6、キョーコ


それから、いくらも経たないうちに、お母様が事故で亡くなってしまった。
これほど悲しい思いをした事がないと思うくらいに、悲しくて、混乱していたけれど、蓮に抱きかかえられるように帰ってきたお父様の嘆きは、私の比ではなかった。
だから私の悲しみは後回しにするしかなかった。


蓮もそうだったのだと思う。 

お父様の代わりに葬儀の打ち合わせややり残してきた仕事の整理に奔走していて、通夜も葬儀も座っている時間がほとんどなかった。
私は、魂が抜け落ちたようなお父様を支えながら、お母様を悼むことしかできなくて、蓮に申し訳ないと思っていた。



葬儀の後、お父様は一気に歳を取ってしまったかのようだった。
蓮はそんなお父様を心配して、今まで以上に仕事のサポートに励んでいた。


私は二人が家に帰ってきたときにくつろげるように、とのお母様の言葉を思い出しながら、家政婦さんと一緒に家事に勤しんだ。