11、蓮
奏江さんが弟さんから聞いたと、何かのついでに出た話題だった。
俺はそう深刻なことだと思っていなかったけれど・・・。
「学校で何があったの?」
彼女はハッとして顔をあげた。
「ちゃんと話してごらん。」
彼女は不破とのいきさつから、ほとんどの生徒に無視されているという話を聞いて、拳を握りしめた。
それに気付いたのか、彼女は慌てて言った。
「飛鷹くんみたいに話しかけてくれる人もいないわけじゃないの。 特にいじめられるって事はあまりないから、大丈夫よ。 静かで勉強もはかどるし。」
「それにしたって・・・。」
高校生にもなってやることが子ども過ぎると呆れた。
「教師は何をやっているんだ。」
「先生は、普通に接してくれるから。」
「そうじゃない。 そういう風潮をやめさせようとかしないのか?」
「それこそ、子どもじゃないんだから。 高校生相手に教師も仲よくしなさいなんて注意しないわよ。」
不満顔のまま黙り込んだ俺に、彼女の方が宥め役にまわる。
「ごめん。 また自分の思いばっかりになって、キョーコにフォローさせた。」
「ううん。 私のために怒ってくれてるのわかるから。うれしい。」
素直な彼女の言葉に自分の機嫌が急上昇するのを感じた。
「これからは、ちゃんとキョーコのフォローもする。」
「ううん。 蓮は今まで通りお父様を助けてあげて。」
「だけど・・・。」
「顔を見て話をするだけで、私は元気になれるから。 だから、私が蓮のフォローをするね。」
「ありがとう。」