なんか、蓮にすがって泣くキョーコちゃんが思い浮かんだので

書いてみました。

いろいろ苦情の出そうな作品ですが、

流し読んでいただけると幸いです。

2,3話で終わります。




1


「この記事が来週の週刊誌に載る。」
社長室に呼ばれ、差し出されたのは某週刊誌の記事の原稿をコピーした紙一枚。すでに校正も済んでいる。


見開きに『ついに撮った。抱かれたい男No.1に抱かれる女』との品のない見出しに、写真。
記事の大半を占める大きな写真には俺の隣にとある女優が写っている。
並んで写っているだけで、寄り添ってもいないし、ましてや抱きしめてもいない。
「なんで、こんな物。」
社長だったら握りつぶせる程度のデマ記事だ。


「この女優、あの映画の相手役だ。」
俺の手から記事を受け取った社さんが呟いたことで、やっと相手を思い出した。
「ああ、あの。じゃあ、打ち合わせの時の写真ですね。」


「発売前に止められないんですか?」
社さんの質問に、社長は面白くなさそうに嘆息した。
「俺も止めようと思ったんだが、この女優のとこの社長に泣きながら土下座されちまってなあ。」
人気の落ちてきた女優で起死回生を狙ってのやらせ記事。
ばれたらかえって打撃になりそうなものだが・・・。


「反論は発売日の翌日以降だ。映画の詳細を公表するのがその日だからな。それ以前に映画の話をするのは契約違反にあたる。だからな、蓮も社もこの話は口外禁止だ。」
「それは契約にありますから、当然ですね。」
社さんも俺も、それには異論はない。


だが、社長は俺の目を見据えて続けた。
「たとえ、どんなに口が堅くて、秘密を守ってくれそうな相手にも、だ。蓮は極秘事項を漏えいしている前科があるからな。」
「え、キョーコちゃんなら・・・。」
「社、例外は認められない。」
ドスのきいた社長の言葉に俺たちは不本意ながら了承するしかなかった。