いつも辺境のサイトに来ていただいて、ありがとうございます。

ひっそりと活動中で、うまくみなさまと交流できてない感じの

当サイトではありますが、

seiさまのおねだりがうれしくて、

ついつい 蓮サイド 書いてしまいました。

ううむ。頑張ってはみましたが、大変に不安です。

すみません。




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act.190 続き妄想 SIDE REN






TBMの駐車場に愛車を停め、ロックした瞬間、通りがかった見知らぬワゴン車の中に彼女が、そしてその隣に座るアイツが眼に飛び込んできた。

その衝撃に俺は一瞬凍りついた、が、身体は勝手に動き始めていた。

後ろで社さんの制止する声がしたが、俺は彼女を乗せた車を追った。




――今朝まで、彼女と二人きりだったのに。

俺が彼女を独占していたのに。

ほんの数時間、眼を離した隙にアイツに彼女の隣を奪われたっていうのか?




ここ数日の、不安定な精神状態に加えて、今日の貴島君とのやりとり、とどめと言わんばかりの彼女とアイツのツーショットに、普段の敦賀蓮の冷静さを欠いた。

俺でも敦賀蓮でもない、カインが妹であるセツを独占していたというただの設定のはずなのに、俺が最上キョーコを、という意識にすり替わっていることに気がついていなかった。





ワゴン車が駐車位置に納まったのに追い付き、彼女が見えたドアを力いっぱい引き開けた。

「つ、敦賀さん!?」




俺は彼女の手を引き、車から降ろすと、ほとんど無意識に彼女の腰を抱き、頬に手を添えて、彼女の眼に自分だけを映した。 彼女を取り戻すために、何を言うのが効果的なのか・・・情けないことに、食事の心配をしてもらう以外の口実が思いつかなかった。

俺はアイツに見せつけるように、聞こえるように、彼女に懇願した。

「今夜、お願いできるかな? 最近ずっと一緒にいて君のご飯に慣れちゃったから、他の何食べても美味しいと思えなくて。」




「おい!」と声がして、隣に社さんが立っていた。

責めるような視線を浴びたとたん、敦賀蓮に戻った俺は彼女から手をほどいた。




社さんは、実に優秀なマネージャーとして、俺と彼女をフォローしてくれて、彼女の鞄を手に、俺たちを促した。

その場を去ろうとする彼女に、俺の言動に呆気にとられていたアイツが、やっと声を発した。

「キョーコ。 さっき言ったこと、忘れんな。」




何の事だかわからないが、彼女とアイツにこれ以上話をさせたくない! 

俺は彼女の背中に添えた手に力を込める。 

でも、彼女は俺には構わず、アイツを振り返った。




「何のためにこの業界に入ったんだって言ったわね? 確かにきっかけはそうだったけど、今は違う。 私は今生まれて初めて私のために生きているの。 誰かのためにじゃない。・・・これだけは伝えておきたかった。 今日は送ってくれてありがとう。 でももう二度と七倉さんを使ってこんなことしないで。」




毅然とした彼女の言葉を聴きながら俺は、同じことを俺に言った数カ月前の彼女を思い出していた。 

あの時まで、復讐というばかげた理由に腹を立てていた俺は、初めて彼女を見直し可愛いと思った。

あれがこの恋の始まりだったのかもしれない。

彼女が気づいているのかどうかわからないが、『きっかけはともかく今は違う』と彼女がアイツにはっきりと告げたことで、もう彼女の復讐は果たされたのだ。




俺は復讐の完遂を称え、そっと彼女の頭を撫でた。

ホッとしたように、彼女が俺を見上げてくれる。

そして、彼女は笑って過去に別れを告げた。

「じゃあね、ショータロー。」




復讐から解き放たれて、やっと彼女は自由に飛べる。

今日、アイツと彼女が会って話したことは、必然だったんだと思えた。






その夜遅く、彼女は俺のわがままを聞いてくれて、夕食を作りに来てくれた。

たったそれだけの事が、俺の心に余裕をくれる。

食後のコーヒーを二人で並んで飲む。

これがこんなにも愛しくて幸せなことだなんて・・・。




俺は心のままに、想いを声にした。

「最上さん、好きだよ。」

突然の俺の告白に、何を言われたのかもわかっていない呆けた顔の彼女が可愛くて、ぽかんと開いた魅力的な唇に軽くキスをおとす。




「好きだよ。」

もう一度告げたら、わかってくれるだろうか。 俺は彼女の表情をじっくりと観察しながら、もう一度、唇への距離を縮める。 すると、彼女は眼だけでなく、唇もギュッと閉じてしまった。

その避けるようなしぐさに、ムッとして俺は彼女のおでこを指ではじいてやった。




「痛い!」

本当に何もわかっていない彼女に、ラブミー部第1号なんだから仕方がないよな、と力が抜ける。

けれど、一言だけでも釘を刺さなければ気が済まない。

「この場面で眼をつぶって現実逃避なんかしたら、あと何をされても文句は言えないんだよ。 わかってる?」




よほど痛かったのか、彼女はおでこをさすりながら、しばらく視線を空中にさまよわせていたが・・・。

「ええええーーー!!?」




耳をつんざくような叫び声に、思わず彼女に近いほうの耳をふさぐ。

「やっとご理解いただけたようだね。」




彼女はまるで機械仕掛けの人形のように、固まった顔を俺に向けるが、頭の中はどうやら、この期に及んでさらに逃避先を模索中のようだ。

ここまで来たら、とことん考えてもらおうじゃないか。俺はさらにダメ押しをしてやった。

「ちなみに、嘘でも夢でもからかってるわけでもないから。真剣に考えてね。」






静かな時間が流れる。

どれくらい経っただろう。

俺にはまるで死刑宣告を待つ時間のようだった。 

時計を見るとまもなく日付が変わってしまう。 

彼女を下宿に返さなくては・・・。

「ずいぶん遅くなった。送って行くよ。」

立ち上がって踵を返すと、何かに阻まれた。

振り返ると彼女が俺の上着の端を掴んでいる。




「好きです。」

ささやくような声に、自分に都合のいい、幻聴かと思った。

半信半疑、彼女にかがみこむと、さっきよりも少し大きな、何よりもうれしい言葉が音になった。

「好きです。」

「聞こえないなあ?」

俳優である俺が、誤魔化しきれないくらい浮かれた声を出していた。

それに気付いた彼女が、「いじめっ子ー!」と可愛く俺を責める。




だって、何度でも、何度でも聞きたい。

「もいっかい言って。」

「好きで・・・」

自分からねだった癖に、涙目で微笑む彼女に負けた。

彼女が言い終わらないうちに、俺は言葉ごと彼女の口を封じてしまった。

これが彼女のファーストキスだ。

そう思った瞬間、俺は我を忘れた。

これまでの想いのたけを伝えるように深く深くくちづける。




はっと気がつくと、彼女は酸欠状態で気を失ってしまっていた。

しまった、やりすぎた、とは思ったが、本当のところ後悔はしていない。

やっと、彼女を手に入れたのだから。




俺は寝室から毛布を持ってくると、彼女を抱きしめて毛布をかぶった。

そして、眼を覚ました彼女が何て言うのか考える。

ちょっとだけ不安で、ものすごく愉しみだ。

いずれにしろ、もう逃がさない。

「覚悟してね、キョーコ・・・。」






翌朝の、蓮とキョーコのやりとりと、蓮のリビングでキョーコを見つけ、女子高生のようにはしゃぐ社さんの狂喜乱舞に、蓮がうんざりした話は、また別の機会に・・・?




                         FIN