ー神様は、その人が乗り越えられる試練しか与えないー

この言葉をひたすら信じて、生きた。生きた。生きた。
そんなふうに、結婚生活の第1波乱を乗り越えた。

最初は、ギクシャクしながらもお互いを思いやりながらの作り物のような生活だった。
 
いつも頭の中で、考えない日はなかった。
彼の気持ち、
彼女の気持ち、
わたしの気持ち、
背負った十字架。


けれど、人間は時の流れとともに記憶も少しずつ流れ去っていく。

日常が戻り始めたころ、
新しい命が鼓動をはじめた。

これでよかったのだ。
本当の家族になりたい。

日付が変わり、クリスマスイブになったばかりの真夜中に、産声をあげた。

悲しい出来事が起こった時もクリスマスの季節だった。
このまま、この季節が嫌いになりそうだった…。

そして。
同じ季節に、神様からの贈り物をいただいた。
この子はわたしたちのの宝だ!

幸せな日々。
こどもの笑顔は、全ての憂鬱や猜疑心や後悔を拭い取ってくれた。


離婚を考え、パートナーの両親の元へ二人で出かけた。
私の知らないのところで、彼の両親と話が進められ、結局不倫してた女性はこどもをあきらめ、パートナーとも別れ、彼も彼女も職場を離れた。

結局、パートナーは自立できていない人なのだ。
自分の意思などない。

けれど、私も同じだった。
この決断に自分の身を置くしかなかったのだ。

理不尽な事続きの中で、何も考えることなど出来なくて、このままもう一度頑張ってみようと思った。
この人をもう少し信じてみようか…。
心が離れたのは、自分が泣いてばかりいたせいじゃないのか…。自分にも原因があったのかもしれないと。

ただひたすらに、極めて平常な心で過ごしていた。
パートナーも新しい職場で、身の回りに起こったことをリセットするかのように、生きている風だった。

『次の検診までに心拍確認されない場合は、今回は残念ですが処置になります。』


眠ってる間に処置が終わってた。
しばらく目覚めた時のおなかの中が空っぽな感覚が忘れられなかった。
心が癒えぬまま迎えた次の検診で、
『前回検査結果、じつは胞状奇胎でしたので、半年は経過観察が必要になります。その間、妊娠しないように気をつけて下さい。』そう先生は告げた。
周りの人たちは、普通に妊娠しているというのに、なんで一握りの人しかかからないこんな小さい確率の中に自分がいるのだろう…頭の中がぐるぐる。。。
悲しみにくれていた。
けれど仕事にも普通に復帰しなければならず、日々もくもくと過ごした。
日常が戻り始めようとしていた矢先、パートナーの帰りが遅い日が続きはじめた。
会話をしても、なんだか上の空。
心がここにない。ない。ない。

女は、なんとなくイヤな感じを察知できる妙な勘の良さを持っている。

それでも、そんな変な感じのまま半年くらい過ぎただろうか。
冷えた感じの二人を断ち切りたくて勇気を出して聞いてみた。
私のこと、愛してる?
「嫌いじゃないよ」
やっぱり好きな人いるんだ。それからいろいろ話していくうちに、「好きな人がいる。妊娠している。いま6ヶ月に入る」
え⁇え?
耳を疑った。頭の奥がキーンとなった。