BTS、人種的平等と道徳的価値を求める

Fr. Shay Cullen

2022年6月4日

 

世界的に有名な韓国のバンドBTSが、ホワイトハウスの記者会見室で世界中のメディアに向けて語り、ホワイトハウス報道官であるKarine Jean-Pierreを擁護した。彼女は、自ら同性愛者であることを公表する黒人女性初のホワイトハウス報道官である。彼らのこの行為は何を意味するのだろうか。この若者たちとこの女性は、アジア系アメリカ人へ向けられた人種差別や憎悪は道徳的に誤ったっ行為であり、人権に反していると述べ、人間の尊厳を大切にし、互いを愛することこそが最も偉大な善であると語った。

 

この一度の会見は、世界中で何千回も再生され、無神論者であるこの素晴らしい少年たちは、筆者が50年に及ぶ布教活動で成し遂げたよりも、さらに多くの人々に人間の尊厳についての強烈なメッセージを届けた。ロックバンドで活躍するという10代の頃の夢を追い続けていたら、筆者はもっと大きな影響力を手にしていたのかもしれない。

 

世界の若者の多くは、虐待的な親や腐敗した社会を信用しておらず、懐疑的・反抗的である。そして多くの若者が性的虐待に苦しんでいる。政治家や虐待的な大人たちは彼らのことなど相手にしない。合衆国大統領はBTSの力を借り、フィリピン人を含むアジア系アメリカ人を支援するメッセージを伝えた。

 

前大統領Donald Trumpは新型コロナウイルスを中国風邪と名づけた。アジア系の人々に対する憎悪の波に火をつけ、結果としてヘイトクライムを招いた責任は、Trumpをはじめとする人種差別的政治家にあるとされている。Donald Trumpはアメリカ国内の白人至上主義グループを公に支持しており、それによりアジア系アメリカ人が人種差別攻撃の標的となった。

 

敬虔なカトリック教徒であるBiden大統領がBTSをホワイトハウスへ招いたのは、賢明であった。BTSは、素晴らしいシンガーでありダンサーである7人のメンバーからなるグループである。それぞれJ-Hope、Suga、Jungkook、V、Jin、RM、Jiminという呼び名で広く知られている。彼らは、社会的意識の高い、そして人権を意識した歌詞を自ら書いている。彼ら自身が善を促進する力である。彼らには何億人もの若いファンがいる。その歌は至る所で絶えず流されている。彼らは、自分たちには宗教心はなく、またキリスト教に対する信仰もないと断言しているが、彼らは、人種や地位、国籍にかかわらず、万人のための平等、正義、尊厳といったキリスト教的な価値観を間違いなく備えており、それはまるでナザレのイエスの如くである。

 

BTSは、世界で最も力のある人物であるJoe Biden大統領に加勢し、最も崇高な価値観を広め、アメリカの全人口の7.2%を占める2,400万のアジア系アメリカ人に対するヘイトスピーチや攻撃、差別を批判した。

 

BTSは自分たちで作詞を行い、いじめや人種差別主義、暴力、差別、不平等といった誤った行いについて歌っている。彼らは世界を沸かせる存在であり、何億もの若いファンたちが彼らの歌を聴き、口ずさみ、その歌に合わせて踊っている。そうしたファンたちは、その親たちにも大きな影響を与える得る。

 

BTSのメンバーたちはホワイトハウスの演台から次のように語った。「ぼくたちはアジア系アメリカ人に対するヘイトクライムなど、最近のヘイトクライムの急増に非常にショックを受け悲しい気持ちでいました。こうした犯罪を食い止め、そのための運動を支援するために、ぼくたちはこの機会に自分たちの思いをもう一度はっきり示したいと思います。」Jiminはそう述べた。

 

そしてSugaは、「違うということは悪いことではありません。私たちがその違いをすべてオープンにし、それを互いに受け入れたきはじめて平等が生まれるのだと思います。」と語った。

 

さらにVが続けた。「人にはみな、その人なりの歴史があります。誰もが皆、互いを価値ある人間として尊重し、理解し合えるよう、そこに近づくため、今日がその第一歩となることを願っています。」

 

そしてJ-Hopeは、「ぼくたちの“軍隊”である世界中のファンのみんなは国籍も文化も違います。話す言葉も違います。今ぼくたちがここにいるのは、そのみんなのおかげです。ぼくたちは心から、そしていつも感謝しています。」と話した。

