ヒロがモモに言った言葉。

「俺はモモの中で勝手に一番だと思っていた。」

モモはヒロのことが順番なんてつけられない程に愛していたのに。
どんなに会って言葉を交わして、身体を重ねても伝わらなかった。

「俺の中でモモは、一緒にいて安らぐ、とても大切な存在だよ。」

結局、愛しているって言葉はその時はモモにだけ向けられても、言った瞬間に泡のように消えて何も残らないんだ。

妻帯者を好きになって、それをわかっていて関係を持ったから、ヒロには会いたい以外のことは望まなかった。
正直、ヒロとの未来を夢見ていたこともあったけど、それは言っちゃいけないことだとわかっていたし、言えなかった。
ヒロに負担をかけたくなくて、ヒロに対して無理して大人の女を演じた。
全然大人じゃないのに。
ヒロがどう思っているかは聞かないけど、モモはヒロとは付き合っているとは考えないようにしていた。
ただ、会って食事を共にして一晩一緒にいる関係だと思うようにしていた。

ヒロにモモに対しての責任を感じて欲しくなくて、ヒロ以外の男の人とも飲みに行ったりしていた。
勿論、特別な関係にはなったりはしないけど、ヒロ以外の男性と飲みに行くことで、ヒロに対する気持ちを上手く抑えられていたと思う。

モモがヒロ以外の男性と二人で飲みに行っている事を知ったヒロは静かに怒りをあらわしていた。

「好きな人がいるのにする行動じゃないよね?」

そう言われて何も言えなかった。

だけど、モモの中の感情が全部ヒロに行ったら、ヒロはそれを全部受け止めてくれる?
モモと一緒にどこまでも落ちる勇気もないのに、全部を受け止めてくれるはずもない。

もう戻れないくらいまで遠くに来てしまったけど、今なら時間はかかるけど戻れると思う。