すみません。


もう、何だか、書きたくなって一気に書いてしまいました。


ネタバレNOの方は見ないでくださいませませ。














































ACT.193 続き妄想




蓮が放り投げた携帯電話に向かって伸ばされたキョーコの手首を掴んで引き摺ると、蓮は自分のベッドに押し倒した。両手を頭の左右に縫いとめ、身体はのしかかるようにして押さえつける。




キョーコの怯えた顔に、凶暴なクオンが刺激される。

「不破とよりを戻した?」

「戻すようなよりなんてありません。」

考えられない体勢なのに、気丈に言い返しながら、キョーコは心の中でつぶやいた。

――怖い。 鋭いそして暗い眼・・・これが本当の敦賀さん・・・?

「ヤツと俺の話もしたんだってね?」

「ど、して・・・?」

「あのあと駐車場で待ち伏せされた。」

――アイツ、なんて要らないことしてくれてんのよ! 




キョーコはしばらく迷ってから、蓮と眼を合わせた。

「芸能界に入るきっかけはアイツを踏みつけることだったけど、今は違うという話をしました。だから、敦賀さんは役者を目指す私にとって闇に灯る灯台で、進むべき先を照らしてくれる目標で、なくてはならない道しるべで、最高の教科書で、先導者で・・・。」




キョーコの言葉に、蓮の眼は徐々に鋭さを失って迷子のようになっていく。そしてついにキョーコのまっすぐな瞳を避けるように、キョーコの胸に顔を伏せてしまった。




「やめてくれ。俺は君にそんな風に思ってもらえるような人間じゃない。俺なんかより君の方がよっぽど役に徹してた。俺は何度も君に救われてきた。君がいなかったら、俺は・・・。」

苦しそうに絞り出された蓮の言葉に、キョーコは堪らなくなった。




「手を放してもらえませんか?」

蓮は力を失ったようにキョーコの両手を解放した。

「すまなかった・・・」

続けてキョーコを押さえつけていた身体を起こそうとしたが・・・。

キョーコは胸元に埋められたままだった蓮の頭をそっと抱きしめた。




「ずっと、学校にいても、BOX-Rの現場でも敦賀さんの事ばかり考えてました。事情は詳しくお聞きしませんし、私なんかでは何もできない事はわかっているんです。でも何か敦賀さんの役に立つことをしたいんです。」




キョーコは抱きしめていた力を緩め、片手で蓮の頭を抱え、もう一方の手で宥めるように髪をなでた。

しばらくそうしていると、蓮が小さく掠れた声でつぶやいた。




「・・・傍にいて。」

「はい。敦賀さんが要らないって言うまで傍にいますね。なんたってお守りですから。」

「・・・それは、社長に言われた義務感からか?」

ムッとした声に、キョーコは小さく笑った。

「それもありますけど、それだけじゃないですよ?」

「じゃあ、俺が一生傍にいてくれって言ったら、ずっといるんだね?」

「そうですね。」

「意味わかってる?」

「さあ、どうでしょう?」




拗ねたような蓮の物言いにすっかり大型犬を手なづけた気になってしまったキョーコは会話のキャッチボールを楽しんでいる。

蓮も多少の不満は残るものの、今はこれでもいいかという気になっていた。

けれど、一矢報いることは忘れない。




「じゃあ、一生傍にいるように、とりあえず口約束をね。」

蓮に組み敷かれているという異常な体勢を忘れてしまったかのように笑いをこらえながら、「はい」と返事をしようとしたキョーコの口に、蓮はキスを落とした。

「口約束、ね。」

「そ、そ、そんなの口約束じゃありません!!」




叫ぶキョーコの上から、今度こそ身体をどけると蓮は携帯電話を拾ってキョーコに返しながら、

「明日も撮影だ。もう寝ろ。」と英語で言う。

ヒール兄妹の復活らしい。

「兄さんのばか。」

雪花はふくれっ面でカインのベッドをおりる。




――今は話せないけど、いつかきっと全てを話すから。それまで傍にいて・・・できれば本当に一生傍にいて。




                   FIN