 

「ぼくたちは今でも驚いています。韓国人アーティストが作り出した音楽が、言葉や文化という壁を超えて、世界中のこんなにも多くの人々に届いていることに。音楽には、どんなときでもあらゆるものを一つにする、驚くべき、素晴らしい力があると信じています。」Jungkookはそう語った。

 

BTSをメディアに紹介したホワイトハウス報道官Karine Jean-Pierreは、彼女自身が若者のロールモデルである。彼女は、自身の回想録の中で語っているように、幼少期に体験した困窮や性的虐待を乗り越え、最終的に2003年、Columbia University のSchool of International and Public Affairs (SIPA)においてPublic Affairsの修士課程を修了した。彼女は極めて優秀な同性愛者の黒人女性であり、Barak Obama大統領の下で公務に就き、Joe Biden政権下でも同様に公務に従事している。

 

フィリピンでは、次期政権が、見た目や政界でのコネや縁故ではなく、個人の能力や資質に基づく、正しい閣僚の人選を行ってくれるだろう。残念ながら、フィリピンには人種差別をはじめ多くの差別が存在する。中産階級や上流階級の人々の多くは、肌の色について、白いことが正しいと思い込まされてきた。彼らは、化粧品会社が販売促進する、水銀を含む危険なホワイトニンググリームに惜しげもなく大金を費やし、病的に漂白された白い肌のセレブや映画俳優をまね、張り合っている。

 

こうした人々は自分の自然な肌の色や遺伝である“kayumanggi(茶色、ダークブラウン)”の肌の色を受け入れられず、嫌悪する。そのような肌の色を、劣っている、価値がない、と考えている。自らが受け継いだ自然な美しさに目をむけ、それを認めることができない。最悪なことは、人種差別主義に基づく製品を使うことで、自らの健康を害しているということだ。

 

こうした問題に真剣に取り組んでいるFilipino EcoWaste Coalitionは、水銀を含む肌のホワイトニング剤の販売停止を呼びかけている。このような危険な製品の8つのブランドが以下のサイトで特定されている。http://ecowastecoalition.blogspot.com

 

世界保健機関(WHO)はそうした製品が与えるダメージを以下のようにリストアップしている。腎障害、皮膚炎、皮膚変色、傷、細菌・真菌感染症に対する肌の抵抗力低下、不安、うつ、精神病、末梢神経障害。

 

人種差別は肌のホワイトニング製品の中だけにあるのではなく、そもそも文化そのものの中に存在する。フィリピンの先住民族は、王族からなる少数独裁国家の支配者層から劣った人間として扱われている。支配者階級の人々は先住民族に受け継がれる先祖代々の土地を奪い取り、鉱物資源を採取している。それにより環境破壊やさらなる貧困、抑圧が引き起こされている。彼らの支配は何世代にも渡る悲惨な結果をまねき、フィリピンの人口の3分の1が何らかの貧困に苦しんでいる。虐げられ、忘れ去られた多くのフィリピン人(今回の選挙が行われるまで)が、ゴミや、レストランの皿に残された残飯を再調理した食料で何とか生き延びてきた。

 

財力のある富裕層は無知と無関心という贅を尽くした繭の中で生活している。その一方で、何百万という人々が飢えに苦しんでいる。支配者層は恥を知らない。彼らには、フィリピンを、十分な教育を受けた人々の国家、国際社会の中で貧困のない豊かな国家にしようとする国民としての誇りもない。フィリピンは、物乞いやスラムで暮らす人々、教育を受けておらず、貧しく、重い税金を強いられ、生きることに必死な人々が、少数の大金持ちによって支配される国家である。支配者層は、フィリピンがそのような国家であることをよしとしている。

 

多くの子どもたちが貧しい家庭の中で性的虐待を受けている。さらに、外国籍のセックス・ツーリストや小児性愛者を満足させるために、性の奴隷として人身売買業者によってネット上で取り引きされている。支配者層はそんなことは気にもしない。この衝撃的な現実を変え、正義と平等に基づく国家を建設するために、新政権には、BTS以上の行動が求められている。

 

原文:https://www.preda.org/2022/bts-calls-for-racial-equality-and-moral-values/