久々に書きたくなったんですけど、
本誌が出る前に書かないと、書けなくなりそうなので
とりあえず、本誌出るまでに3,4話で終わらせます。




『やきもちやきさん』



トラジックマーカーの後、俺と彼女は相変わらず先輩後輩という関係だけれど、以前よりちょっとだけ近くなった気がしている。



撮影中、彼女の作る食事に慣れてしまったせいか、
何を食べても美味しく感じなくて、前にも増して食事量が減った事を、
社さんに気付かれてしまったのがきっかけだった。
それを彼は、事もあろうに社長と彼女に大げさに告げ口してくれたのだ。
おかげで、社長と彼女、双方から呆れられて怒られて、
彼女の時間の許す限り、しばらくの間、
彼女が食事のサポートをしてくれる事にされてしまった。
 そうはいっても彼女も仕事が増えているし、
そんなに手間をかけてもらうにはいかないと訴えたのだが、
運悪く体重が落ちていたのと、前日寝不足で顔色が悪かったせいで、
三人がかりで説得されてしまった。
 とりあえず体重が戻るまでという約束だったはずなのだが・・・。


 彼女に負担をかけていて申し訳ない気持ちはあるのだけれど、
合鍵を渡して、留守でも自由にキッチンを使ってもらって、
冷蔵庫や冷凍庫に食事をストックしてもらったり、
時々早く帰ると彼女の笑顔と温かい食事に出迎えてもらえるという日々を、手離しがたくて、
彼女の好意に甘え続けている。


 特に今クールは同じ曜日に早く帰れる(たぶん社さんがスケジュールをやりくりしてくれているのだろうが)ので、週に1度は一緒に食事をして、彼女を送っていく。
いい加減告白しろ、と社さんからは事あるごとにせっつかれているが、穏やかであたたかいこの関係を失うかも知れないという事が怖くて、動けない。



 そんなある日。
「今日はキョーコちゃんも、この局にいるらしいぞ。」
社さんのスケジュール帳にはいつの間にか彼女の予定も書き込まれているらしい。
社長といい、社さんといい、ありがたいがちょっと俺に対して過保護が過ぎるのではないだろうか、と溜め息がこぼれる。


「俺はタクシーで帰るから、ピックアップして帰れよ。
キョーコちゃんにはメールしとくから。
今日は週に一度のスイートナイトだもんね。」
「どういう想像をしているのか知りませんが、
そういったことは一切ありませんので。」
 在りもしない事でからかわれるのは心外だ。 
ムッとして言い返すと、にやにや笑いが増した。
「そういうけど、キョーコちゃん、最近本当に綺麗になったよ。
恋は女の子を綺麗にするっていうからね。」
「その相手が俺じゃなかった場合、どう責任をとってくれるんですか。」
 空振りの虚しさはもう何度も味わっている。
なんといわれようと慎重にならざるを得ない。
「そうやって、曖昧で居心地のいい関係を続けていてもいい事ないと思うぞ。もともと礼儀正しくてスタッフや共演者の受けのいい子なんだから。
綺麗になったことでますます馬の骨は増える一方だ。
お前が今の立場に胡坐をかいて手をこまねいているうちに、
気付いたら誰かにかっさらわれてたって事にならないとも限らないんだぞ。」
 にやにや笑いをひっこめたLME1優秀なマネージャーは、
真剣な顔で俺を脅した。