアマゾンのサイトのレビューは読まないようにしていたんだけど、あらためて世評をチェックしてみると、ドラマの前半は凡庸で退屈、後半になるとヒューマン・ドラマになって感動、って意見が多いみたい。

でも、どうかな、自分は結構、前半の典型的なラブコメ展開、特に、聡子とスタンダールの絶妙な掛け合い、浮き沈みの激しい恋の行ったり来たりが楽しかったんだけどな。そういう意味じゃ、スタンダールが万平真(の幽霊)というストレートな設定が、逆に、もう少し、聡子の妄想要素を含んだ多義的なファンタジー設定の方が味わいに奥行きがあったようにも思うんだけど。

 

今回の波瑠さんのお芝居は、これまでのラブコメ作品と比べても、暗い引きこもりの聡子とぶっちゃけたやけくそ聡子、美しく淑やかな聡子と知性と教養の賢い聡子、と振り幅が相当に大きい、めりはりの効いたお芝居だったと思う。それが、聡子の成長、いや、何かを身に着けての成長ということではなく、もともとあった自分の魅力に気づくことで、自分も周囲も明るく開けてくる、そして封じ込まれていた自分の本当の姿を見つけ出す、というドラマの展開を見事に演じ切っている。

相手役の瀬戸康史もよかったけど、何と言っても、スタンダール役の小日向文世が波瑠さんとのコメディー芝居の相性ばっちりで、それがドラマのテンポとリズムを生み出していたと思う。それと、エリナ役の織田梨沙もなかなかチャーミングでよい味を出していた。

 

あと、今回は、波瑠さんの初めての本格的な配信ドラマ、しかも全話一挙配信ということで、視聴方法にもちょっと戸惑ったんだけど、30分×10話というのは、物語の展開としてはすごく軽快で見やすかった。ただ、聡子と同僚との関係の改善とか、聡子と少女あかりとの接点とか、もう少し突っ込んで丁寧に描写してくれた方が、全体のプロットがもっとスムーズにすっと腑に落ちたんじゃないかなあ。かと言って、普通の連続ドラマみたいに1時間×10話でじっくりやられても、脇道エピソードやキャラ描写分散で間延びしちゃいそうだから、そこは難しいところだけどね。

 

まあ、何と言っても、このドラマでは、波瑠さんのビジュアル(単に見かけだけじゃない)に魅了されっぱなし。あー、それだけでも幸福感でいっぱい。