4年前の5月28日、コロナ禍で毎日辟易としていた頃のこと。

 

この日の日中は確か雨が降っていたように思う。夕刻、午後6時過ぎにベランダ越しに空を見上げるときれいな虹が出ていた。雨上がりの空に本当に七色の虹だった。私は母を呼んでいっしょにその虹を見上げてた。そして言った。「奇麗だね~久しぶりに見たね」と。母もそうだね~と言ってベランダ越しに立ってしばらく二人で空を見上げていた。そんな、素敵なひと時だったにもかかわらず私はそんな自分が少し嫌いだった。

 

母はずっと一人暮らしをしていたのだけど認著症だとわかって、一人暮らしもそろそろ困難ということで私と夫の住む東京に引っ越してきたのだ。一人っ子の私は母と過ごす時間が子供の頃から多かった。認知症の人と同居するのは大変だとは聞いていたし、想像もできた。反面、またいっしょに買い物したり楽しい時間が過ごせるとも思っていた。しかし、やはり現実は厳しい。母は認知症の他、足も悪いし、耳も遠い。何度言ってもわからない。聞こえない。リハビリも嫌がるし私の思うようにならない。だんだん私は母につらく当たるようになったのだ。そして、自分の言動を反省する。そんなことの繰り返しだった。それなのに、虹が出たなどと言って母を呼んでいっしょに並んで見上げる。。。そんな時だけ、いかにも優しい娘のように振舞っている自分が嫌いだった。その時の気持ちは今でもはっきり覚えている。

 

ごめんね、お母さん。