今回のエピソードは聡子とマリウス(涼介)の恋が破局してしまう悲しいストーリー、な上に、思いがけず、スタンダールが一度も登場しないというちょっと寂しい展開。

 

冒頭は前回のエンディングで涼介の秘密、自分に近づいた意図を知ってしまった聡子が涼介の家を飛び出し、怪我した足を引きずりながら、焦って自宅に逃げ帰る悲壮感いっぱいのシーンが続く。やっとの思いで自分の部屋にたどり着き、助けを求めるように、封印したはずの「恋愛論」のページをいくらめくってもスタンダールは現れない。力なく肩を落とす聡子の後ろ姿がやり切れない。

この間ずっと挿入歌が流れていて、うー、ちょっと曲調が映像と合わないかなあ、という野暮なツッコミは置いといて、その歌詞が、運命の恋なんて本の中にしかない、というのは印象的。

 

ただ、今回も周囲の人々の優しさが救いになってる。

バーで自分を責めて落ち込む涼介に対して、これまで軽薄男に見えた平沼が半ば諭すように、半ば背中を押すように、お前にとって一番大切なことは何なんだ、と真顔で問いかける。

あれだけ聡子に意地悪だったエリナも、聡子を傷つけた涼介に食って掛かり、過去の事件で心を病んでいた聡子がそう見えなかったのは必死に前に進もうとしてたから、あなたが前にいたから、そこに飛び込もうと頑張ってたんだよっ、それなのに、あなたが突き落としてどうすんのよっ!と半泣きで怒りと悲しみをあらわにする。

このシーン、目頭が熱くなって、思わずうるうるしてしまった。

以前のエリナの態度と比べると豹変だし、いつの間に聡子の事情を知って感情移入してたんだろう、とも思うんだけど、涼介への熱烈なアタックも聡子への嫌がらせも性格が悪いからじゃなくて、感情がストレートに表に出る、率直な性分だからなんだと思うと、違和感はあまりない。

いいよね、こういう対立してた女同士にシスターフッドが芽生えるのって。

 

でも、聡子は失恋から立ち直れない。

涼介が家までやってきて、自分の行いを謝っても、ドア越しの悲しい会話で、運命の恋なんて本の中にしかないのに、と自分の涼介に対する空しい恋心を儚み、あなたがそこにいることがたまらなく苦しい、・・・さようなら、と別れを告げる。

立ち去る涼介の足音を聞いて、玄関でその場に崩れ落ち、こらえきれず泣きじゃくる聡子の姿がたまらなく痛々しい。

精神科医での診療で医師から父親に会って、過去に向き合うよう勧められても、先に進む必要も今はない、あたしの中に恋愛そのものが消えたから、スタンダールも見えなくなったのかもしれない、と魂が抜けたように淡々と話す聡子。

物語としては、まさにここがどん底。

シンデレラはガラスの靴をなくし、行方知れずになってしまった。

 

ただ、ここからわずかだけど、小さなきっかけが物語を再び動かし始める。

聡子にひどいことをした悦子もどうやら改心したようで、引きこもってしまった聡子の家を訪れ、父親のいない少女あかりが聡子のマリうさぎのお話会を楽しみにしていることを伝え、聡子が皆に愛されている、と元気づける。

ここで今回登場シーンのなかったスタンダールが、以前の台詞で聡子の心に語りかける。

愛すべき人がいるなら、愛するが故の行動をしたまえ。

やはり、聡子を動かすのはスタンダールなんだな。

村石やエリナら同僚が心配し見守る中、お話会に戻ってきた聡子は、お話は何も書けなかったけど、あかりがお父さんが自分をどう思っているのか書いてある本を読みたい、と言うのを聞いて、自分の父親に会いに行くことを決心する。何かが少し吹っ切れたような聡子の小さな微笑みに、ようやく差し込んできた明るい日の温もりのようなものを感じてほっとする。

 

ドラマはあと2回なんだけど、これ、すべて決着するんだろうか。

涼介との恋の行方、それはきっとハッピーなものだとは思うんだけど、果たして二人はどうなるのか。それ以上に気になるのは、スタンダールは再び現れるのか、てか、スタンダールっていったい何者、その正体(?)は何か。

いや、ドラマのエンディングも気がかりだけど、あと2回でこのドラマの世界ともお別れかと思うと、それがとても寂しい思いがする。