前回のラストシーンがショッキングだったので、今回のエピソードも聡子にとって苦しい状況が続くのだろう、という予想はしていたけど。

聡子にとっての試練は、過去の秘密が悦子に知られ、居場所のなかった辛い体験がフラッシュバックするという状況だけじゃなく、聡子自身の内面の問題でもあるのが、悲しくやり切れない展開につながる。

本当の自分を知ったらマリウス(涼介)が失望する、という強迫観念に囚われ、悦子の脅しに耐えることができない。慌てて家を出ようとまでしてしまう意味不明のパニック状態。

でも、ここでのスタンダールの助言は、予想以上に至極真っ当。万平事件のこと、父親のことをずっと伏せたままでマリウス(涼介)と結ばれることは不可能だと言う。

説教はいらないから、何とかして、とむきになってせがむ聡子に、スタンダールは、心の壁を突き破らなければ、その先へは進めない、行き止まりだ、恋をあきらめるしかない、とあえて突き放す。

聡子とスタンダールの間にも気持ちの亀裂が生じてしまうのがとても切ない。

 

今回の唯一の救いは、職場の同僚、村石とエリナと小沢が落ち込んで無断欠勤の聡子を心配して家を訪ねてくるシーン。

ぼろぼろの聡子が会うのを避けようとしても、簡単にあきらめて引き下がらずに、押しかけて部屋に上がり込む。この優しい図々しさ(笑)に聡子への思いやりが現れていて心がほっとする。いつの間にかエリナも聡子と涼介の仲を認めていて、なかなかいい子じゃないか。聡子を元気づけようとして、村石があえて恋敵の涼介を呼び出す展開も爽やか。

この人たちとの関係の変化が聡子にとってこの先の助けになるといいのだけど。

 

自宅を訪ねてきた涼介と会って、涼介への思いをはっきり確かめる聡子。でも、やり切れないのは、そこからの聡子の決断。悦子に涼介とは別れたと嘘をついて、内緒で涼介と付き合い続けよう、というのはあまりに姑息じゃないか。気持ちは分かるけど、気が重くなる。

聡子のその態度にスタンダールが怒り、過去のトラウマを克服するせっかくのチャンスだったのに、というのに対し、あんたなんかに何が分かるのよ!と初めて聡子のため込んだ感情が爆発するシーンに胸が苦しく、熱く焼けるような心地がする。

聡子が本を何度も閉じようとしても、なかなか消えないスタンダールのもの悲しい表情もすごく印象的。

心の底から聡子のことを思うスタンダールの気持ちがひしひしと伝わる。さながら、聡子が失ってしまった父親との絆をスタンダールが代わって引き受けてくれているような。

 

このドラマ、きっと聡子と父親との再会があるよね。でないと、物語の決着がつかない。で、ふと余計な連想が働いて、これ、父親役はスタンダール=小日向文世の二役とか、いやいや、ほんといらない余計な連想。下手な「考察」(笑)はやめやめ。

 

今回のエピソードのエンディングは、これもある程度想定はしていたのだけど、涼介が万平事件のことを知っていて、聡子を自分の小説の主人公モデルにしようとしている、という事実を聡子が知ってしまう。

前回に続いてまた衝撃のエンディングだけど、今回の方が聡子にとってはずっとダメージが大きい。最後のクローズアップで目を大きく見開いて、美しくも凍り付いた表情がすべてを物語っている。

果たして涼介の聡子への思いは本物なのか。

聡子にとっても涼介にとっても試練が続く展開から目が離せない。